十五話 病院でⅡ
「……綺麗だなぁ」
ベッドから上半身だけを起こし、窓から外を見ているソラ
かれこれ入院2日目である、なぜ一日目が回想されていないのかというとその理由はいたって簡単だ、目が覚めた後からずっとエリイに世話をやかされていたのだ、今回ソラが受けた傷がずいぶんと気になるのか、何をするにもついてくるのだ。
―――ギュゥウウウ
「ソラ……」
「く、くるしい…」
エリイが寝ながらソラに抱きつき、ソラが苦しそうに声を上げる。
だがソラの声はエリイに聞こえることはなく、そのまま抱きしめられ続ける
さらに―――
「え、エリイ姉さん、僕トイレに…」
ソラがトイレに行くといえば
「私もついていきます!」
このざまである
流石にそれは勘弁してほしいとエリイにいい、ついてこないように言う。
だがエリイも一日目はずっとソラについていたが、エリイにもシスターという仕事があるのでずっと一緒に入られない、二日目になりエリイは行きたくないと言っていたが
「なにをいっているんだ、お前はシスターだろう、自分の仕事をしっかりとこなすんだ」
「そうだよエリイ姉さん、僕は大丈夫だから」
ダッグとソラにより説得され渋々と病室を出て行く、それに続いてダッグも騎士の仕事で、特に今回のことで報告をしなければならないらしくすぐに出ていった。
アリスもミレイも今日は幼稚園があるので結果としてソラ一人になったのだ
ソラはあいかわらず空を見続けている、顔に笑顔を浮かべながら。
「…あの雲から見たらこの町はどう見えるんだろう…」
ソラは最近空を見ていてふと、そう思うことが増えた、あの雲から、あの空から見たらこの町や国はどう見えるのだろうと――
そしてソラは本などでどうにか空を飛ぶ方法がないかと魔法などをいろいろと調べてみたがどの本にもそんなことには載っていなかった。
(風魔法とかならあるとは思ったんだけどなぁ…)
風魔法を詳しく調べれば空を飛ぶことのできる魔法が何かあるかもしれないと思い、詳しく調べたがどこにもそんなことは載っていなかった、今回得たものといえば無駄に調べて覚えてしまった魔法知識だろう。
「……はぁ」
入院している間に呼んだ本はすでに10冊は超えている、だが結果が得られず、ソラはつい溜息をついてしまう。
「…まぁ、全部が無駄ではなかったかな?」
そう、決してすべてが無駄だったわけではない、ソラ自身が魔法のことを調べ、知ったことは沢山ある、もともと自分の覚えている「ファイアーボール」と「エアカッター」以外に知っている魔法がなかったのだ。
ソラが魔法の知識として知っていたことは
火属性の魔法があるということ
風属性の魔法があるということ
この二つである
そして今回のボスゴブリンとの戦いで学んだことや、本を読んで知ったことは、まず覚醒の力は魔力と関係しているということだ、あとはボスゴブリンが予想以上に強かったということか。
そして今回本を読みあさり知ったことをソラは思い返す
(…思ったより、難しいな…)
それが今回本を読み、ソラの思った最初の感想である。
魔法はソラが思ったよりも難しく、そして奥深かった、なにしろいまだにまだ解明されていない点がいくつもあるくらいだ、そんな本を5歳のソラが読んでも理解できたことは少ない。
まず今回知ったことを上げると
魔法は魔力を使い使用するもの
魔法を使うには訓練をし、感覚や想像力、そして魔法を使うに当たる知識が必要になるということ。
魔法には属性が
火属性・風属性・水属性・土属性・雷属性・光属性・闇属性の7つの属性がある。
今のとこソラは風属性と火属性しかつかえない、使えないといってもこの年で二つの魔法が使えること自体が普通ではないのだが
そして魔法には適性属性があり、人によって使える属性と使えない属性がある、平均的には魔法を学んだもので2~3属性の魔法を使うことができる。
多いものでは5~7属性も使えるものがいるという
ソラは今のところ2つの属性を使うことができるので平均には達していると安心した。
また、魔法には強さにもレベルがあり、初級レベル、中級レベル、上級レベルと最後に最上級レベルがある、ソラの使っている「ファイアーボール」と「エアカッター」はどちらも初級レベルの魔法のようで特訓しだいで上級レベルまでいく魔法らしい。
だが上級以上の魔法を使うには、相当な訓練が必要ということくらいは本を読まずにもわかる。
それを知りソラは、自分はまだまだなんだなと自覚し、これからも訓練に力を入れようと心の中で決意する。
だがどれだけ本を読んでも、空を飛ぶことのできる魔法は書いていなかった
それだけがソラは残念に思う。
だが同時にソラは考える
「……ないってことはまだ見つけられていないだけじゃないのかな?」
そう、魔法はまだ解明されていない点がいくつもある、それはつまり発見されていない魔法がいくつもあるということだ、逆に言えば誰も知らない魔法がもしかしたら作れるかもしれないということでもある。
(……あれ?)
そしてソラはそこまで考えて不思議に思うことがあることに気づく、覚醒は魔力に関係しているということはわかった、そしてソラは自分の覚醒の能力を思う出す、ソラの能力は自分の負の感情が関係しているということは大体予想がつくのだが、あの黒いもやの形には何か意味があるのだろうかと
もしかしたらたまたまできた形かもしれない、形もいびつなのでそれが一番しっくりくる、だがソラはどうしても気になる点があった。
(…あの黒い翼は…いったい…)
そう、いくらいびつな形をしているといってもその形がはっきりしすぎているのだ、あれは誰が見ても一目で翼だとわかる、だがその翼は片方にしか生えていない。
だからソラはますますその翼の意味がわからなくなってしまっている、だがボスゴブリンと戦ったときに黒いもやが増え、顔にまで迫ってきていたことを思い出し、もしかしたらもう片方も翼が生えるかもしれない、そしたらもしかしたら空も飛べるかもしれない、そう思ったのだ。
「…こんど、試してみよっかな…」
ひそかに特訓のメニューを増やすことを決めるソラ
そしてソラは考えるのを一旦やめ、空をもう一度見る
窓の中から見る空はいつもと変わらず綺麗な空だった、ソラはそんな外を見ながらこれからのことを考える。
これからというのは退院後のことである、今回の件でソラは自分にまだ人を守れるほどの力がないことを嫌というほど味わった。
このままでいいのだろうか、もっと特訓の時間を増やしたほうがいいのだろうかと、いろいろと考えることがある。
「あ、そういえばステータスどうなったんだろう…」
今回の戦いでソラは自分のステータスに変化がないのか気になり、誰にも聞こえないように心の中で「ステータス」と念じる。
するとソラの前にステータスが表示され何か変わっているところがないか確かめる。
名前:ソラ(7番)
種族:人間
年齢:5歳
体力:E 筋力:F 覚醒:C
魔力:E 精神:D
[装備]
『薄い服』『ナイフ』
[魔法]
【ファイアーボール】【エアカッター】【身体強化】
[称号]
【7番の少年】【目覚めた悪魔】
ソラは驚く
ステータスの項目で体力などはランクが上がっていないが魔法の項目で「身体強化」が増えている。
ソラは頭の中で身体強化が何の魔法なのか思い出そうと考える。
「…あ、無属性魔法!」
そう、身体強化は無属性の魔法、無属性とは誰でもが使える属性のないまほうのことである、その中で有名なのが武器強化や身体強化である、その中の身体強化が増えていたことにソラは驚き、同時にうれしく思う、筋力の項目でFのソラにとってはとても役に立つ魔法だからだ。
そしてソラのこれからのことで最初にやることが決まった
「退院したらさっそくためしてみよう!」
身体強化の練習である
だが退院が待ちきれずにすぐにでも外で練習しようとしたソラであるが、病院の先生に見つかり怒られてしまい、申し訳なさそうに部屋に戻るソラ、まだまだそういうところでは子供らしさがあるようで病院の先生は少し安心していたのだが無論ソラはそのことに気づいていない。
「…暇だなぁ」
先生に怒られ、何もすることだなくただそう口から漏らすことしかできないソラであった。




