42 女子会
女子会は街中のカフェで行われることになりました。集まったのは6人。優実、彩香以外はあまり話したことがないクラスメイトです。
「櫻川さん、連絡先交換しようよ」
声をかけてきたのは梅野さん。今までは交流がなかった人です。
「は、はい……」
少し緊張しながらスマホを取り出すと、画面には麻奈ちゃんからのメッセージが届いていました。周平君が帰ってから様子がおかしいとのこと。やっぱり心配です。
「櫻川さん?」
「だ、大丈夫です」
私がスマホを見せたときでした。
周平『椎子、今どこ?』
画面に新しい通知がポンと浮かびました。周平君からのメッセージです。私は慌ててスマホを引っ込めます。
「え、今のって……」
梅野さんが驚いた顔で私を見ました。
「な、なんでもありません」
「でも、呼び捨てだったよね? もしかして彼氏?」
「え!? 櫻川さんの彼氏からメッセ来たの!?」
あっという間に他の女子たちも盛り上がってしまいました。
「こらこら、詮索しない!」
優実が言ってくれます。
「だって気になるじゃん!」
「いいから! 椎子、返信したら?」
「は、はい。そうですね」
私は周平君に返信します。
椎子『今は優実たちと女子会です。街のカフェに居ます』
そう送るとすぐに返信がありました。
周平『迎えに行くよ』
それを見ている私に優実が尋ねます。
「なんだって?」
「迎えに来るそうです」
「そっか。よかったね」
「……はい」
私は温かい気持ちに包まれました。
「え、迎えってことは……今日カラオケにいた男子じゃないんだ?」
梅野さんが聞いてきます。
「はい……カラオケにはいませんでした」
「ふーん、じゃあ他のクラス?」
「いえ……」
一瞬言いかけて、慌てて口をつぐむ。
「内緒、です」
「えー、気になる!」
「確か『周平』って見えたけど……誰かいたっけ」
「!!」
見られてしまっていました。
まずいです。みんなが思い出そうとしています。私は優実の顔を見ました。首を横に振っています。これは諦めるしかないということでしょうか。
「……お願いです。内緒にしてくれますか?」
私は自分から言うことにしました。
「絶対内緒にする!」
「だから教えて~!」
みんなが聞いてきます。仕方ありません……
「私の彼氏は……杉山周平君です」
「えっ!? 杉山君!?」
「優実と噂になってた男子じゃん!」
優実が慌てて説明します。
「だから違うって! あれは椎子のことを杉山君に聞いてただけ」
「そうだったんだ……でも、櫻川さんの彼氏が杉山君かあ。意外!」
「……そんなに驚くことでしょうか?」
「だって……椎子ならもっとイケメンでも……」
「失礼ですね。周平君は世界一かっこいいです!」
私は思わず語気を強めてしまった。
「ご、ごめん……えっと、そんなかっこよかったっけ?」
梅野さんたちは杉山君の顔を思い出せないようです。
「まあ、目立たないからねえ、杉山君は」
優実が言います。
「でも、結構優良株だと思うよ。真面目だし、成績も悪くないし。体育は苦手みたいだけど、いつも彼女のこと優先してくれるし」
「へー、いいじゃん!」
「こ、困ります! 周平君は私の彼氏です!」
私は慌てて言いました。
「取ったりしないってば。私たちが好きな人は他にいるから安心して」
「そ、そうですか」
「うん。でもそんなラブラブな彼氏がいるっていうのはうらやましいかな」
「そ、そうですか……」
「櫻川さん、絶対内緒にするから一つだけお願いしてもいい?」
「え? 何をですか?」
「えっとねえ……」
梅野さんの提案はあまり気乗りするものではなかったのですが、内緒にしてくれるのだから仕方ありません。それに、私も少し彼氏を自慢したい気持ちがあったので……
◇◇◇
家を出た俺は再び路面電車に乗り、街中に向かう。アーケード街の地下にあるカフェが女子会の会場らしい。その前には椎子が居た。
「椎子!」
「周平君、来てくれてありがとうございます」
「いや……カラオケ、行かなくてごめん」
「別にいいですよ。ちょっと寂しかったですけど」
「……俺、椎子がみんなと仲良くしているのが……嬉しかったけど、なんか遠くに行っちゃったみたいで……」
「周平君……」
「だからあの場にいられなかった。ほんとに、ごめん」
「……でも、ここに迎えに来てくれましたから、全部帳消しです」
「ありがとう、椎子。もう椎子のそばを離れるようなことはしないから」
「周平君……そんなこと言って……」
「ん? どうした?」
「みんな見てるのに……」
「みんな!?」
俺は慌てて周りを見渡す。すると、物陰から川口さん、岡崎さん、それにクラスの女子達が出てきた。
「な!? 椎子、話したのか?」
「すみません、スマホにちょうどメッセージが来てしまって、見られてしまいました」
ということは俺のせいでもあるか。
「ほんとに付き合ってるんだ!」
「ラブラブだねえ」
「杉山君、言うねえ」
「……な、なんだよ」
「ごめんなさい、周平君。内緒にしておく代わりに迎えに来るところを見せて欲しいって言われて……」
「そういうことか……まあ、内緒にしてくれるなら」
「杉山君、彼氏してるじゃん」
岡崎さんが俺に言った。
「そりゃ、まあ……」
「でも、カラオケ来なかったのは彼氏失格かな」
川口さんが言う。
「う……あれは、悪かった」
「椎子はクラスの男子からたくさん話しかけられてたよー」
「や、やっぱりそうなんだ」
「でも、椎子は相手にしてなかったから安心して」
「そ、そうか」
突然、椎子が俺の腕をつかんだ。
「もう、いいでしょう。周平君行きましょう」
「「「キャー!」」」
梅田さん達の黄色い声が響く。
「そうだな、じゃあ、また二学期に」
俺と椎子はバスセンターの方に歩き出した。




