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私と初体験してくださいっ! ~世間知らずのクール姫と秘密の関係が始まった~  作者: uruu


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19 天文部

 翌日の昼休み。

 俺と椎子は、いつものように天文部の部室で過ごしていた。


 コンコン――と、ドアがノックされる音がする。


「はい」


 椎子が返事をすると、扉がゆっくり開いた。


「あ、椎子ちゃん、いたんだ」


 入ってきたのは眼鏡を掛けたボブヘアの女子生徒。制服のリボンの色からすると、どうやら先輩のようだ。


「部長、お久しぶりです」


 椎子が「部長」と呼んだ。ということは、この人が天文部の部長か。


「椎子ちゃん、久しぶり! で……そっちの男の子は?」


 部長の視線が俺に移る。


「えっと……」


 椎子が少し困ったように言葉を詰まらせた。俺は慌てて口を開く。


「初めまして、天文部に入ろうかと思っている1年の杉山周平です」


「おぉ、部員候補か! 嬉しいな。椎子ちゃんがスカウトしてくれたの?」


「は、はい」


「ふーん……」


 そう言いながら部長は俺と椎子を交互にじろじろと見た。


「えっと、なんでしょうか?」


「聞きたいことはあるけど、とりあえずいいや。私は3年の坂本美奈さかもと みな、天文部部長だよ。杉山君、よろしくね」


「よろしくお願いします」


「それで、部長、今日は何か用ですか?」


 椎子が尋ねる。


「うん。そろそろ文化祭のことを考えておかないとって」


「文化祭、ですか?」


「うん。9月に向けて準備を始めないと」


「なるほど……」


「だから、ちょっと部室の様子を見に来たんだ。お、あったあった」


 坂本部長は棚から何やらファイルを取り出した。


「それ、何ですか?」


「去年の文化祭の資料。とりあえずこれ見て思い出すから」


 そう言いながら、俺に紙を差し出す。


「杉山君、これ入部届ね」


「えっ……あ、はい」


「明日の放課後、部室に集合ね」


 坂本部長はファイルを抱えて部室を出て行った。




「……周平君、入部して良かったのですか?」


「入部? 別にいいよ。俺もここをずっと使わせてもらってるし、ちゃんと部員にならなきゃ悪いかなとも思ってたし」


「そうですか……でも、困りましたね。部活動が始まると放課後の時間が減ってしまいますね」


「まあ、そうだけど……でも一緒にいられるだろ?」


「……はい」


「他に部員は?」


「いません。部長だけです」


「そうか。あの先輩なら気楽にやれそうだな」


 親しみやすい感じだったし。


「むぅ……」


 途端に椎子の機嫌が悪くなった。


「え、どうしたの?」


「だって、周平君が、また他の女子に興味持ってるから」


「はあ? そんなわけないだろ。先輩だし、そういう目で見たりしないって」


「先輩と付き合う人もいますよ」


「いやいや、俺には椎子がいるだろ」


「私が一番ですか?」


「当たり前だ」


 俺は椎子を安心させようと手を握った。


「……まあ、いいでしょう。でも、部長と仲良くなったらダメですからね」


「わかってるって」


「ほんとに……?」


「本当だって」


 椎子、意外に嫉妬深いんだよなあ……


 俺がまだ信用されてないだけかもしれないけど。まあ、確かに俺は、椎子が社会勉強するためのパートナーとして付き合い始めたんだしな。


◇◇◇


 この日は椎子も家の用事があるとかで、まっすぐ帰ってしまった。俺も自宅へ戻る。


「ただいま……」


「おかえり。なんかお兄ちゃん、元気ないね」


 妹の麻奈が俺の顔を見て言った。


「そうか?」


「うん。もしかして椎子さんと喧嘩した?」


「そういうわけじゃないけど……俺、椎子に信用されてないのかなって」


「信用?」


「うん。すぐに他の女子を好きになると思われてるみたいで」


「なるほど。嫉妬か。椎子さん可愛いじゃん」


「可愛いけど、もう少し俺を信用してほしいっていうか……」


「ねえお兄ちゃん、椎子さんにちゃんと『好き』って伝えてる?」


「え? 当たり前だろ。それぐらい……」


 ……ん?


 よく考えると、俺は告白された側で、了承しただけだ。俺から「好き」と言ったこと……あったか?


「……ないかも」


「はぁ……」


 麻奈がため息をつく。


「それじゃあ椎子さんが不安になるの、当たり前じゃん。お兄ちゃんがどれだけ椎子さんのことを好きか分かんないんだからさ」


「……確かに」


「ちゃんと伝えた方がいいよ」


 その通りだ。じゃあ、早速……と思ったがいきなりメッセージで「好きだ」と、送るのも変だよな。じゃあ、電話か? だけど、電話で伝えるのも何かハードルが高い。うーん……



◇◇◇



 結局迷ったまま、もう寝る時間になりかけたころ。


 ピコン、とスマホが鳴った。


椎子『今、電話しても良いですか?』


周平『いいよ』


 すぐに椎子から電話がかかってくる。


『今日はあまり話せなかったので、周平君と話したくて電話しました』


「そうか、椎子。今日は不安にさせてごめん」


『……何の話ですか?』


「部長だよ」


『あー、部長ですか、大丈夫です。周平君には部長と話しさせませんから』


「そういうところだよ。やっぱり信用されてないなあって思って」


『信用……ですか。まあ、前科もありますし』


 川口さんの件か。


「あれは仕方なく、だってば」


『わかってます。ですが、私も不安なんです。周平君には私がわがままを言って付き合ってもらってますから』


「でも、俺だって今は椎子と一緒にいて楽しいから」


『……そうですか。それなら私も嬉しいです』


 ……やっぱり、今言うべきだな。


「椎子……伝えておきたいことがある」


『え……? な、なんですか? 改まって。やめてくださいね、悲しい話は』


「違うよ。そうじゃない。でもこの機会に伝えておきたいんだ」


『な、なんですか?』


「椎子……俺、椎子のことが好きだ」


『っ……!!』


 電話の向こうで息を呑む音がした。


『しゅ、周平君……な、何ですか急に……びっくりしました……』


「いや、よく考えたら、俺、椎子にちゃんと『好き』って言ったことなかったなって思って。だから不安にさせてたのかもって」


『そう……かもしれませんね。私は好きって伝えましたし、告白だってしましたけど……周平君の気持ちをちゃんと聞いたこと、ありませんでした』


「だから、ちゃんと伝えたかった」


『そ、そうですか……ありがとうございます。私も……周平君のこと、好きです』


「ありがとう」


『……なんか、すごく照れますね』


「だな」


『でも……今度は、電話じゃなくて直接言ってください』


「え?」


『明日、お願いしますね』


「明日!?」


『はい。そして……できれば、その……』


「何?」


『いえ、なんでもないです。では……おやすみなさい』


「えっ、ちょ、待っ――」


 ブツッ。

 突然電話が切れた。


 ……何だったんだ、今の?

 めちゃくちゃ気になる。



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