二十一話 ソラの過去
ガルドはアリスとソラが部屋に入っていくのを確認するといすに座る
マルティナはその前に座っている。
「…どうしたの?難しい顔しちゃって」
マルティナの質問にガルドは重たい口を開くようにゆっくりと、小さく、だがしっかりと耳に入ってくるような声で答える。
「……なんなんだ、あの子供は」
ガルドの言葉の意味がわからないのかマルティナは首をかしげる
「何って、エリイさんの家の弟じゃない」
マルティナの意味がわからないという気持ちの入った言葉にガルドは顔を顰める。
「…あれは確かにエリイという女性の弟だが血はつながっていない」
「…え?」
ガルドの口から出た衝撃の事実にマルティナは驚きを隠せない
だがガルドはきにせずにそのまま言葉を続ける。
「少し調べたがソラ君はエリイという女性の義理の弟ということになっていた、だがそれ以上の情報がどこにもないのだ」
義理の弟ということをはじめて知ったマルティナは驚きを隠せないが、それよりもなぜガルドがソラについてそこまで調べたのかわからない、そして気になることがもうひとつ、ガルドのいった「それ以上の情報」というところである。
「……それ以上の情報って?」
ガルドは顔を顰めながら答える
「…どこで生まれたか、誰の子なのか、どこで育ったか、などの情報がどこにもないのだ」
「…ッ!…それ、どういうことなの?」
マルティナにもわかる、情報がないということはどこか違う国からやってきたか、旅人か、いろいろと可能性はあるがその場合はすべて入国時に書類を書き、入国理由や自分の出身などを書かなければならない、だがソラにはそれがないのだ。
「わからない…だがお前も気づいているだろう?ソラという子はまだ7歳だぞ?それなのにあの話し方、精神、知識、全てが普通ではない、いや、異常といってもいいだろう」
「……」
マルティナは答えることができない、それはマルティナにもわかっていたことだ、魔法の勉強をするときも勉強をする前からすでに魔法を使えていたソラ、言葉遣いが2年前から普通ではなかったソラ、気になるところはいくらでもある。
「…騎士のほうに行っても誰も知らない、だが妙な話は聞いた」
ガルドの物言いに気になり首をかしげるマルティナ
「…妙な話?」
「ああ、今から2年前、騎士本部に白髪の少年がボロボロの服を着てやってきたらしい」
ガルドの話にマルティナは驚愕する、それは誰が聞いてもわかるだろう
ソラが幼稚園に入ってきたのは2年前、そして2年前に騎士本部にやってきた少年もソラと同じ白髪、同一人物で間違いないだろうと、マルティナは思考した。
「それって…」
マルティナの確認を取るような言葉にガルドは小さく頷く
「ああ、ソラ君で間違いないだろう…いったい彼は…」
――――ギィイイイ
ガルドがそう呟くとリビングの扉があいた
「「ッ!?」」
突然開いた扉に驚きガルドとマルティナは音のしたほうを向く、そしてその扉の向こう側に立っていた人物をいて目を見開く、そこには薄ら笑いを浮かべるソラがたっていた。
「そんなに気になりますか?」
ソラは静かに呟いた、ガルドとマルティナはその言葉に今までに自分たちの話が聞かれていたと気づき、何もいえないで困惑している、ソラは二人の様子に苦笑いしながらゆっくりと歩いてくる。
「…そんなに気になりますか?僕の過去に」
「…ソラ君…」
マルティナは小さな声でソラの名前を呼ぶがそれ以上何もいえない、ガルドもソラが聞いていたとは思っても見なかったのか驚きの表情を浮かべただただソラを見ている。
「いいですよ?話しても、でも今日じゃないです、一週間後、僕の家に来てくれますか?その時にみんなにはなしますから」
ソラもすでに感じ取っていたのだ、自分の異常性に、そしてそれをずっと黙っているのもソラにとっても気持ちのいいものではない、だから今日ガルドとマルティナの話を聞き、頃合だと思ったのだ。
「…ああ、わかった」
「あなた!」
頷くガルドに声を上げるマルティナ、マルティナとしてはソラの心の中に無理やり入り込み、話を聞くのが嫌なのだろう。
「いいですよマルティナさん、そろそろ僕から話そうと思ってたことなので、エリイ姉さんやダッグさんには僕からいっておきます」
「ソラ君…」
ソラの言葉に何もいえなくなるマルティナ、本人がいいといっているので納得せざるおえないのだ。
「それじゃあ今日はもう寝ますね、今日は本当にありがとうございました」
ソラは話を終えると笑顔に戻りアリスの部屋に帰る
ガルドとマルティナはそれを黙って見送ることしかできなかった。
――――コンコン
「は~い」
―――ガチャ
エリイが玄関の扉を開けるとそこにはガルドとマルティナがたっていた、だがエリイは玄関の前に伯爵がいるというのに驚きもせずにそのまま家の中へと招き入れる。
「おはようございます、どうぞ広くはないですがあがってください」
すると中に入る前にガルドが申し訳なさそうにエリイに言う
「今回はすまない、私たちが不用意にソラ君の過去を探るようなことしてしまったばかりに」
その隣ではマルティナも同じように申し訳なさそうな顔をしている
だがエリイは怒らずに苦笑し、大丈夫ですよという
「ソラが自分で話すといったんです、あなた様のせいではありません」
「…すまない」
それでもガルドたちは謝罪の言葉を口にし、中に入る、家の中にはすでにソラ、エリイ、ダッグがいた。
ソラが二人に気づき、アリスがいないことがわかると二人に近づき挨拶をした。
「おはようございますガルド様マルティナ様、今日はきてくださり有難う御座います…それで、アリスは?」
ソラの言葉に答えたのはマルティナ
「アリスなら今日は休みだからっていってミレイちゃんと野原に遊びにいったわよ」
「そうでしたか、教えてくださりありがとうございます」
ソラは教えてくれたマルティナに頭を下げ、みんながそろっていることを確かめるとゆっくりと話し始める。
「皆さんそろいましたね…それじゃあまず最初に、僕が元奴隷だってことは皆さん知っていますよね?ガルド様とマルティナ様に言うのはは始めていいますが」
「「なんだって(ですって)!?」
ガルドとマルティナはいきなりのソラの真実に驚きの声を上げる、それはしょうがないことだろう、奴隷は今の時代すでに違法のものとなっている、二人が驚くのも無理はないだろう、奴隷は底辺、どんな人よりも位は下、たとえ相手がメイドだろうと、召使だろうと関係がなく一番下になるのだ。
それを聞きマルティナはソラがメイド達に敬語を使っていた理由がなんとなくわかった。
ソラは二人に自分のことを話した
すべて話し終わるとガルドは顔を顰め、何かを我慢するような顔をしている、マルティナはとても悲しそうな、そんな顔をしていた。
二人に大体のことを話し終わるとソラは本題に入る
「それではこれからが本題なのですが…みんな気になってるんじゃないですか?僕の異常性に」
「ッ…」
ソラの自分をけなす様な言葉にエリイは悲しそうな顔をし、こぶしを握る手の力が強くなる。
「…どこから話そうかな…まず僕の知識、話し方について説明しましょうか…」
その言葉にガルドは顔を上げソラを見る、それはガルドがもっとも気になっていることだったからだ。
「僕が盗賊たちに商売のため文字や礼儀を教えてもらったことはいいましたよね?…その件ですが嘘ではないんですがすべてがあっているってわけではないんです」
「どういうことだ?」
ソラのはっきりしない物言いにダッグが気になり質問を投げかける
するとソラは苦笑いを浮かべ、おかしそうに言う。
「よく考えてみてくださいよ、奴隷の僕に盗賊がわざわざ一から文字や言葉を教えますか?」
「…ッ、じゃあどうやって覚えたのだ?」
ソラのいっていることを理解し再度質問するダッグ
そう、よく考えて見れば誰でもわかることだ、盗賊たちが奴隷のソラにそんなことを教えるのか、と
「…6番ですよ」
「!?…どういうことですか!?まだソラ意外に奴隷がいるのですか!?」
ソラの口から出た6番という言葉にエリイが反応する、自然とわかってしまったのだ、ソラが7番と呼ばれていて6番といわれれば同じような境遇の人間だろうと。
「正確には『いる』じゃなくて『いた』がただしいけどね」
「いた?…まさか」
ソラの意味深な言葉にエリイはなんとなくソラの言っていることの意味がわかってしまった。
「うん、もう死んでるよ、いや、殺されたって言ったほうがいいのかな、僕が物心つくころにはすでに5番って呼ばれてる男の子と6番ってよばれてる男の子しかいなかったから」
じゃあ1番から4番までの子は?とエリイは聞きたくなったが、聞けなかった、いや、聞かなくてもわかってしまったのだ、いないということはつまり
殺されたということ。
「それで武器は5番から、文字や礼儀は6番から教えてもらったんだ」
衝撃の事実にソラ意外のみんなは声を出すことができない、だがソラはそんな様子のみんなを見ても笑顔のまま、気にせずに話し続ける。
「あの時のことはよく覚えてるよ、6番が教えてくれた「自由」ってことを…あのときからかな、僕が空を見るようになったのは」
「ではその6番と5番の子も?」
確認をするようなダッグの言葉にソラは苦笑しながら答える
「殺されちゃったよ、一人いれば用済みだって」
「なんてやつらなのっ!!」
マルティナが怒りをあらわにして激怒する、エリイもほかのみんなも同じ気持ちだ、だが今はソラの話を聞くのが最優先だと考え、我慢しているのだろう、マルティナもすぐに落ち着こうとして怒るのをやめる。
「それからかな、何も思わなくなったのは…魔物を殺して、人を殺して、殺されそうになって…それから…」
「もういいんですっ!!」
エリイが我慢できなくなったのか涙を流しながらソラに抱きつく、ソラが困惑しているがかまわずに強く、優しく、泣きながらソラを抱きしめ続ける
――――ギュゥウウウウ
「…もういいんです…もう、わかりましたから…無理しないでください」
エリイに抱きしめられ、ソラは黙ってそれを受け入れる
ソラの話をそれ以上聞くのが耐えれないというのもあるのだろうがエリイはソラのことを心配していた、無理に話そうとするソラ、悲しそうな、虚しい顔をするソラ、そんなソラの顔を見ていられなくなったのだ。
「で、でも「失礼します!!大変ですダッグさん!」
ソラが話そうとしたがそれよりも先に玄関の扉を勢いよく開け、入ってくる人がいた、剣を持ち騎士の格好をしているのでダッグの知り合いだろうと予想はつくがなぜいきなりなりあわられたのかはわからない。
「どうしたのだ、そんなにあわてて」
ダッグの質問に若い騎士の顔には明らかにあせりの表情が見れる
「野原方面に魔物の大群が!!」
「なに!?どういうことだ!?」
取り乱すダッグ、騎士は言葉を続ける
「わかりません!ですが町の近くなのでかなり危ない状況です!」
「数は!?」
「すべて把握し切れていませんが、確認している数だけでもゴブリン20匹
ハイゴブリン5匹、ウルフが7匹以上です!またその群れを連れているボスがいるものと予想されます!!」
「わかった!すぐに騎士本部に報告して向かわせるぞ!…ん?ソラはどうした?」
そこにはすでにソラがいなくなった後だった
ソラは野原に向かい走りながら思考する
その野原では今日は確か―――
(今行くよ!…アリス!ミレイ!)




