二十八話 面接:ミレイの場合
「…おそいですぅ」
ミレイは誰にも聞こえないよう小さな声でそう呟く。
すでにミレイが面接の列に並び始めて15分が経過している、だがそれはミレイが平民であるためしかたのないことである。
(は、はやくしないとアリスとソラ君においてかれちゃうですぅ)
そんなことを思いながらまだかまだかと待っていると後ろから声がした
「…どうしよう、魔法成功するかな?」
「大丈夫だって!あんだけ練習したんだし!」
それは自分が魔法をしっかりと発動することができるかどうかという不安の声だった。
そしてミレイ自身もその言葉を聞き、自分の鼓動が早くなるのを感じる。
「……だ、大丈夫です、ソラ君とアリスととっても練習したのです!だから大丈夫…だいじょう…ッ」
緊張と不安で涙が出そうになるがそれを堪えるミレイ
ここにはもうアリスもソラもいない、助けてくれる人が誰もいないのだ、だからこそミレイはこの面接を自分の力だけで突破しなければいけない。
だからこそこんな所で泣いている場合ではないのだ。
そんなふうに考えていると面接室から大人の声が聞こえる
「次の方どうぞ」
ミレイは前を見る、そこにはすでに自分以外の人がいなかった、それはつまり自分の番を意味する。
「え?あれ、いつのまに…」
先ほどまであれだけ並んでいた列がうそのように消えていることにミレイは驚きを隠せない、ふと横にかかっている時計を見ていると時間は20分ほど経過していた、考え事をしている間に時間がたってしまっていたのだ。
なかなか人が入ってこないので面接室から再び声が響く
「次の方~入っていいですよ」
「あ、は、はい!失礼します!!」
自分の番だということに気づき、慌てて返事をして中に入るミレイ
中に入るとそこには長い机があり、そこに面接官と思われる女の人が一人座っていた。
アリスは面接官を目で確認しながらゆっくりと移動して椅子に座る。
「それじゃ、面接を始めますよ」
「は、はい!よろしくお願いします!」
緊張している様子を見せるミレイに女性の面接官は微笑みながらやさしく声をかけてくる。
「そんなに緊張しなくてもいいですよ?緊張したらできることもできなくなることがありますから」
その言葉を聞きなんとか冷静になろうと深呼吸をするミレイ
完全に冷静にはなれないが少し落ち着きほっとする。
「それではまず、お名前を教えてくれますか?」
「は、はい!ミレイ・エプリアです!魔法は土属性と雷属性です!」
「へぇ、雷属性が使えるのですね、それじゃあさっそくで悪いですけど魔法を見せてくれますか?」
雷属性が使えると知り、少し珍しそうな顔をする女性、やはり雷が使えることはそれなりに珍しいらしい。
アリス自身もその反応を見て少しうれしそうな顔をする、魔力の量や、知識、そして才能に関してもミレイはアリスに勝てない、そしてソラはさらにその先を行っている、だが唯一ミレイが二人にはないことができるとすればそれは雷魔法だ。
ミレイは落ち着くために深呼吸をした後に右手を前に出す
「ふぅ…ウォールシールド!」
ミレイの掛け声と同時にミレイの前に土属性の魔法でできた壁が現れる
その魔法をじっくりと見た女性は笑顔で首を縦に振る。
「はい、しっかりできていますね、魔法を解いて大丈夫ですよ、それでは二つ目を見せてもらえますか?」
「は、はい!」
ミレイは魔法を解き、再び手を前に出す
「…サンダーボール!!」
するとミレイの前に雷の玉が現れる、そしてそれを横の壁へとぶつけようとする―――
――――バチバチバチッ!!……シュッ
「…え?」
ミレイは一瞬何が起きたかわからなかった
自分の魔法が壁に飛んでいき、途中で消えたのだ。
「あー…これは失敗ですね」
「そ、そんな!?だ、大丈夫です!つ、次こそ!…サンダーボール!!」
―――バチバチッ!!…シュッ
再び魔法の発動に挑戦し、壁に当てようとするミレイだが先ほどと同じように途中で消えてしまう。
ミレイは焦ったように再び魔法を使おうとする。
「ま、まだ!「もういいです」…あ」
再度挑戦しようとしたところで面接官の女性に止められる
ミレイは面接官にとめられて、その意味を瞬時に理解してしまう
合格の条件は魔法を2つ以上成功させること、つまり―――
(だ、だめです!あ、あれだけ練習したんです!なんでできないんですか!!)
ミレイの唯一ソラとアリスに自慢できる魔法、自信の一つになっていた魔法、ソラに教えてもらい使えるようになった魔法。
それが今使えずに不合格になろうとしている。
(いやです!いやだいやいだいやだいやだいやだ!!)
ミレイの目には涙がたまり今にも号泣しそうな勢いだ、だがミレイは顔を上に向け、天井を見ることでそれを抑える。
そしてふと、ソラの言葉を思い出す。
―――魔力のため方が少しずれてるんだよ
(……あ)
―――手の位置はここね
(…そっか)
――3人で一緒に学園にいこうね?
(…そうですよね、3人で一緒に…)
「それでは残念ですがふ「あ、あの!」…はい?」
ミレイは一生懸命出せる限りの自分の声を吐き出す
「も、もう一度だけ、チャンスをくれませんか!?」
ミレイの言葉に困ったような顔をする面接官
だがミレイの目は本気だ、ここで受からなければ3人で学園に通うことができなくなるからだろう。
「しかし、ほかにもまだ順番で待っている人がいるんですよ?」
ミレイはそれでもあきらめないというような目で女性の目を見る。
女性はミレイの目を見て、目を少し見開き、考える素振りを見せる
「…それではあと一回だけです、これで失敗したら残念ですがあきらめてください」
「はい…」
ミレイは腕を前に出し、魔力を集中させる、先ほどとはすこし位置を変えた場所で。
ミレイの手に魔力がたまっていき、魔法が発動するくらいの魔力がたまったところでミレイは口を開く。
(…絶対に、成功させます!!)
「サンダーボール!!」
――――ヒュゥゥウウウ…バチィィイイイイン!!!
ミライの放った魔法は見事に壁に当たり、激しい音が部屋に鳴り響く
女性の面接官はその威力に目を見開く。
「や、やりました!」
うれしさでつい声を出してしまうミレイ
女性はそんなミレイを見て最初に見た優しい笑顔でミレイに声をかける
「…すごいですね、ミレイさん、合格です、おめでとうございます」
「……あ、ありがとうございます!…えっと、これで終わりですか?」
「はい、平民の方は貴族の方々と違い人数が多いですから面接の時間を減らす方針なんです、大丈夫ですよ、あなたはちゃんと合格ですから」
「は、はい!」
ミレイはそういい小走りで部屋から退出する。
そしてしばらく歩き、二人と待ち合わせた場所まで行くと、力が抜けしゃがみこんでしまった。
(…よ、よかったです、う、うぅ)
今まで我慢していた分がどっと押し押せてきて、ミレイは耐えることができずに目から涙がでてしまう。
「…よ、よがっだでずうぅぅうう!!」
これからしばらくたちアリスと合流するのであった。




