十七話 2年後
内容を少し変更しました
5年後=2年後 にかえました、すでに読んでしまった方はすみません
どこかで5年後のままになっていたりする文章があったらご報告くしてくださるとうれしいです。
ソラはアリスの家で勉強会をやるために賑やかな町を歩いている
7歳になったソラ達は1年後幼稚園を卒業し、キルノア魔法学校に入ることになった、だがキルノア魔法学校は学校の名前にキルノアと国の名前が入ってるだけあり、レベルが高いのだそうだ。
入学するには試験があり、その試験を受けて合格しなければならない
合格の基準としては、「初級魔法を一つ以上」「文字の読み書き」の二つがあり、ソラ、アリス、ミレイ共に文字は読めるので文字の読み書きに関しては問題がないのだが、ミレイは魔法が使えるものの失敗するときがあり、ソラとアリスはそれを心配して最近は3人が集まって勉強会をする時が多くなった。
ちなみにアリスに関しては流石伯爵家の娘といったところか初級魔法を3つ使うことができる。
といっても、使えるというだけで実戦ではまだ使うことは許されていないらしい。
「……」
ソラはそんなことを考えながら空を見る
今ではすっかり癖になってしまった、そんなことを思い、それが嬉しいのかソラの顔には笑みがうかぶ。
そしていつもと同じ何の変哲もない空を見ているとよく思い出すことがある
「…またくるとかいってたけど、2年間一度も夢の中にでてきてないなぁ」
そう、2年前にソラの夢の中に出てきたもう一人の自分である、あのころは突然の状況に動揺していて冷静な判断力が欠けていたこともあり、しばらくは混乱しっぱなしだったが、時間がたつにつれあの夢についてよく考えるようになった。
そして自分の心の中でひそかに思っていた「エリイを認めていない」ということをソラは認めたのだ。
そしてそれを認め、ソラは2年間エリイにそのことを言えないでいる、ソラはこのままではまずいと思い密かに自分の心の中で「この試験に受かったらエリイと話をしよう」と決めているのだ。
それはエリイを家族と認めると共に苗字を一緒にすることを意味する、ソラはエリイのことをすでに家族と認めているのだ、だがそれをなかなかいえないでいるので、来年の試験をきっかけにエリイに話そうと思っている。
ソラも一応まだ子供、きっかけがあると勇気がわくお年頃なのだ
ソラにここまでの心境の変化を与えたのは他の誰でもない夢の中であったもう一人の自分だろう、ソラはこの2年の間にいろいろな事を学び、認め、受け入れてきた、だがそれでもソラの覚醒の能力の色は黒のまま、こんど夢に出てきたらそのことについて話をしたいと思っていたのだが、あれ以来一度も夢に出てきていないのでどうしたものかと悩むソラだった。
(……でも、もう一人の僕はなんで…)
ソラは話さなければいけないことは沢山あるがその中でも一番最初に聞くことは決まっていた、それは―――
「ちょっとぉ!!ソラ!遅いわよ!!」
「ごめんごめん、でも今ってまだ約束の時間の10分前じゃない?」
ソラは伯爵家の玄関前で頬を膨らませ、お怒りのアリスを見て思考を一旦中断した。
アリスも7歳になり、身長も伸び、女の子らしさが出てきている。
遅くはないのでは?と疑問を投げかけたソラだったが、アリスはほほを膨らませたままである。
「レディを待たせている時点で遅刻なのよ!!」
「……えー」
あまりの暴論にソラは何も言い返せない
ソラは心の中で
(それってもともとアリスの家なんだからどれだけ早く来ても遅刻になるんじゃ……)
と思ったが、あえて口には出さないのがソラである、それを言うと話が長引くのが目に見えている。
「えっと、遅れてごめん…あれ、ミレイは?」
「まだきてないわよ?」
「……」
もう何もいうまいとソラはアリスの玄関に歩いていく、そして玄関に見知った女性が顔を出す。
「あらソラ君いらっしゃい、ずいぶんと早いのね?」
玄関からマルティナが出てくるとソラは姿勢をただしマルティナに向かい一礼をする。
「おはようございますマルティナ様、本日はアリス様のご提案で家の中にお邪魔することになりました、迷惑はかけないようにするのでよろしくお願いします」
ソラの言葉にマルティナは苦笑しソラの頭を撫でる
ソラはそれを拒まず黙って撫でれる
「まったく、いつの間にこんな言葉使いになったのかしら?普通でいいっていってるのに」
前のままでいいとマルティナはソラに言うがソラは首を横に振る
「それはいけません、僕は平民、貴方様は貴族です、けじめくらいはつけないと他の者にしめしがつきません」
そう、ソラは7歳になり、マルティナに敬語を使うようになった、少なくとも人目につくところでは、3~5歳の場合はまだ回りに目を瞑ってもらえるが教育を受ける年齢になると貴族と平民の区別がつけられるようになる
だがそれでもマルティナは引き下がろうとしない
「じゃあせめて人目のない所では何時も通りにしてもらえるかしら?」
「…わかりました」
先に折れたのはソラ、確かに昔からのこともあり、人目のないところでは普通に話したいとソラ自身も思っている、それになにより貴族にここまで言わせて断るほうが逆に罪になる場合がある。
人がいるところなら話は別だが、人目のいないところでという話なのでソラもマルティナの言うことを了承した。
「むぅー…」
だがそれについて納得していないものがいた、アリスだ
ソラがアリスに気づき、首をかしげる
「どうしたのアリス?」
するとアリスは唇を尖らせ、すねた様にソラに言う
「…私には敬語使ってないのに」
どうやらマルティナにだけ敬語を使っているのが気に食わないらしい
だが昔ソラがアリスに向かっても敬語を使ったことがあったがそのときは
「いやぁ!ふぇえええ!」
と、なぜか泣かれ、拒否反応じみたことが起きたのでそれ以来ソラはアリスにため口だ。
「じゃあアリスにも敬語を使おうか?」
ためしにそんな事を言ってみたソラだがアリスは「プイッ」と顔を横に向け答えない、だがソラはなんとなくアリスの顔に嫌だと書いてあるような感じがしたのでいつもどおり話かけることにした。
「それで、早いってマルティナさんが言ってるけどどういうこと?」
敬語にならず普通に話しかけられたのが嬉しかったのか、アリスはパァっと顔を輝かせ笑顔になるが、ソラの顔を見て顔を赤くさせ俯いてしまう
そんな様子のアリスにソラは首をかしげ、マルティナは微笑んでいる。
するとマルティナが微笑みながらアリスの変わりにソラに答える
「アリスったらミレイの前に私もソラに教えてもらうーっていって早く呼んだのよ?」
「お、お母さん!!それはいっちゃだめって……あ」
アリスが自分の言ったと言葉に気づき、ソラを見る
ソラはマルティナのいっていることに気づくとアリスを見て微笑む
「いいよ、流石アリス、勉強熱心なんだね」
アリスは顔を真赤にさせそのままバタバタと家の中に入っていってしまう
ソラは何が起きたのか理解できずにマルティナを見る、だがマルティナは二人を見てただ微笑んでいるだけだった
(……どういうこと?)
「よぉし!ソラ!魔法の特訓をするわよ!」
ソラとアリスは現在伯爵家の庭にいる、すでに何度も見ているソラだがそれでも伯爵家の庭の広さに慣れていない。
「……あいかわらず広いよね」
するとアリスはキョトンとした顔をし
「何いってるのよ、これくらい普通でしょ?」
(……)
どうやら一般常識が通用しないらしい、そう思ったソラはそれ以上は何もいわずに魔法の本を開く。
「えっと…アリスは今どれくらい魔法が使えるんだっけ?」
確認のためソラが疑問を投げかけるとアリスは自信満々に答える
「ふふっ見て驚きなさい!これが私のステータスよ!」
勢いよくソラの前にステータスを見せるアリス、だがソラはそんな自信満々なアリスを見て驚きの表情を浮かべる、アリスのステータスではなく、アリスを見て驚いている様子にアリスは困惑する。
「?なによ」
するとソラは遠慮がちにアリスに言う
「…アリス、前までは「すてーたす」っていってたのに、ちゃんと言えるようになったなんだね」
「……ッ!」
アリスはソラの言葉を聞き、昔のことを思い出したのか顔を赤くし、ソラの肩を殴る
―――ボカッ
「いたっ」
「どれだけ昔のこといってるのよ!!」
アリスは顔をトマトのように真赤にさせソラを怒鳴る、だがソラは心外だと言わんばかりにアリスに言い返す。
「昔のことって…つい最近のことじゃないか…」
――――ボカッ
そしてまたアリスに殴られる
「いいから早く魔法の特訓をするわよ!!」
「…わかったよ」
こうなったアリスはどうしようもないとソラは知っているので、それ以上は何もいわず黙ってアリスのステータスを見る。
名前:アリス・イリス・ストアシア
種族:人間
年齢:7歳
体力:E 筋力:E 覚醒:D
魔力:C 精神:D
[装備]
『貴族服』
[魔法]
【ウォーターボール】【ファイアーボール】【エアカッター】【武器強化】
[称号]
【伯爵家】
さすが貴族、英才教育を受けているからか、初級魔法を3つ、無属性魔法を一つ、ステータスも筋力と体力意外は全てD以上、この成績なら試験の合格どころか新入生の学年主席も狙えるんじゃないかといわれているだけはある。
だがソラはこれは英才教育だけでなくアリス自身もがんばった結果だろうと思う、英才教育を受けただけでは普通ここまであがらないと、ソラはそう思うのだ。
そしてそれと同時にある疑問がソラの頭に浮かぶ
「…なにするの?」
「え?」
ソラがアリスのステータスを見てつぶやいた言葉をアリスは理解できない
するとソラがアリスを見て、言葉が不十分だったかなといって今度はわかりやすくいう。
「いや、すでにアリスって十分強いでしょ?これ以上特訓してどうするのかな~って」
そう、アリスのステータスではもう合格には十分なのだ、なのにミレイに黙ってまでしてソラを呼び、魔法の特訓をする意味がわからないのだ。
するとアリスは目を細くしてソラを見る、だがソラはそれに気づかずに言葉を続ける。
「これ以上今やる必要あるのかな?それよりミレイの魔法の特訓時間を増やした方がいい気がするんだけど…」
最後はアリスの顔を見て言葉が小さくなってしまった
するとアリスは目を細めたまま、ソラを見て口を開く
「…ねぇソラ、私エリイさんから聞いたんだけど、ソラって家にいるときも暇なときとかに特訓してるのよね?」
アリスの言葉に少しあせりの表情を見せながらソラは答える
「い、いや、そうだけど、でも今回はミレイも誘ってるわけだし…」
「…ソラ、ステータス見せてくれる?」
ステータスを見せるように言われ、ソラは戸惑う
まるで見られたらまずいかのような反応にアリスは心の中で確信する
「い、いやでも「いいから」…うん」
最後はアリスのドスのきいた声にソラは言い返せなくなり、渋々ステータスを表示する。
「…ステータス」
名前:ソラ(7番)
種族:人間
年齢:7歳
体力:D 筋力:F 覚醒:B
魔力:D 精神:C
[装備]
『服』『ナイフ×3』
[魔法]
【フレイムボール】【ファイアーボール】【エアシールド】【エアカッター】【身体強化】
[称号]
【7番の少年】【目覚めた悪魔】
「……」
アリスはソラのステータスを見て、無言でソラを見る、無論アリスの目は先ほどと同じ細いまま、ソラは目をそらす
「…ねぇ」
「な、なに?」
アリスの小さな声に、だがはっきりと聞こえるような憤怒の声にソラは戸惑いながらも聞き返す。
「確かに昔ソラがボスゴブリンと戦って生き残ったとは聞いたわ、だからそれなりに強いとは思っていたわ、でも……何よこれ!私よりステータス高いじゃない!!魔法だって何で中級魔法の「フレイムボール」を覚えてるのよ!!」
実はアリスがソラのステータスを見るのはこれが初めてだったりする、元々ステータスの存在を教えられるのが勉強を始める6歳前後、そして最初に3人で「ステータスは試験の前まで見せない」ということを決めていたのだ。
今日がその見せる日だったのだがアリスはソラの予想以上に高いステータスに驚愕の表所を浮かべる。
「い、いや~いろいろあって」
(僕が昔、奴隷で剣と魔法の訓練をしてたなんていえないよなぁ)
今では昔のことを思い出し、ソラはアリスの言葉にはっきりと言い返せない
「それに何よこれ!覚醒がB!?意味がわからないわ!まだつかったことすらないのに何でこんなに上がってんのよ!!」
アリスは、いや、ソラの覚醒の能力についてはダッグとエリイ意外に知る人はいない、学校に入学すれば覚醒の授業もあり見せることになるのだがそれまでは見せる必要もないだろうとソラは見せていないのだ。
「あ、あははは…」
「笑ってんじゃないわよ!これを私に見せて特訓をやめろなんて言わないわよね?」
「…特訓、しよっか」
結局最後はあきらめてアリスの魔法の特訓に付き合うことになった、そしてソラはアリスの特訓に付き合いながら
(そういえばこの後ミレイにも見せるんだよなぁ…はぁ)
と、溜息をつきながら先のことについて悩んでいた。




