赤ん坊の声は無い
キラキラとした夕日が差し込む、幻想的なカフェ。
高校生のカップルと、ママ友らしき中年女性が今の客。
カフェのカウンターに、エプロンを付けた二人の男性が立っている。
――今日は静かだね。
薄い茶髪の男性がそう言った。
「そうか? いつも通りだろ」
淡い緑の髪をセンター分けにしているもう一人の男性が興味なさげに返す。
――ええ? そう? 僕は静かだと思うけどなぁ。
「今日は珍しくお前がぼーっとした表情をしてると思ったら」
――静かすぎて落ち着かない。
眉を下げた。高校生カップルとママ友たちの方を見る。頬杖をついて、にこりとほほ笑んだ。
――今日は、赤ん坊の声がしない。
うるさいって言ってるわけじゃないけど、こんなにも違うんだね。くすくすと笑ってそう言った。
すると、隣の相棒がポカンと口を開けて黙っていた。
――ん?
そう会話を促すと、彼は「いや……」と混乱した顔で薄ら笑いを浮かべる。
珍しい。彼はいつも仏頂面なのに。
「泣く赤ん坊なんて、何年前の話をしてるんだよ」
子どもを生む時代は終わった。今は工場で生まれるのが普通だろ。
赤ん坊に似たペットは売られてるけど、そのペットは泣かないし。
ぽかん、と僕は口を開けたまま黙った。
「あ、そっかぁ。ごめん、昨日夜遅くまで読んでた時代小説と混同しちゃってたみたい!」
「全く……。疲れてるなら言え。仕事に支障が出るんだよ」
「ごめん~ってば~」




