まだ蕾の、一輪の薔薇。
もう僕に、希望なんてないのかもしれない
「なんだまたこんな点数なんだ。部活も辞めたのに。」
「お前は失敗作だ。子育てに失敗したんだ。」
親の口からこの言葉が出た時、もともと薄暗かった世界は真っ暗になった。
親に見放された。
自分の望という名前も嫌になった。
何を頑張ってもうまく行かない。勉強も、部活も、恋愛も。
勉強はもともと得意じゃなかった。でも、親友の希蘭と同じ高校に行くために高校受験は頑張った。合格できたはいいもののレベルの高さについていけない日々が続いている。
部活は希蘭と同じサッカー部に入っていた。サッカーは好きだった。でも、辞めた。勉強を頑張るためだった。
好きな人はいる。でも、この恋は叶わないと思う。
「あーあ、もう飛ぼうかな.....。」
いざ口に出してみると案外簡単そうなそれを実行しようと俺が決心するのにそう時間はかからなかった。このことは前から考えていたし、希蘭への申し訳なさより絶望が強かった。
「ごめん、希蘭。明日、僕、飛んでくるね。」
そう口にして、俺は眠りについた。
翌朝、学校に行くと俺の親友は相変わらず元気そうだった。
校門で会ってから、
「最近読んでるあの漫画がさー」
だの
「マジで今日の数学の小テスト不安だわ〜」
だの話してくる。ちなみに俺は小テストの勉強なんかしてない。今日飛ぶんだし。
希蘭の話に適当に相槌を打っていたら、
「お前今日元気なくね?なんかあった?」
とか訊いてきた。
「なんもないよ。ただ朝からお前のその輝きを浴びてると目が眩みそうになるってだけ。」
「なんだよーそれー。俺はまだハゲてねーよっ。」
「『まだ』ってことはハゲる予定でもあんの?」
「ははははっ。ねーよ、ばーか。俺がハゲたら世界滅んじゃうから。笑」
やっぱり希蘭は笑顔が似合うなーと思う。この笑顔も見納めか....。
そんなことを考えてたらすでに屋上に行くという大事な予定がある僕の放課後に希蘭が更なる予定を追加しにきた。
「今日サッカー部休みなんだけどさ、マック行かね?」
「うーん、今日の小テストの出来が良かったら行こうかな。」
「お、じゃあ帰りに校門で待ってるわ。」
「うん、じゃあまた放課後な。」
「おう、またな!」
おそらくもう二度と拝むことはないであろう笑顔に手を振る。たぶん希蘭は僕が小テストの勉強してないことなんて知らずにあんな条件をスルーしたんだろうな、なんて思ってしまう。
放課後に屋上から飛ぶ予定が、少しだけ面倒になった気がした。
望が、、来ない!!!!
校門で待つ希蘭は少し苛立っていた。いつもあんなに勉強を頑張っている望が小テストの出来が悪くて来ないなんてことないはずだ。望は勉強のためにサッカー部も辞めたんだ。たぶん、委員会かなんかで遅れているんだろう。そう信じて先にマックに行くという内容を望にLINEする。
いつもは楽しいはずのマックへの道は少し、寂しさを感じさせてきた。
着いてから30分が経つ。
望が、、、来ない!!!!!!
希蘭は望に電話をかける。4コールで、望がでる。
「もしもし、お前今何してる?俺マックで待ってるんだけど。」
「僕は今______
校門で僕にLINEする希蘭を物陰から見届けたら、一直線に屋上へ向かう。希蘭の顔は脳裏に焼きついている。最後までイケメンだった。うん。今から人生最後の予定を片付けに行く。少し錆びている屋上の扉は案外簡単に開いた。鍵は前から壊れているので余計な手間がかからなくて助かる。やっぱり希蘭に申し訳ないことをしているのかもしれない。そんな考えが一瞬頭をよぎるが首を振ってすぐに忘れるようにする。未練があるのは良くない。
屋上のフェンスに手をかけてみるといつもより遠くまで見える街並みが僕のことを応援しているようにも見えた。でも、ここにきて足がすくんでしまう。最後の勇気が出ない。街並みはもう夕日で赤く染まっている。
「やっぱり最後に好きだって言ったほうが良かったのかな...。言わなくて正解だったかな...。」
そんなことを言いながら飛べずにいると希蘭から電話がかかってきた。
4コールで、出てあげることにした。
「もしもし、お前今何してる?俺マックで待ってるんだけど。」
「僕は今、______屋上にいるよ。」
「......。」
希蘭が何を察したのかは知らない。でも、そこで電話は終わった。
すこしして、まだ屋上でうだうだしている僕の所へ希蘭が肩で息をしながらきた。
「お前、屋上で何してんだよ。こっち来ないで。そんなに小テストが悪かったんか?」
小テストの出来が悪いのは本当のことなので否定はできないから返答をする。
「少しあってるけど、不正解かな。」
希蘭にはまだ予想があったようで、間髪入れずに訊いてくる。
「じゃあなんだよ。飛ぼうとか、考えてたんか?」
「残念だけど、正解。」
「え、、、、、、」
希蘭の表情が一気に崩れる。綺麗な瞳には涙まで浮かんでいる。夕日に照らされる希蘭の顔は美しかった。
しかし彼の口は動く。
「なんで飛ぼうとなんてしてるんだよ。あんなに頑張ってたじゃんか。勉強も、部活も。成績が良くなくてサッカー部辞めた後も、親に色々言われてきついって言ってた時も、ずっと望は頑張ってた。なのになんで、今までの努力も、俺のことも、全部捨てるようなことしようとするんだよ....!」
「そうだよ、頑張ったよ。でも報われないんだ。何も結果に結びつかない。結果がないと認めてはもらえない。頑張ってるだけじゃダメなんだよ。」
希蘭は黙り込んでしまった。どうせもう飛ぶんだし、僕は想いを告げる。
「しかもね、僕はずっと希蘭のことが好きだったんだよ。恋愛的な意味で。好きだったし、同時に憧れでもあった。希蘭の隣に並べるように勉強も部活も頑張った。でも僕は君にふさわしい人間にはなれない。ただ、ふさわしくなかったとしても、もし、エゴが通るなら付き合いたかったな。ずっと一緒にいたかった。伝えるのが遅くてごめんね。OKしてもらえないかもだけど最後に言いたかったんだ。」
希蘭の瞳がこれまでにないほどで見開かれる。綺麗な肌に涙が伝う。
「そう、だったのか。何も気づいてやれなくてごめん。告白をOKすることはできない。俺は望の親友で、望を恋愛対象として見れない。でも、親友として、親友だからこそ、望と一緒にいたいと思う。望が辛いなら支えたいと思う。もっと一緒にいたい。だから、飛ばないでくれ!!!頼む..................................。」
沈黙がやけに長く感じた。どこかの部活の声がよく聞こえる。そして僕は希蘭のお願いに何も言葉を返すことがないままもう一度フェンスに手をかける。想いは伝えた。失恋した。もう、未練はない。
「ありがとう、大好きな人。
さよなら。」
希蘭はフェンスの上の僕を止めようとする。でも、追いつかない。全身がフェンスの向こう側に行く。街並みはもう、闇夜に覆われ始めている。希蘭の手が僕の靴をかする。掴むことはできない。
希蘭の瞳から、涙の粒が落ちてくる。
先に自由落下を始めた僕には、届かない。
体が、加速する。
地面が、近づく。
鼓膜で、希蘭の声が反響する。
意識が、遠ざかる。
最後に見た、大好きな人の泣き顔は、綺麗だと思った。
あ、、、、、、、、、、、、、、、
ぶつかる_____。
初めて小説書いてみましてた。読みにくいところなどあるかもしれませんが良いと思っていただけたのなら嬉しいです。




