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私と初体験してくださいっ! ~世間知らずのクール姫と秘密の関係が始まった~  作者: uruu


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25/45

25 兄

 放課後。

 俺は少し時間をずらしてバスセンターに向かった。

 

 二階のスタバで注文を済ませ、テラス席に出ると、椎子とお兄さんらしき男性が座っていた。


「お! 君が杉山君か!」


 男性は立ち上がると、にこやかに俺の肩を叩いた。


「は、はい。初めまして、杉山周平です」


「俺は櫻川隆史。椎子の兄だ。よろしくな!」


「よろしくお願いします……」


 隆史さんはニヤリと笑いながら言った。


「椎子の話だと、俺が本当に兄かどうか疑ってるらしいな?」


「い、いえ……」


「ほら、これ」


 隆史さんはポケットから免許証を取り出し、俺に見せる。

 そこにはたしかに「櫻川隆史」と書かれていた。


「信じてもらえたかな?」


「……す、すみませんでした!」


「俺はいいんだよ。椎子に言ってくれ」


「椎子、ほんとにごめん……」


「私の方こそすみません。周平君に何も言わず、兄に会った私がいけないんです」


「いや、違う。俺が悪いんだ。……椎子と付き合っていることが、まだ信じきれなくて。どうしても、椎子にはもっとふさわしい人がいるんじゃないかって思ってしまうんだ」


「そんなわけありません!」


 椎子は顔を赤くして、怒ったように言い返した。


「まあまあ、椎子。杉山君の言うことも分からんでもないぞ。兄の俺から見ても椎子は抜群に可愛いからな」


「そんなこと、今まで一度も言われたことないですけど」


「普段は言うわけないだろ。でも本音だ。だから杉山君は『自分なんかが』って思ってしまうんだろ?」


「……はい。俺なんかじゃ、釣り合わないですよね」


「そんなことはないぞ。要は『愛の伝え方』が足りないんだ」


「愛の伝え方……」


「椎子、お前は杉山君が好きなんだろ?」


「はい」


「それをしっかり伝えたか?」


「伝えているつもりですけど……」


「つもりじゃなだめなんだよ。椎子、お前は杉山君のどこが好きなんだ?」


「それは……私の立場になって考えてくれて、頼りになるところです」


「ふむ。じゃあ、杉山君の外見は?」


「が、外見ですか?」


「そうだ。外見は好みか? それとも妥協してるのか?」


「妥協なんてしてません! 私にとって周平君は……か、かっこいいです」


 俺は耳を疑った。


「……かっこいい?」


「はい、かっこいいですよ。恥ずかしいからあまり言ってなかったですけど、告白したのは外見が好みっていうのも当然ありました」


「そ、そうなんだ……」


 まさか俺の外見が好みだったなんて……。

 すると、隆史さんが得意げにうなづいた。


「そうだろう、そうだろう。だって、杉山君、俺と似てるもん」


「はあ? 全然似てません!」


 椎子が珍しく声をあらげる。


「似てるだろ、ほら。椎子、写真撮ってみろ」


 そう言って隆史さんは俺の横に並ぶ。椎子はしぶしぶ俺たちの写真を撮った。


「はい、撮れました……」


「見せてみろ。な? 似てるだろ」


 画面には並んだ二人の姿。

 髪型や雰囲気がどことなく似ている気がしないでもない。


「兄さんとは全然違います! 周平君は周平君です!」


 椎子はむきになって言い返した。

 けど、その声が俺の心を軽くした。


 ――椎子は、ちゃんと俺を選んでくれたんだ。


「はぁ……兄さんはもう帰ってください! 仲直りはできましたのでもういいです!」


「そうか? 杉山君、納得したかな?」


「はい。本当にありがとうございます」


「よし。君は素直でいいな。連絡先、交換しようぜ」


「是非!」


「もう、兄さん!」


 椎子は頬を膨らませたが、俺と隆史さんは笑いながら連絡先を交換した。


「じゃ、二人はごゆっくり!」


「ありがとうございました!」


 隆史さんが手を振り去っていく。

 その背中を見送った後、椎子が「あかんべー」をしてきた。

 その姿は、めちゃくちゃ可愛かったけど。




 お兄さんが帰った後、俺は椎子に改めて頭を下げた。


「椎子、ごめん、椎子のこと、信じられなくて」


「ほんとうですよ……でも、もう大丈夫ですか?」


「うん、もう大丈夫だ」


「なら良かった。……でも気持ちはわかりますから」


「え?」


「もしも周平君が、私の知らないところで知らない女子と会ってたら――私、発狂してしまいそうです」


「そ、そうなのか」


「その後に周平君が言い訳してもすぐに受け入れられるか自分でも怪しいですし。だから、周平君の気持ちは分かりますし……実を言うと少し嬉しいです。そこまで妬いてくれてるなんて」


「いや、妬いてなんて……」


「違いますか?」


「……そうなのかな」


 確かにそうだ。俺はお兄さんに嫉妬していたのだ。


「ふふっ、普段はあまり私に興味なさそうな周平君が、兄と居ただけでそこまで嫉妬に狂うって、ちょっと嬉しくなりました」


「それはまあ……」


「周平君っていつもはクールなのに、実は私のこと、すごく好きなんですね?」


 そう言ってニコニコと椎子は俺を見つめてくる。


「……言うな」


「ふふふ。周平君、この勢いでみんなにカミングアウトしちゃいます?」


「しないから」


「そうですか。残念ですね。でも、今回は私も少し傷つきましたし、お礼はしてもらいますからね」


「もちろんだよ」


「じゃあ、週末デートしましょう。私が行きたいところに行きます。拒否権はありませんよ?」


「わかったよ」


 椎子の行きたい場所――

 どこだろう。きっと、また初めての体験が待っている気がした。



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