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私と初体験してくださいっ! ~世間知らずのクール姫と秘密の関係が始まった~  作者: uruu


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24 噂

 しばらく部屋に一人でいると電話がかかってきた。椎子だ。


『周平君、麻奈ちゃんから聞きました』


 麻奈のやつ、椎子に直接言ったのかよ。


「ごめん。なんか、のぞき見みたいになってしまって」


『いえ、私も周平君に何も言わなかったので。麻奈ちゃんにも言ったのですが、今日は兄の隆史たかしと会ってたんです。大学生で夏休みになったから帰省してきてるんです』


「そ、そうだったんだ……。でも、お兄さんと仲良いんだね」


『別に仲良くないですよ。ただ、私がスタバに行けるようになったと言ったら「本当か確かめたい」って言うんで今日は一緒に行っただけです』


「そ、そうか……」


『周平君のおかげです。私がすらすら注文するので兄はびっくりしてましたよ』


「な、ならよかった……」


『……なんか元気ないですね。もしかして信じてませんか?』


「いや……そういうわけじゃないけど……」


 本当は信じたい。でも心のどこかで疑いが消えていなかった。


『わかりました。じゃあ、明日兄と会ってください』


「え? でも……」


『そうしないと信じてもらえないみたいなので』


「うん。分かった」


『気まずくなりそうなので、明日のお昼は一緒に食べるのをやめておきましょう。実は優実から「一緒に食べよう」って誘われてたんです』


「そうか、分かったよ」


『でも放課後はスタバに来てくださいね。昨日と同じ場所に兄といますから』


「うん……」


 通話を切ると、胸の奥がチクリと痛んだ。

 椎子の言葉を信じるべきだと頭ではわかっているのに、素直に信じられない自分が情けない。

 これは椎子のせいじゃない。全部、俺の問題だ。

 「俺みたいな奴に、椎子が本気で好意を持つはずがない」

 そんな思いが、心の奥から何度も顔を出してくる。


◇◇◇


 翌日の朝。教室では椎子の周りに、また女子たちが集まっている。


「櫻川さん、見たよ! 昨日バスセンターで彼氏といたでしょ!」

「え、ホント!?」


 女子たちの声が弾む。


「違います。あれは兄ですから」


 椎子は落ち着いた声で答えた。


「またまた……ごまかさなくてもいいのに」


「本当です。彼氏は別の人です」


「そうなの? かっこよくてお似合いだと思ったけど。大学生?」


「兄はそうですよ。彼氏は同学年ですからね」


「そうなんだ! 彼氏ってお兄さんよりかっこいい?」


「あたりまえです!」


「きゃー! いいなあ、彼氏自慢!」


 女子たちは一気に盛り上がりだす。

 そこへ川口さんが割り込んできた。


「みんな、詮索しすぎ! 櫻川さんが迷惑してるでしょ」


「「はーい……」」


 川口さんの一声で、女子たちは渋々解散した。


◇◇◇


 昼休み。今日は椎子とお昼を食べない。

 俺は教室に残り、一人で弁当を広げる。

 椎子は川口さんと一緒に教室を出て行った。たぶん、部室か屋上だろう。


 椎子がいない教室では、女子たちが再び噂話を始めていた。


「ほんとにお兄さんだったのかなあ?」


「さあねえ。彼氏がバレたくなくて嘘ついてるのかも」


「でも彼氏は同学年って言ってたよね」


「もしかしたら二股とか?」


「櫻川さんに限って、それはないでしょ」


「分からないよ。清純そうな子に見えてそういうことする子、私の知り合いにもいるし」


 言いたい放題だな、まったく……


「でも櫻川さんの彼氏って誰なんだろうね」


「同学年って言ってたし、同じ高校かな」


「だとしたら学校では全然話してないってことか」


「そうだねー。でも、もし好きな男子が櫻川さんの彼氏だったら嫌じゃない?」


「だよねえ。他の女子の気持ちも考えて欲しいよね」


 そうか、あの女子たちからしたら好きな男子が椎子と付き合ってる可能性もあるわけだもんな。そうなると無駄なヘイトが椎子に向いてしまう。やっぱり俺が秘密にしてもらっているせいで椎子に迷惑をかけている。


「優実は櫻川さんの彼氏のこと知ってるみたいだけど、『心配いらない』って言ってたよ」


「ってことは、あんまり人気ない男子ってこと?」


「そうなんじゃない? だから内緒にしてるんだよ」


「あんな美人なのに『こんな男子と付き合ってるの?』って言われたくないんでしょ」


「でも、それでも好きってすごいよね」


「弱み握られてたりして」


「アハハ、そうじゃないと櫻川さんが誰かと付き合うってありえないかもねえ」


 人気ない男子で悪かったな。こっちが告白された身だぞ、まったく。




 昼休みの終わり、椎子と川口さんが教室に戻ってきた。


 俺が川口さんを見やると、鋭い視線が返ってきた。


 その直後、スマホが震える。川口さんからだ。


優実『椎子から聞いた。なんで椎子の言うこと信じないのよ』


周平『ごめん』


優実『私に謝っても意味ない。今日は絶対にちゃんと謝りなさい』


周平『わかった』


優実『私は椎子の味方だから』


 画面を閉じ、視線を上げると、椎子は何事もなかったように授業の準備をしていた。



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