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私と初体験してくださいっ! ~世間知らずのクール姫と秘密の関係が始まった~  作者: uruu


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20/28

20 side 椎子

 私、櫻川椎子は家の用事があって、今日はすぐ帰らなければいけませんでした。

 本当はもっと周平君と一緒にいたかったのに……仕方ありません。


 特に今日は、天文部の部室に部長が来てしまって……周平君は、私が誘ってもなかなか入ろうとしなかった部に、あっさり「入る」なんて言い出したのです。


 私、少しショックでした。


 もしかして、周平君は部長のようなタイプが好きなんでしょうか。

 眼鏡を掛けていて真面目そうなのに、どこか軽やかで人当たりのいい人です。

 私とは正反対――。


 そんなことを考えていたら、「天文部に入らないで」なんてことまで心の中で思ってしまいました。


 ……でも、そんなのは良くないですよね。

 せっかく入ってくれるって言ってくれたのに、私が子どもみたいに駄々をこねるわけにはいきません。


「部長と仲良くさせなければ大丈夫」


 そう自分に言い聞かせましたが、夜になっても胸のモヤモヤは消えてくれませんでした。


 ――この気持ち、どうにかしないと……


 昼休みも放課後もゆっくり話せなかったし、解消するには……もう、今しかないです。


 私はスマホを握り、思い切って周平君に電話をかけました。



「今日はあまり話せなかったので……周平君と話したくて電話しました」


『そうか、椎子。今日は不安にさせてごめん』


「……何の話ですか?」


 分かっていたけれど、あえて知らないふりをしました。

 私が気にしていることを、悟られたくなかったからです。


『部長だよ』


「あー、部長ですか、大丈夫です。周平君には部長と話しさせませんから」


『そういうところだよ。やっぱり信用されてないなあって思って』


「信用……ですか。まあ、前科もありますし」


 思わず言ってしまいました。


『あれは仕方なくだってば』


「わかってます。ですが、私も不安なんです。周平君には私がわがままを言って付き合ってもらってますから」


『でも、俺だって今は椎子と一緒にいて楽しいから』


 ――よかった。

 周平君も楽しいって、そう思ってくれてるんですね。


「……そうですか。それなら私も嬉しいです」



『椎子……伝えておきたいことがある』


 急に真剣な声。

 胸がドキン、と大きく鳴りました。……まさか……最悪の事態が頭をよぎります。


「え……? な、なんですか? 改まって。やめてくださいね、悲しい話は」


『違うよ。そうじゃない。でもこの機会に伝えておきたいんだ』


「な、なんですか?」


 一体何を伝えたいんでしょう。ちょっと恐くなりながらも周平君の言葉を待ちました。


『椎子……俺、椎子のことが好きだ』


「っ……!!」


 息が止まるかと思いました。


「しゅ、周平君……な、何ですか急に……びっくりしました……」


『いや、よく考えたら、俺、椎子にちゃんと『好き』って言ったことなかったなって思って。だから不安にさせてたのかもって』


「そう……かもしれませんね。私は好きって伝えましたし、告白だってしましたけど……周平君の気持ちをちゃんと聞いたこと、ありませんでした」


 私、少し強引に進めすぎていたのかもしれません。


『だからちゃんと伝えたかった』


「そ、そうですか……ありがとうございます。私も……周平君のこと、好きです」


『ありがとう』


「……なんか、すごく照れますね」


『だな』


「でも……今度は、電話じゃなくて直接言ってください」


『え?』


「明日、お願いしますね」


『明日!?』


「はい。そして……できれば、その……」


 ――できればハグもしてほしい。

 けれど、それは恥ずかしくて言えませんでした。


『何?』


「いえ、なんでもないです。では……おやすみなさい」




 私は電話を切ると、胸に手を当てて大きく息をつきました。


「周平君が私を好きって言ってくれました……」


 嬉しさが体中からあふれてきて、じっとなんてしていられません。


「っ……!!」


 気づけば、私はベッドの上をゴロゴロ転がりながら、足をバタバタさせていました。


 だめです、落ち着きません。

 この気持ち、誰かに話したい……!


 でも、私にはこういうときに話ができる友達がいません。

 ……それを考えると少し悲しくなります。


「……あ」


 私のスマホには1人だけ、女子のクラスメイトの連絡先がありました。

 川口優実――そこまで親しいわけじゃないけど、今の気持ちを自分の中だけに抱えておくのは無理です。


 私は意を決して、彼女に電話をかけました。




『もしもし、椎子?』


「すみません、優実。こんな遅くに」


『どうしたの?』


「実は……ちょっと嬉しいことがありまして。自分の中だけで抱えておくにはあまりに嬉しすぎたので、優実にも聞いてほしくて」


『え、なになに? 聞きたい聞きたい!』


「では言いますね。実は……周平君から『好き』って言ってもらいました!」


 私はきっと、優実も一緒に大騒ぎしてくれると思っていました。

 けれど返ってきたのは冷たい声。


『は? それだけ?』


「そ、それだけって……私には大事件なんです!」


『え、だって2人ってもう付き合ってるんでしょ?』


「そうですよ」


『だったら好きなのは当たり前じゃない?』


「当たり前じゃないです! 私から告白したので私は好きって言ってたんですが……」


『え、まさか杉山君は言ってなかったの!? マジか……』


「はい……」


『うわぁ……椎子を彼女にしておいて好きって言わないとかありえないでしょ。さすがにちょっとなあ』


「いいんです。杉山君はそういう人なんですから」


『まあ、椎子が嬉しいならそれでいいけど』


「はい。嬉しいんですけど……」


『まだ何かあるの?』


「はい。電話じゃなくてちゃんと言ってもらいたくて」


『え? 電話だったの?』


「はい。だから明日直接言ってもらうように約束しました」


『そっか。よかったじゃん。じゃあ何の問題も無いね』


「それが……」


『まだ何かあるの?』


「はい。できればハグしてほしいと思ったのですが……言えませんでした」


『ハグかあ。今までしたことは?』


「ありません」


『そっかあ。だったら、確かにしてもらいたいよねえ』


「はい……」


『だったらさあ……』


 そこから優実が私に作戦を教えてくれました。



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