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私と初体験してくださいっ! ~世間知らずのクール姫と秘密の関係が始まった~  作者: uruu


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14/16

14 目撃

 月曜日の朝。ホームルームが始まる前の教室で席についているとなにやら女子の声が聞こえてきた。


「優実、見たぞー」


 川口さんに話しかけているのは、同じクラスのあまり知らない女子だ。


「何を?」


「土曜日、杉山君とデートしてたでしょ」


「はあ?」


 俺は驚いてそちらを見る。


「してないから!」


「だって、二人で駅のスタバにいたよね? いい雰囲気だったよ~」


「ち、違うってば!」


「またまた~。で、付き合ってるの?」


「そんなわけないでしょ!」


(やばい……見られてたのか)


 あそこは外から丸見えの店だった。完全に油断してた。

 慌てて椎子を見やると、彼女は一瞬あっけにとられた表情を見せた後、ギロリと俺をにらんできた。


(終わった……)


 俺はスマホを取り出し、震える指でメッセージを打ち込む。


周平『誤解だから!』


椎子『川口さんとスタバに行ったのですか?』


 これは……正直に言うしか無いか。


周平『うん。でも椎子のことを聞かれただけだよ』


椎子『見損ないました』


 やばい。俺は慌てて椎子を見ようとした。だが、俺の肩が突然誰かに捕まれた。


「おい、杉山。川口さんとデートしたって本当か?」


 振り返ると、川口さんとよく話している男子たちだ。


「いや、してないって」


「でも一緒にスタバに行ったんだろ?」


「たまたま駅で会っただけだ」


「それでスタバまで行くか? 怪しいなこいつ」


 俺が抵抗する間もなく、ヘッドロックを決められる。


「イテテ、やめろって」


「白状しろ!」


 結局、椎子に言い訳できないまま、ホームルームが始まってしまった。


◇◇◇


 休み時間も同じ調子で何もできず、昼休みになった。俺はなんとか教室を脱出し、天文部の部室に来ていた。ノックをするが返事が無い。


「椎子?」


「……どうぞ」


 今まで聞いたことがない低い声だ。おそるおそるドアを開けると、椎子がムスッとした顔で俺をにらんでいた。俺はそそくさと部室に入り、椎子の前に座る。


「椎子、誤解だって」


「誤解はしてません」


「じゃあ、なんでそんなに怒ってるんだよ」


「だって……周平君が私を裏切ったからです」


「裏切ったって……」


 これは相当怒ってるな。付き合いだしてから初めての喧嘩。いや、最初で最後になりかねない。俺が冷や汗を流し始めたときスマホが振動した。川口さんからだ。


優実『迷惑かけてごめん。櫻川さんに説明したい。今、どこにいる?』


「椎子、川口さんが説明したいって。ここに呼んでもいいか?」


「はあ?」


 椎子が俺をにらむ。やっぱり、ここはまずいか。


「じゃあ、屋上に行こう」


「……わかりました」


 俺は川口さんに屋上に来るように連絡し、椎子と向かった。


◇◇◇


「櫻川さん、ごめんなさい!」


 川口さんが屋上で頭を下げた。


「別に謝られる筋合いはありません」


 椎子が冷たく言う。


「でも……怒ってるよね?」


「川口さんに怒ってるわけじゃありませんから。怒ってるのは周平君にです」


「杉山君は私が話そうって誘っただけだから」


「それでもです」


 そう言って椎子は俺を再びにらむ。


「ごめん……彼女がいるのに他の女子とカフェに行くべきじゃなかった」


 俺は素直に謝った。


「カフェならいいんです」


「え?」


「なんで……なんでスタバに行っちゃうんですか!」


「は?」


「せっかく二人で初めてのスタバに行くのを楽しみにしてたのに……その楽しみが無くなってしまいました!」


「そっち!?」


 つまり椎子は、俺が女子とカフェに行ったことよりも、スタバを“初体験”してしまったことに怒っているのか。


「そ、それはごめん……。スタバがすぐ近くにあったから」


「でも他のカフェに行くことも出来たはずです!」


「そ、そうだな……でも、スタバは注文が難しいからさ。俺も予習できたし」


「それです! 周平君と一緒に初めて行って、同じ立場で一緒に覚えたかったのに……もうできません。うぅ……」


 椎子は目に涙を浮かべていた。そうか、同じ初心者の二人でいることが、椎子にとって大事だったんだ。


「ご、ごめん……俺がバカだった」


「そうです。周平君はバカです! 私のことを知ってるのにどうして……」


「ごめん!!」


 思わず俺は土下座していた。


「え? スタバに行っただけでそこまでする?」


 川口さんが目を丸くする。


「今後は絶対気をつける! 椎子、許してくれ!」


 俺は額を地面に付けて謝った。


「……仕方ありませんね……今回だけですよ」


「ほんとに?」


「はい、私の気持ちを分かってくれたみたいなので、もういいです。周平君、顔を上げてください」


「ありがとう、椎子!」


 俺はホッとして立ち上がった。


「でも、今日の帰りはスタバですからね」


「わかったよ」


 あきれ顔の川口さんを横目に、俺たちは部室へ戻った。

 なにしろまだ昼飯を食べていないのだ。


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