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私と初体験してくださいっ! ~世間知らずのクール姫と秘密の関係が始まった~  作者: uruu


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2 交際

「私と付き合いたくないですか?」


 櫻川椎子は俺をまっすぐ見つめて言った。……やっぱりこの子、すごい美少女だ。普通なら付き合いたいに決まってる。


「……でも、それは櫻川さんが俺を好きだという前提があってこそだろ」


「私ですか? 好きですよ、杉山君のこと」


 櫻川さんはあっさり言った。いや、この「好き」って恋愛の好きじゃないよな……同じ「ぼっち」として、色々な場所へ一緒に行ける友達としての好感だろう。だけど、恋人になるってことは、友達とはやることが違う。そこまでのことを、櫻川さんは本当に考えているのだろうか?


「あのさ、友達じゃなくて恋人になると、友達じゃ出来ないようなことだってするんだぞ。分かってる?」


「はい、それももちろん承知の上です。男子がそういうことをしたいということはわかってます」


「本当に分かってるの?」


「はい、手をつないだり、腕を組んだり……キスしたり、とかですよね?」


 櫻川さんは恥じらいながら言った。


「まあそうだけど……でも、それ以上もあるんだぞ」


「そ、それ以上ですか!? ……い、一応知識としては知っていますが、高校生でそこまでいくのはまだ早いかと……」


 完全に動揺している。櫻川さんは顔が真っ赤になっていた。


「……杉山君がどうしてもと言うなら……キ、キスぐらいまでなら……でも、できればある程度交際してからのほうが……」


「いやいや! 俺もすぐにキスしたいとか思ってないから!」


「そ、そうですか。でも……覚悟は出来てます」


 いや、絶対よく分かってない感じだよな。櫻川さん、本当に世間知らずのようだ。


「はぁ……」


 思わずため息をつくと、櫻川さんが不安そうに俺を見た。


「ダメ、でしょうか……」


 櫻川椎子は今にも泣きだしそうな顔だ。ここで断ることは出来るが、そうなると櫻川さんは他の男にこの話を持ちかけるかもしれない。それがろくでもないやつだった場合、最悪なことになる。こんな純粋な子がひどい目に遭わされるのは見たくない。仕方ないか……かなり面倒なことになりそうだけど……


「わかったよ、その仕事、俺が引き受ける」


「ほ、ほんとですか! ありがとうございます!」


 櫻川さんの顔がパァッと明るくなった。この破壊力はすごいな。


 しかし、これで俺と櫻川椎子がまさかの恋人同士かよ。でも、実態は友達みたいなもんだ。ほんとうの恋人が櫻川椎子に出来たら、俺はお役御免になるだろう。でも、それまで櫻川椎子と友達としていろいろなところに遊びに行けるなら悪くないだろう。


「櫻川さん、付き合うにあたってルールを決めよう」


「ルール、ですか?」


「うん。まずは一つ目。櫻川さんが別れたくなったらすぐに言ってくれ。その瞬間、この関係は解消だ」


「わかりました。でも、それは杉山君も同じですよ?」


「わかった。そして二つ目。この関係は他の人には知られないようにしよう」


 俺みたいなモブが櫻川椎子と付き合ってるなんて事がバレたらどんな目に遭うか分からない。


「秘密の関係ってことですか?」


「そうだ。だから、教室では話しかけないでくれよ」


「そ。そうですか……」


 櫻川椎子は不満そうに言う。


「そりゃそうだよ。今までは話してなかったのに急に話し出したら変に思われるだろ?」


「そうですね。でも寂しいです……せっかく付き合えたのに……」


「だったら、メッセージでやりとりしよう。ほら」


 俺はスマホを取り出す。櫻川さんもスマホを取り出し、連絡先を交換した。


「私からもルールの提案があります」


 櫻川椎子が言う。


「いいよ。何?」


「二人でいるときは名前で呼び合いましょう」


「なっ!」


「だって恋人同士ですから。それが普通ではないのですか?」


「まあ、そうだろうけど……」


「では、そういうことで。いいですね? 周平君」


 いきなり名前を呼ばれ、俺はそれに動揺してしまった。


「周平君、どうしました?」


「わ、わかったよ……椎子」


「!!」


 櫻川椎子も手を顔にあて、驚いた表情をしている。


「どうかした?」


「いえ……不思議です。名前で呼ばれると途端に恥ずかしくなりました」


「俺もだよ……ほんとに付き合ってるみたいだな」


「はい……周平君、これからよろしくお願いします」


 椎子が握手の手を差し出した。


「よろしく、椎子」


 俺は椎子と握手を交わした。なんか契約成立って感じだな。


「早速ですが、今日、帰りに初体験したいことがあるんです。一緒に行ってくれますか?」


「今日いきなり?」


「はい。ダメですか?」


「いや、いいけど……とりあえず出ようか」


 俺と椎子は屋上を出て、並んで歩き始めた。

 それにしても――


「屋上って普段は鍵が閉まってるんじゃなかった?」


「はい。私は鍵を持ってるんで」


「え? なんで?」


「天文部ですし」


「そうだったの!?」


 人付き合いが無さそうな椎子が部活に入っていたとは驚いた。


「はい。天体観測のために屋上の鍵を借りられるんです。部員は実質私ぐらいしかいないですし」


 なるほど、一人部活か。


「周平君も天文部、入ります?」


「い、いや……天文とか詳しくないし」


「そうですか。でも、部室は自由に使えます。放課後は是非来てください。一緒に帰りましょう」


「そ、そうだな」


 とは言ったけど、一緒に帰って目立たないんだろうか。今もじろじろと周りの生徒から見られてるし。変な噂が立たないといいけど……


 学校を出て俺たちはバスセンターの方に向かう。


「そういえば椎子はどうやって登校してるの? バス? 路面電車?」


「バスです」


「そうなんだ。俺は路面電車だけど、バスセンター経由でも帰れるし…じゃあ、普段はそっちから帰ることにするか」


「嬉しいです」


 椎子が小さく微笑んだ。


「それで、今日初体験したいことって何なの?」


「それは……」


 椎子は少し間を置いてから、真剣な顔で言った。


「マックです」



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