二話 少年を助けた騎士
「…うぅ…」
少年の眉が動く
「…ここは?」
少年の目が覚める、目がさめ最初に見たのは汚い地面でも青い空でもなく木製の天井だった。少年は自分が気を失ったのは町の前ではなかったのかと首をかしげる。
「よいっしょ…ッ…」
少年は自分の状況を確かめようと起き上がろうとしたが、体に激痛が走り起き上がるのを諦め、目だけを動かし自分の状況を確かめることにした。
どうやら自分はベッドに寝ているようだと少年は理解する。
周りを見ると、ベッドの横には窓があり外が見えるようになっている。
部屋の中には本棚、椅子、机などがりどれも綺麗でよく手入れがされ手いるのがわかる。そこから察するにここは物置とかではなく誰かの部屋である可能性が高いと結論づける。
―――ギィィイイ
すると部屋のドアが開き誰かが入ってくる
「…なんだ、目が覚めていたのか」
入ってきたのは二十代後半位で、髪の毛は茶色で背は190cmはありそうな大柄の男だった
腰には剣を挿しとてもきれいな白い防具を着ていた。
人目で盗賊などの類の人ではないことを理解する。
「…貴方がたすけて…くれたんですか?」
まだ本調子でないのか途切れ途切れで言葉を発する少年
そのことを察してか男は少年にやさしく声をかける。
「ああ、驚いたぞ、町の前にお前みたいな幼い少年が倒れていて、何事かと思ったぞ」
男は優しく声をかけながら少年の頭をなでる。
だがその一方で男は不審に思っていた、町の前で少年が倒れていることも驚く内容の一つなのだが少年の服と体が問題であった。
少年の服装は辛うじて元は白の服だと断定できるくらい汚れていて、薄い布切れを着ていることと、少年の体に見られる異様な傷の数だった。
(この少年に何があったのだ?この傷は転んだりしてできる物ではない)
男が思考していると自分の手の下にいる少年が申し訳なさそうにこちらを見上げているのにきがついた。
「どうした?どこか痛いのか?」
「いや…心配かけてごめんなさい」
男はホッと息を吐く、体に問題がないとわかり気が抜けたのだ。
「子供がそんなことを心配するな、そういえば名乗っていなかったな、俺は騎士をしているダッグという、ダッグ・バルカスだ」
男が名乗り、少年の頭から手をどける
すると少年は頭を下げ
「あり、がとうございます…バルカスさん」
男は驚いたように少年を見た
この年で完璧ではないものの敬語が使えしっかりと感謝の言葉が言える子供は少ない。それに普通なら目が覚め泣き叫ぶことも想定していたダッグだがこの少年は目が覚めてから泣く素振りを全然見せない。
男はそのことを少し不思議に思いながら少年に声をかける。
「なに、騎士として当然のことをしたまでだ、それにバルカスじゃなくてダッグでいい、そちらの方が呼ばれなれている」
「それに、部屋も…ベッドも…かしてもらって」
男は再度少年の頭をなでる、最初のとは違う少し乱暴な感じに、でもどこか心地がよい感じにクシャクシャとなでられる。
「気にするなといったろう?今は休め」
「…はい」
そして少年は再び眠りについた。
――――次の日―――――
少年は目が覚める
周りを見て昨日と同じ場所にいることを確認してベッドから出る。
「ダッグさん、どこだろう?」
自分を助けてくれたダッグを探すために少年は部屋から出てダッグを探す
部屋を出て思ったがここはどうやらそこそこ大きい屋敷みたいだ。
さすが騎士と言ったところだろうか、幼い少年にとっては少し長く思える通路を歩きリビングと思える少しほかの部屋よりも大きい部屋に出る。
そこには椅子に座り剣の手入れをしているダッグがいた。
ダッグに話しかけるため少年はダッグの近くまで歩いていく。
「おはよう…ございます、ダッグさん」
ダッグは剣の手入れをしていた手を止めこちらを向き笑顔を向ける
「ああ、おはよう、よく眠れたみたいだな」
少年は今までここまで綺麗な絵がをを向けられたことがなかったので少し困惑しながら気になっていることを質問することにした。
「ダッグさん、僕は、どうすればいいですか?」
この少年の問いにダッグは少し考えるそぶりをした
「…うむ、じゃあこの後飯を食った後に騎士本部まで出かけるから付いて来てくれ」
「はい…」
ダッグはこの後少年を連れて騎士本部まで行き少年の事情と少年のことを聞こうと思ってこう言ったのだが、少年の考えていることとは違う意味で「どうすればいい?」を解釈していた。
少年はこの後自分は何処で働き何をすればいいのかを聞こうと思ったのだがそれは少年が昔から過ごしていた環境に感化されているためである。
だが普通はダッグのように何処かにいくのか?または自分はこれからどうすればいい?という意味で解釈してしまうのはあたりまえである。
しばらくたちダッグがご飯を準備し机に並べ終わったところで少年は首をかしげた。
「ん?どうした、あー…皿が俺と少年の分しかないのは俺が独身だからだぞ?だから問題ない」
何を心配したのかそれともいいわけなのかダッグは聞いてもいないことを話し始めた。勿論少年が首をかしげた理由はそんなことではない。
理由は
――――なんでこんなにまともなご飯が食べられるんだろう?
である
少年は今までまともな食事など取ったことは無かった、いつも食べるものは食べ残しの残飯などで酷い時は生肉など何も調理されてない状態の食べ物を渡されたときもあった。
結果として、いつもお腹を壊していたのだが。
「まあ、とりあえず座ったらどうだ?」
ダッグに言われたので少年は困惑する感情をそのままにして座ることにした
このことでダッグは頭を抱えることになるのだが
「すまないが先に食べていてくれ、連絡が入った」
そういいダッグは部屋の奥に行き誰かと話し始めた
少年はどうやって誰と話をしているのか気になったが魔法の一種ということは大体予想がつくので少年は先に座ってご飯を食べることにした。
「…ッ!?…おいしい」
少年は驚く、ご飯はこんなにも美味しい物なのかと
今まで自分が食べていた物がゴミのように思える。
「あれ?何で僕泣いて…」
気がつくと下のご飯に水滴が入っていて初めて自分が泣いていることに気がついた。
―――むしゃむしゃっむぐむぐ
無我夢中で少年は食べ物にかぶりつく
元々ここ最近ご飯を食べていなかったので余計においしく感じる。
そしてそこで玄関の外から足音が近づいてくる
だが少年はご飯に夢中で気がつかない
――――ギィイイイイ
ドアが開き人影が見え初めて少年は人が入ってきたことに気がついた
そして少年が目にしたものは―――
「…へ?」
気の抜けた声をあげる二十代くらいの女性シスターだった。
シスターの身長はだいたい160後半で金髪の目がクリクリの母性あふれる女性だった。そしてなぜシスターが気の抜けた声を上げたかというと知らない少年がいるというのにも驚くことなのだが、最大の理由は
―――――一心不乱に『床で』食事をしている少年の姿を見たからだ
――――ダッグサイド――――
「すまないが先に食べていてくれ、連絡が入った」
少年にそう告げ部屋を出て奥のほうに歩いていった。
自分を待って食事を遅らせるのも悪いと思ったからだろう、それにもう少しで昨日連絡を入れた知り合いのシスターが来るはずなのでもしものときはシスターがいるから大丈夫だろう、という考えだった
ダッグは部屋の奥に行き魔法を使い通信した。
すると向こうから先に声が発せられる
『ふむ、昨日連絡をよこしたもので間違いないか?』
ダッグは何時もより少し気の引き締まった声で答える
「はっ私は昨日連絡を入れましたキルノア騎士団所属、ダッグ・バルカスです!騎士団長!」
相手はキルノア騎士団の団長、つまりダッグの所属している騎士団の最高権力者であり最高責任者である。
緊張するのも無理はないだろう。
『うむ、それで昨日知らせがあったが…まことなのか?少年が倒れていたというのは』
「はっ間違いありません、今は私の家で保護しています」
『…わかった、ダッグ勤めご苦労だった、今日中に本部に連れて来るように、事情を聞きたい。あと確認のためだがどんな少年だ?』
団長の質問に少し考え間を空けてからダッグは返事をする
「はっ性別は男で年は5歳くらいかと、白髪で大人しく頭がよく周る少年です」
『…ふむ、その年で大人しいとな、わかったではまっているぞ』
「はっ」
『私からは以上だ』
――プツンッ
連絡の切れる音がして団長との話し合いはこれで終わった
「…はぁ」
緊張したせいか疲れがドっと出てきてつい溜息をついてしまうダッグ
だが少年を放置したままということを思い出したのかダッグはすぐに方向転換をし少年の元へと戻っていく。
少年への元へと戻る最中にダッグは考える
ダッグにも少年に対して思うことはいくつかある、まずなぜ町の前で倒れていたのかということと、そして親はどうしたのかということ、体の傷はどうしたのかと、なぜまともの服を着ていないのかと、聞きたいことは山ほどあるが今はそれをいっても少年を混乱させるだけであると結論づけもう少し落ち着いてからということにしている。
(そういえば俺はまだ少年の名前を知らないんだな)
そこで初めてダッグはまだ少年の名前を聞いていないことに気がついた
自分の名前を言っていたのでつい聞いた気分になっていたがダッグはずっと少年のことを「少年」とよんでいることに気がつき名前を聞いていないことに自分を恥じた。
(後で名前を聞いておこう、しかし不思議な少年だな)
なんて思いながらダッグは食事の部屋に入るためにドアに手をかけ
中に入ろうと目を前に向けると
――――ギィィイイイ
そこでダッグは固まった
理由は簡単である、少年が食事を床でしていたからだ
そして目を前に向けると昨日よんだシスターのエリイがいる、今来たのだろうと予測はつくが現状が現状だ。
「…へ?」
その声はダッグだっただろうかエリイだっただろうか
ダッグは声の高さからエリイだろうとはわかったが何も声を発せない。
『ダッグの家』で5~6歳くらいの少年が『床でダッグの作ったご飯』を『泣きながら』食べているのがこの構図だ。そして目の前にはシスターのエリイ。
ダッグが固まったのも無理はないだろう、だが少年だけが無邪気に首をかしげ
「…?、どうしたの?」
その質問に答える者は誰もいなかった。