二十七話 面接:アリスの場合
アリスは今、学校の職員に連れられて廊下を歩いている
周りに人気はなく、これが貴族と平民との扱いの差なんだろうと自然に理解するアリス。
「この角を曲がった所が面接室でございますアリス様」
職員の男に言われ自然と少し緊張してきてしまうアリスだが、それを顔には出さずに平然を装う、貴族としての面子というものがあるからだろう。
(大丈夫、ソラとずっと練習してきたんだから…)
今までのことを思い出しなんとか緊張しないようにと心を落ち着かせようとするが感情は正直である、アリスの心臓はドクンドクンとなり、回りに聞こえていないか心配になる。
角を曲がるとそこには平民とは違い椅子がなかった、これは貴族だからこそであり、少しの時間も待たせずに面接を行えるという意思表示だろう。
「アリス様、ここが面接をする部屋でございます」
アリスはここまで案内してもらった感謝の気持ちをこめて職員の男に小さく笑顔を向ける。
「ありがとう、もう大丈夫だから仕事に戻ってかまわないわよ?」
「はっ、それでは自分はこれで失礼します、ご健闘を」
男はそういい残し、その場から去っていく、アリスはそれを見ながら苦笑いしながら小さくつぶやく。
「…健闘って、大げさじゃない?」
なんとなく緊張が解けたのかアリスの顔にも笑顔が戻る
そう考えると先ほどの職員の男に感謝をしなければならないと思うアリス。
そして小さく、それでもしっかりと響くような力加減でドアをたたく
―――コンコン
「…失礼します」
言葉は礼儀として敬語、相手がこれからかようかもしれない学校の先生であるからだろう。
「は、はい!どうぞ!こ、こちらにおかけください!」
アリスが中に入り最初に聞いた言葉はとても震えていた。
(…私が面接を受けるのよね?)
いままで平民のソラやミレイと遊んできたアリスはまだ貴族の常識に慣れていないせいでそんなふうに思ってしまった。
パーティーのときなども周りが貴族のおかげで敬語を使われることはあっても、ここまでの反応をされることはなかったのもアリスがそう思った理由の一つだろう。
アリスは言われたとおり椅子に座り、自分の面接官を見る
自分の面接をする先生は3人、二人が女で一人がひげをはやした男だった、先ほどの声の高さと今見ている慌て振りからして先ほどの声は真ん中の女性なんだろうと予想がつくアリス、理由は簡単、二人の女性は緊張しているように見えるがその中でも真ん中の女性は口に手を当て「はわわわっ」なんて小さく言っているおかげでアリスの緊張がすっかりとけてしまった。
「そ、それでは面接を始めます、え、えっと…」
言葉に詰まらせる女性、それを見かねた男が小さくため息をつく
「はぁ…もうよい、わしが面接をする」
ひげをはやした男、年は60を過ぎているだろうか、その老人がアリスに声をかける。
「すまぬのぅ、こいつはまだ新人なんじゃ、頼りないかもしれんが大目に見てやってくれんかのぅ」
「は、はぁ」
どう返していいかわからずに、少し気が抜けたような返しになってしまったアリス。
それを見て新人の女性が老人に訴えかけるような目で口を開く
「そ、そんなぁ、ひどいですよ学園長!」
(…学園長!?)
突然の事実に驚きを隠しきれないアリス、叫びはしなかったものの、目を見開き固まってしまう。
「いやいや事実であろう…ん?ああ、驚かせてしまったかのぅ」
「い、いえ、そ、それで面接のほうを」
学園長と知り、少し戸惑ってしまったアリス、だがなんとか話を進めようとする、そうしなくてはいつまでたってもこの面接が終わりそうにないと思ったからだ、おもに新人の女性と学園長の会話で。
「ああ、そうじゃったそうじゃった、それではまず念のため自己紹介をしてもらおうかのぅ」
「は、はい、アリス・イリス・ストアシアです、魔法は水属性、火属性、風属性、あと無属性も使えます」
アリスの言葉を聞き、驚いたように目を見開く女性の面接官二人、学園長も少し驚いたのか目を細め、静かにアリスを見る。
「ほう…それじゃぁ魔法を使って見せてもらおうかのぅ」
興味を持ったような眼差しでアリスを見る学園長
アリスは緊張しないように一度深呼吸をしてから手に魔力を集中させる
「…ファイアーボール!ウォーターボール!」
アリスが唱えるとアリスの手から火の玉と水の玉が同時に現れる、アリスはそれを横へと飛ばし壁にぶつける。
―――ドゴォオン!
壁に当たると同時に何かが爆発したような激しい音が部屋に鳴り響く。
それを見て面接官の女性二人は固まって、口をあんぐりあけている、学園長に関しては右手を自分の口ひげに添えて何かを考えている。
「ふむ…なるほどのぅ、よし、合格じゃ」
「へ?」
唐突な学園長の台詞に気の抜けた声を上げるアリス
驚いたのは面接官の女性二人も同様のようで学園長に疑問をとう。
「が、学園長、まだ面接が終わっていないのですが…」
すると学園長は右手をひらひらとさせ、もうする必要もないというような態度をとる。
「十分じゃ、魔法陣を同時に二つ、十分すぎるくらいじゃ」
「は、はぁ、確かにそうですが」
「うむ、ストアシアよ、合格じゃ、もう帰って大丈夫じゃ」
「は、はい!ありがとうございます!」
アリスはそういい部屋を後にする、何がなんだかよくわからなかったが、合格ということがわかったのが何よりもうれしかったのだ。
(やったわ!こ、これでまたソラにほめて…ち、違うわ!べ、別にほめてもらいたいわけじゃないのよ!そ、そうよ、そうじゃなくて…)
などと考えながら廊下を歩いていくと、自分よりも下の位の貴族の面接をする廊下をとおりかかった。
周りには派手な服を着た自分と同じ年くらいの貴族がたくさんいた
先ほどの自分の時とは違う対応に疑問を持つアリスだが、周りを見てなんとなく予想がついた。
「…あぁ、子爵以下の人たちね」
伯爵以上が先ほどのように個別しつなんだろうなと予想がつき、さっさとこの場を後にしようとした時だった。
一人の男がこちらに気づき、ニヤニヤとした笑顔で歩いてくる
(…またあいつね、毎回毎回しつこいわね)
「これはこれは!アリス様じゃないですか!」
小さくため息をついて声のしたほうへとむくアリス
そこにはアリスと同じ年の金髪の少年が立っていた。
「…何度もいうけど、貴方にアリスと呼ばれる筋合いはないわ、ケルト・イン・サクシス子爵」
「何を言うのです、あなたと僕はしょうらいむすばれる二人なのですよ!」
「だからそれはあなた達の親がかってに言っているだけでしょう、それに私たちはその申し出をせいしきにお断りしたはずよ?」
「またまた、僕は待っていますよ」
まるで話を聞いていないケルトとイライラを隠そうとしないアリス、アリスの周りにはイライラオーラが出始め、周りの貴族は離れていってしまう。
「…はぁ、もういいわ、私ようじがあるからもう失礼するわ」
そういい、アリスはケルトを無視して外に出る、だがケルトはアリスが見えなくなるまでずっとニヤニヤとした笑顔を向けていた。
(…本当になんなのよもう!!それに向こうの親だって断って納得したじゃない!!)
そんなことを思いながらせっかくいいことがあった後なのに、アリスはイライラしながら待ち合わせの場所へといくことになる。
しばらく歩き、待ち合わせの場所に着くと、そこにはすでにミレイが座っていた、泣きながら
アリスは自分よりも早く来ていることに驚きながらも泣いていることが気になり声をかける。
「どうしたのよミレイ…まさか…」
最悪の答えを予想して顔を青ざめるアリス
「う、うかってよかったでずうぅぅうううう!!」
だがミレイから返ってきた言葉はその反対の答えだった。
「…え?」
「よがっだでずぅぅううううううううううううう!!」
「え?う、うかったんでしょ?え?何で泣いて…あ、そう、そういうこと……はぁ」
自己完結して苦笑い交じりにため息をつくアリス、ミレイを見ていて先ほどの怒りがどこかに吹っ飛んでしまったようだ。
(…ソラ、おそいわね、こ、これはばつがひつようね!!)
などと関係ないことを考えながらミレイの頭をなでるアリスだった。




