グザファンの町
「じゃあ早速旅に出るか」
立ち上がり。カカベルに手を差し伸べる。
カカベルは俺の手を取って立ち上がり俺の手を握ったまま歩き出した。
「おい、何処行くんだ?」
「まず城に連れていくわ。大魔王に報告しに行くの」
そうかこの計画を立てたのはきっとカカベルだけじゃないだろう。そこに大魔王とか大魔王の妻とかがかかわっているんだろう。
「城って何処にあるの?」
カカベルは少し遠くの黒い城を指差した。
こういうところは魔王っぽいな。
「此処から町の方に出るぞ。沢山人が居るから私からはぐれるな」
「ああ」
何で俺幼女に私からはぐれるななんて言われてるんだ。これじゃあ立場が逆じゃんか。
町の方に入ると人の声がだんだん聞こえてきた。
店がたくさん出ておりどれも見たことが無いから目移りする。見たことも無い果物、独特なデザインの服、クオリティーが高い大道芸。どれも俺の元いた世界には無い。
「なあ、カカベルあれなんだ?」
ふとカカベルが居た方を見る。
「あれ? カカベル?」
カカベルが居ない。背伸びをしてカカベルを探すけど見当たらない。それに背の一三〇センチほどしかないカカベルが見当たるはずが無い。
「まいったな。俺城の場所知らないし」
こうなったら先に城に行ってカカベルが迷子になった事にするしかない!
とりあえず城が見えるほうに進んでみようか。
ただし、周りのお店を見て回りながらだ。
ていうか俺魔王の姿なのに皆の注目無いよな。魔王って外でた事無いのかな。
「よう! 魔王の坊ちゃん!」
振り返ると眼帯を付けた強面の人が居た。
まさかこの人俺(正しくは魔王)知り合いなのか? だとしたらまずいぞ。
「おい、ボーとしてどうした」
「え? はい! なにも」
「久しいなぁ。三年ぶりだか。ほら、腹減ってんだろ? おごってやるから来いよ!」
「あ、有り難うございます」
良いんだろうか。おなかは空いているから食べて行くけど。
年季の入った木の椅子に座ると同時にさっきの人が料理を持ってきた。
「食べな」
「有り難うございます」
運ばれた料理は日本食で言う肉じゃがだった。俺は肉じゃがは好きなので有りがたい。
「しかし、坊ちゃんも変わったな。三年前は俺んとこよく着て『おい! おっちゃん飯奢れ!』って食って行ってたのによ。礼儀正しくなりやがって」
魔王ってそんなやんちゃな性格だったったの!? え?じゃあこれか治すか? いまさら直しても怪しまれるだけか。
「今日はお付きのカカベルちゃんと弟のアザエルは居ないのか? いつも一緒だったのによ」
弟いたのかよ魔王。俺しらねーしどうしよう。まあ適当に答えて置くか。
「ああ、今日は二人ともお留守番だ」
「良いのか? お前ひとりの時何回もさらわれてる記録があるのにまあゆっくりしてけよ」
「へ?」
去っていくおっちゃん。
なんかまずくないか?
後ろから強い視線とか感じるし。気のせいだよな?
「見つけたぜサタナエル魔王様」
「うわぁぁぁぁあああああ!」
「うるせぇ!」
腹に来るカカベルのより痛いパンチ。
その衝撃でつい俺は気絶した。