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7番の少年は底辺から成り上がる!  作者: ライト・ユーテ
幼稚園編
20/28

二十話 お泊り

―――コンコン

『はーい少々お待ちください』

伯爵家の中から女性の声が聞こえる、そして玄関に近づいてくる足音が聞こえ、だんだんと音が近づいてきてドアが開く。

―――ガチャッ

「お待たせしました…あら、ソラ様ではありませんか」

伯爵家の家の玄関から出てきたのはメイド服を着た女性だった

ソラはもう何度も見ているので家の中にメイドがいても驚かない。

「はい、おはようございます、朝早くにごめんなさい」

そういい、ソラはメイドに頭を下げる、だがメイドは慌ててソラに頭を上げるようにお願いする。

「そ、ソラ様、何度も言っていますがソラ様は伯爵家のお客様です、私などに頭をさげないでください」

少し焦りの様子の見られるメイドに注意されるがソラはそんなことを言われても困るのだ、ソラは元奴隷、何年たってもその事実は変わらない、ソラの頭の奥底にそのときの記憶は鮮明に記憶されている。

その時のソラの常識では自分よりも偉いと思った人が相手の場合はすべて敬意を払うというものだ、これは無理やり教え込まれたものではなく、ソラ自身が自然に覚えてしまったことだ。

「ですがあなたは僕より年が上です」

ソラにそういわれ、困った顔をするメイド、確かにソラの言うことにも一理あるがメイドにも立場というものがある。

「それでもです、ソラ様がお客さまなので立場上私よりも偉いのですよ?」

今度はソラが困った顔をする、立場が上と言われても2年前までは立場が底辺だったソラ、敬意の見せ方は大体わかるが、自分よりも下のものだと言われても接し方がわからないのだ。

「えっと…どうすればいいんですか?」

これもまた何度目になるかわからない質問、ソラとしてもメイドに迷惑を掛けたくはないので、こうして何度も質問をしている。

だがその度にメイドは答えに悩み、はっきりとしたことを答えれないでいる

「…何度もいいますが普通にしていればいいんです」

やや自身のないメイドの答えにソラは首をかしげる

「うーん…僕にとってはこれも普通ですよ?」

「……はぁ、もういいです」

諦めたようにメイドはため息をつく、だがメイドの顔には不快感は感じられず苦笑いをしてソラの頭をなでている。

ソラは突然メイドに撫でられ、これはいいのだろうか?と思ったがそれは口に出さずに頭をなでられ続ける。

「やっぱり、いいですよねぇ…」

なにやら独り言を言っているが気にしない

「えっと…」

ソラが反応に困っているとメイドの後ろから声がする

「ソラ?きてるの?」

声の主はアリスだった、アリスの声が聞こえるとメイドはすぐにソラの頭から手を離し後ろに下がる。

「やあアリス、呼ばれたからきたんだけど、本当にいいの?」

ソラが遠慮がちに質問する

実は今日はアリスの家でお泊り会なのだ、といってもとまるのはソラだけ、

ミレイは勉強が追いついていないので母親が許さなかったのだという、なにやらそれを聞いたときアリスは寂しそうな顔をしたが数秒後にはニヤっとした顔になり「これで互角ね」と呟いたがソラには意味がわからない

ソラの質問の意味は伯爵家の家で泊まってもいいのかということだ、父親や母親はいいといっているのかなど心配なことは多い。

「大丈夫よ、お母さんもお父さんも知ってるもの」

「え?そうなの?」

あまりに普通に返され気の抜けた声を漏らすソラ、そんなに簡単に了承してもいいものなのかとソラは疑問に思うのだ、だがソラの思っている以上にソラの存在はアリスの母親に興味を示されており、アリスが変わることになった原因やソラの人間性に興味を示している。

「うん、お母さんなんてノリノリだったわよ?」

アリスの物言いにソラは母親が何を考えているか分からなかったが、あまりいいことは考えていないんだろうなと思った。

「じゃ、じゃあ、おじゃまします」

いまだに伯爵家の家の中に入るのは慣れないのか、ぎこちなく頭を下げて中に入るソラ、だがそんなソラの様子にアリスは早く来てといって中に招き入れる。

ソラが中に入るとそこは今ではそこまで驚かなくなった広いリビングが見える。

「相変わらず広いね、それで泊まるのはいいけど今日は何するの?」

部屋に入り感想をいうと、ソラはアリスに今日の予定を聞く、ここは伯爵家なのでそこにすんでいるアリスに聞くのが妥当だろうとソラは考えたのだ。

時計を見ると時刻は午後の5時、空も赤く染まっている

「えーと、今メイドがご飯作ってるからできるまで特に何もしなくていいわよ?お母さんは趣味の編み物してるし、お父さんは仕事してるし」

ソラはアリスの言葉を聞き、二人に挨拶をしていないことに気づいたが二人とも忙しいそうなので会った時に挨拶をしようと結論づける。

そしてソラはメイド達が食事の準備をしていると聞いたのでキッチンへ向かおうとしたがアリスに袖をつかまれる。

「どこいくのよ、まだごはんはできてないわよ?」

摘み食いでもしようとソラが考えているとでも思ったのかアリスは半目になりながら言う、だがソラはアリスの言葉に苦笑し首を横に振りそうじゃないという。

「僕もご飯を作る手伝いをしようと思って」

「メイドがいっぱいいるから大丈夫、それよりこれ読んで!」

アリスが持ってきたのは一冊の本、その表紙には「大人の事情」というなんとも子供が読んではいけなさそうな題名がのっている、ソラは笑顔を引きつかせながらやんわりと断る。

「えっと、これはちょっと…ほかの本はないの?」

ソラに却下されてアリスは不満顔だがすぐに二冊目の本を持ってくる

「じゃあこれっ!」

次にアリスが持ってきた本は「お姫様とソラ」というなにやら聞いたことのある名前がのっている。

「……えっと、なにこれ?」

思わずアリスに真顔で尋ねてしまうソラ、アリスは少し頬を赤らめながら恥かしさをごまかす様にソラをせかす。

「いいからっ早くよんで!!」

仕方がないとソラは本を読み始める、読む場所はアリスに指示されたソファーに座り、アリスがソラの横に座りソラにもたれるような体制で本を見ている。

「えっと…昔々あるところに――――」












「…めでたしめでたし、はい終わり」

本を読み終わりソラが本を閉じる、その横ではアリスが満足したような顔で次の本を選んでいる、流石にまた読むのは勘弁してほしいとソラはアリスにいう。

「あれ?というかアリスって本読めたよね?」

もっともな疑問をアリスに投げかけるソラ、だがアリスはなぜか顔を少し赤くしてソラに声を強くしていう。

「いいじゃないったまには読んでほしいときがあるのよ!」

なぜ怒られたのか理解できないソラは内心で「そういうものなのか」と思いながらアリスに質問をしようとする

「じゃあアリ「ご飯ができましたよ~」」

アリスと言おうとしたところでキッチンからメイドの声が聞こえる

「じゃあいこっか?」

「うんっ私おなかすいた!」

そういい早歩きで行ってしまうアリス、ソラはその後に続いて歩いていく

中に入るとすでにアリスの母マルティナとアリスの父ガルドは椅子に座っていた、アリスもすぐにいすに座る、ソラは二人を待たせてしまったと思い、目の前まで歩いていき頭を下げる、突然の行動にアリスだけでなくガルドやマルティナも驚いている。

「す、すみません!二人を待たせてしまうとは…なんと謝罪の言葉を言えばいいか…」

マルティナが慌ててソラに頭を上げさせる

「ちょ、ちょっといいわよ別に、私たちも今来たとこなんだか待ってないわよ」

マルティナに続きガルドもソラに声をかける

実はガルドとはまともに会って話すのは初めてだったりする、何回かアリスの家に来ているがそのときは大抵ガルドは家を空けていて仕事をしているのでソラとあうことはないのだ。

「そうだぞソラ君、私たちは今きたばかりだから気にしないでくれ」

伯爵家の当主にそう言われてはいうことを聞くしかないのでソラは渋々頭を上げアリスの横のいすに座る。

皆がいすに座ったことを確認するガルド

「よし、皆そろったな、それでは…いただきます」

「「「いただきます」」」

ご飯を食べてソラは驚く、さすがは伯爵だけあってご飯がとてもおいしい

そんなことを考えながらよく味わいながら食事をするソラ。

しばらくご飯を黙って食べているとガルドがソラに話しかける

「そういえばソラ君とこうしてちゃんと会うのは初めてだな」

ソラはガルドが話しかけてきたとわかると食事をする手を止め、ガルドのほうに顔を向ける。

「はい、申し送れました、僕はアリスと同じ幼稚園に通うソラと申します、アリスにはいつもお世話になり感謝の言葉もございません」

急に姿勢を正し、話し始めたソラにガルドは驚愕する、目は見開き、食事の手も完全に止まっている、そんなガルドの様子にソラは自分が何かまずいことを言っただろかと思いガルドに聞く。

「…すみません、僕はなにかまちがっていたでしょうか?」

自分が失態してしまったのかとソラは心配そうな顔をするが、ガルドの様子はすぐに戻り、顔にも笑顔が戻る。

「い、いや、なんでもない、こちらこそいつもアリスが世話になっている、なにか迷惑をかけてないか?」

アリスはガルドとソラが自分のことについて話していることが気になるのか食事を取りながらも耳は完全にこちらに傾いている。

「問題ありません、いつも幼稚園では友達と元気よく遊んでいます」

「そうか、ならいいのだが、アリスにも友達ができて安心した」

すると二人の会話にアリスが横から入ってくる

「むぅ~!お父さん!私、友達くらいできるもん!」

だがアリスの言葉にガルドは呆れながら言い返す

その横ではマルティナが微笑みながら3人の会話を聞いている

「はぁ…どこ口がそういうんだ、それに人前では「お父様」と様をつけろといっただろう、あと友達ができるっていっても2年前にソラ君と喧嘩した時に騒がしいほどに泣いたそうじゃないか?」

ガルドの言葉にソラは理解できないが多分2年前のボスゴブリンの時の件だろうと予想はつく、するとアリスはみるみる顔を赤くさせていく。

「ちょ、そ、それは言わないでっていったじゃない!!」

アリスはガルドの口をふさごうと席をたち、ガルドの服をつかみ揺さぶる

だがガルドはそんなことを気にも留めずに笑いながら言葉を続ける。

「はっはっはっ、なんだったかな「ソラに嫌われちゃうううう!!」だったか?話を聞いたときは本当に驚いたぞ?」

本人のいる目の前で自分の泣いたときのことを暴露されたアリスは、羞恥心から顔をトマトのように真赤にさせる。

「ご、ごちそうさま!わ、私もう寝る!!」

そういい慌しく自分の部屋へと走っていくアリス、そんな様子にマルティナとガルドは小さく笑いながら、ソラは首をかしげながら食器を片付け、二人に小さく頭を下げる。

「ごちそうさまでした、それでは自分ももう寝ることにします」

ソラの言葉にはガルドではなく、マルティナが答える

「ええ、わたっかたわ、アリスの部屋で寝ていいわよ?部屋はあってもベッドがなくて、ごめんなさいね」

「いえいえ、寝る場所をいただけるだけでありがたいです、それではマルティナ様、ガルド様、おやすみなさい」

ソラのおやすみの挨拶に二人は笑顔のまま答える

「ええ、おやすみなさい」

「ああ、お休み、いい夢をな」






――――コンコン

「……」

ソラがアリスの部屋を教えてもらい、目の前まで来たのだが黙って入るのも礼儀がなっていないと思い、ノックをする、だが中から反応はない。

少し遅れて中でなにやら動くような音が聞こえ、その後に声が聞こえる

「…私もうねるもん、お父様もお母様ももうしらないんだから…」

どうやら先ほどの件で拗ねているようだ

でも先ほどとは違い、ちゃんと注意されたところは直っているのでそこは素直に凄いと思う、だが残念なことにソラはアリスの父さんでも母さんでもないのでその言葉には答えることができない。

「…お父様?お母様?」

返事がないことに気になったのかアリスが今度は質問するように聞いてくる「…えっと、僕だけど?」

―――ガラガラッドコンッ

ソラが声を出すとなにやら中で物が落ちるような音が聞こえソラは心配になりアリスに聞く。

「あ、アリス!大丈夫!?」

「な、なんでソラがいるのよ!!」

質問を質問で返され、ソラはマルティナに言われた事を説明する

「いや、マルティナさんにアリスの部屋で寝るようにっていわれたから…」

「え!?わ、私の部屋で!?」

なにかまずい事でもあるのだろうかとソラは思い、アリスに確認を取る

「…えっと、だめかな?」

するとアリスは慌てたような声を上げる

「い、いいわよ!?で、でもちょっとまってて!私がいいっていうまで入らないで!」

「え?う、うん」

アリスの半分脅すような声の強さにソラは頷くしかなかった


―――ガチャガチャッ


――――ドコンドコンッ


―――ガラガラガラッ


「……」

中で何が行われているのか大体予想はつくソラだが何もいわずにただまっている、ここでもし中に入ったらまずいことになるとソラの直感がいっているのだ、しばらくたち音がやむと中からアリスが扉を開け出てくる。

「はぁはぁ…いいわよ」

なぜか息切れをしているアリスだがソラはあえて突っ込まずに中に入る

アリスの部屋の中に入り、最初に思ったことは広い、ということである、ほかにもピンクのベッドや熊のぬいぐるみなど可愛らしいものが置いてあり、いかにも女の子の部屋という感じがある。

「えっと…じゃあもう寝る?」

ソラがアリスに聞くとアリスはそれに同意する

「うん、なんだかもう疲れちゃったわ…」

それは先ほど激しく動いたからじゃないかと思うがソラにそれをいう勇気はない、二人は同じベッドに入り寝転がる、ソラは気にせずに目を閉じ寝る体制に入るがアリスは疲れている割には目をパッチリと開け、頬を少し赤く染めている。

(…そ、ソラと一緒にねてる…あ、気にしたら顔があつくなってきたっ)

などとアリスの頭の中ではいろいろと寝るどことではない

だがアリスも子供、少したつと眠たくなってきたのか目が閉じかける

「あ、ごめん僕ちょっとお手洗いにいってくるね」

「…ふにゃぁ」

ソラがお手洗いに行くといってもアリスはもうすでに夢の中だった

ソラは微笑みながらアリスの頭をなで、部屋を出て行く。


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