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おかしな国にも一緒に遊べる親友がいる

「ぐはぁ!」

 

 ルシファーが幼女の攻撃なのにもかかわらず情けなく倒れる。さっきまでのナルシストオーラ全開の影もなく、地面を転げまわる。

 

「だっさぁー」


 カカベルさんいくら小声でも辞めてあげて下さい。


「おいてめー。次、ちっちゃいとかチビとか言ったら鉄拳ねじ込むから」


「もうねじ込んでる! もうねじ込んじゃってるよ!」


「あ、そっか。じゃあ、この杖で頭をかち割る」


「駄目だって! ルシファー死ぬよ!?」


「こんなナルシストはいなくなった方が良いです」


 ぐう正論。


「おい! サタナエル! なに正論だ、言い返せないみたいな顔してんだよ! 敵か! お前もついに敵になったか!」


 すまん。ルシファー。こればかりは言い返せない。


 俺は後ろを向き告げる。


「お前……なにも分かって無いのか」


「え? 何この俺様が居たたまれない空気。てか、分かって無いって何!?」


「大丈夫さ。いずれ分かる時が来る」


「俺様はお前が分かんねーよぉぉぉぉおおおおおおおお!!」


 残念なイケメンってこの人みたいな事を言うんだね。


「まぁ、馬鹿チビルシファーの分かる分からないはどうでもいいとして」


「よくねーよ」


「さっさとサタナエルの魂取り戻しに行くわよ。まずは城に行くんだから。こんなところで、道草食ってる暇はないわ」


「むしかよ。……て、サタナエルの魂って?」


「あら、あんた親友だった癖に分からないの? この魔王の中に居るのはサタナエルじゃない」


「……知ってるけど」

 

 ルシファーが俯く。何があったんだ?


「なら何? 文句有る?」

 

「……魂は、サタナエルの魂はどこにあるんだ」


「勇者ヴォン=ロスタムの城よ」


「そいつから、魂奪えばサタナエルは元に戻るのか?」


「そうよ。じゃあ、行くから。魔王こっち」


「あ、ああ。じゃあなルシファー」


 俯いたままのルシファーに声をかけてカカベルについて行く。


 路地から出て賑やかな道に出る。


「おい、いいのか。置いて行って。何か言いたそうだったけど」


「いいのよ」


 すたすたと、カカベルはあるいて行くこころなし歩くのがだんだん早くなってきている。ルシファーと妙な空気で別れたのをカカベルなりに気にして反省しているのだろうか。まぁ、俺も散々酷い事言ったけど。


 5分くらい歩いただろうか。城らしきものが見えてきた。


「あ、あれ、城か?」


「ええ。残念ながら」


 目の前にあるのは立派な城だ。

 だが……。


「随分とメルヘンだな」


 凄くメルヘンだった。

 ピンクとか白とか可愛らしい色でふわふわした印象の城。可愛らしいお姫様が住んでそうなそんな城。

 絶対魔王城じゃないと思った。


「言ったでしょ。テーマパーク立てるために世界征服しようとした魔王だって」


「そうでした……」


 2人呆れながら城の中に入っていく。

 中は外見よりもメルヘン度がアップしていた。

 歴代の魔王と思われる絵の額縁はリボンとレースで飾り付けられているし、行きかう使用人の人はおとぎ話の登場人物のよう。

 黒い服で歩く俺が物凄く浮く。


 カカベルは『だいまおうさま』と書かれたドアの前でとまる。


「ここが大魔王モロク=グザファンの部屋をよ。別に緊張すること無いわ」


「うん。どんな人なわけ?」

 

 俺の予想だとこの城の主だから案外可愛らしい外見と性格をしているんじゃないかと思っている。本当は魔王としての威厳を守っている大魔王だといいんだけどな。


「あった方が早いわ。開けるわよ」


「よく着たな。カカベルと異世界からの英雄」


 聞こえたのはラスボスぽい声。威厳のある力強い声。

 そっと顔を上げてみる。


「うわぁー」


「その反応は予想していたけど止めて」


「ごめんカカベル」


 実際の大魔王は表情にも声にも発言にも威厳があった。

 だからと言って。


「フリフリの衣装は無いだろ」


 フリフリ、リボンたっぷり、カラフルの絶対大魔王にはあってはならない要素がたっぷり詰まった衣装を着ていた。

 

「旅の準備は整ったのか」


「はい、今すぐにでも旅たちます」


「そうか。では、改めて魔王パーティーメンバー『カカベル=ウォッチャー』、『サタナエル=グザファン』……」


 大魔王が俺達の名前を呼ぶ。

 そんな中俺はさっきから気になってる事を小声でカカベルに問う。


「なぁ、カカベル何でそんなに不機嫌そうなんだ? 俺何かしたか?」


「いいえ。これから二人で旅に出られると思うと楽しみで仕方が無いわ。ホント、2人でね」


「は、はぁ」


 妙に『2人で』を強調している気がする。


「2人を英雄とし」


 大魔王がゆっくりと言葉を紡ぐ。


 その時、急に使用人がノックもなしに入って来る。凄くあわてた様子の使用人は大魔王に駆け寄り何か告げる。何があったのだろうか。緊張した空気が部屋を支配する。


 カカベルはこの緊張した空気の中ため息交じりに言う。


「貴方は知らないだろうけど。あいつ案外」


「あいつ?」


「あきらめ悪いのよ」


 ――――――バァァァァアアアアン!!


 大きなをとを立て再び開いたドアの前に立つのは……。


「おい! サタナエルの親父さん! 俺様が居ないとサタナエル機嫌悪くすっから、俺様もちょっくら親友遊びに誘ってくるっ!」


「ルシファーお前……」


「やっぱり……馬鹿チビ来たか」


 ちらっと見えた大魔王の顔はニヤリと怪しい笑顔でルシファーを見ていた。


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