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私と初体験してくださいっ! ~世間知らずのクール姫と秘密の関係が始まった~  作者: uruu


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12/15

12 ショッピング

「この後はどうする?」


 フードコートを出た俺は椎子に尋ねた。


「せっかく来たので他の階も見てみたいです」


「そうか。じゃあ、下の階に行こうか」


 上の階は映画館とレストランだけなので、俺たちはエスカレーターで下へ向かった。

 そこはファストファッションの店が並んでいるフロアだ。



「お洋服見るの楽しいです」


「そうか」


 やっぱり椎子もこういうのが好きなんだな。


「椎子、何か試着してみる?」


「え? 私がですか?」


「もちろん。着てみたい服があるんじゃない?」


「む、無理です! 試着なんて……」


「そうか……」


「はい。だから、周平君が着てください」


「はい?」


「私が選んであげますね」


 そう言うと、椎子は足早に男性用シャツのコーナーへ向かった。

 俺は別に服なんていらないんだけどな……




「これ、周平君に似合いそうですね。あ、これもいいかも!」


 椎子は楽しそうにシャツを何枚も手に取り、俺の方へ振り返る。


「じゃあ、これを着てみてください。試着はどこでしょうか?」


 椎子は水色のシャツを手に取り俺に聞く。


「い、いや……」


「どうしました?」


 椎子はすごく俺に着せたがっているし仕方ないか。



 試着室は少し奥まった場所にあった。

 中に入り、着替えてみる。


「……どうかな」


 恐る恐るカーテンを開けると、椎子はぱっと目を見開き、すぐに笑顔になった。


「やっぱりすごく似合います!」


「そ、そうか」


「はい! このシャツ、私がプレゼントしますね」


「え? それは悪いよ」


「大丈夫です。彼女ですし」


「でも……」


「気にしないでください。私、周平君にいろいろ迷惑かけてると思いますし、そのお礼です」


 迷惑か。確かに、椎子の頼みごとに付き合うことが多かったけど――


「迷惑なんて思ってないよ。俺も楽しんでるし」


「そ、そうですか。でも、ここは私にプレゼントさせてください。お願いします」


 椎子の強い言葉に、俺は反論できなくなった。まあ、俺もお返しをすればいいだろう。


「わかったよ。ありがとう」


「はい!」


 椎子は嬉しそうに笑った。




 俺たちはレジに向かう。


「あ、お金は私が払いますけど、レジには付いてきてくださいね」


「もちろん行くよ」


 椎子はまだレジには慣れていないようだ。マックや雑貨店で店員相手にお金は払ったのにな。そう思ったのだが、この店は少し違った。


「セルフレジですね……」


「うん。でも、店員と話さなくていいからこっちのほうが楽じゃない?」


「そうですね」


 椎子は人見知りだし、セルフレジの方が気楽だと思う。




「とりあえず商品を置けばいいようです」


 椎子がシャツを置くとすぐに画面に値段が表示された。


「すごい……!」


 ボタンを押すとショッピングバッグ購入の選択肢が出た。


「10円なら買いましょう。支払いは現金です」


 椎子は財布からお札を取り出し、慎重に機械に入れる。

 お釣りとレシートが出てきた。


「これでいいんですかね」


「バッチリ」


「よかった……お買い物できました!」


 椎子は小さくガッツポーズをした。


◇◇◇


 その後、俺はトイレに行って、帰ってくると椎子が誰かに話しかけられていた。


 あれは……同じクラスの川口優実じゃないか!

 いつも椎子に話しかけている女子だが、こんなところで会うなんて。


(……まずい。今出ていったら、俺と椎子の関係がバレる)


 仕方なく、少し離れた場所から様子をうかがうことにした。


「櫻川さんもお買い物?」


「はい、そうです」


 川口さんの問いかけに椎子は少し緊張気味に答えている。


「あ、ユニクロで何か買ったんだね。だったら、一緒に見ない? 私もお洋服見に来てて」


「でも……」


「もしかして誰かと来てるの?」


「それは……」


 椎子は何も言えず、困っているようだ。仕方ない。覚悟を決めるか。


 俺は意を決して二人の前に出た。



「椎子、お待たせ」


「え!?」


 川口さんは驚いた顔で俺を見た。


「杉山君……だよね?」


「うん。こんにちは、川口さん」


「こ、こんにちは……今日は櫻川さんと一緒に?」


「そうなんだ」


「椎子って呼んでたし……もしかして二人、付き合ってる?」


「内緒にしておいてくれるかな」


 俺はそう言って交際を認めた。椎子は恥ずかしそうにうつむいた。


「えっと……それはいいけど、マジで付き合ってるの?」


「うん。おかしいかな?」


 まあ、釣り合いは取れてないだろうけど。


「おかしくはないけど……櫻川さん、ほんと?」


「本当です」


「そ、そうなんだ……びっくりした。人嫌いなはずの櫻川さんが……杉山君と……教室では全然話してなかったよね? どういうきっかけ?」


「まあ、いろいろあって。今日は勘弁してくれないか?」


「……そっか。わかった。内緒にしておくよ。でも、うちの学校の生徒、何人か見かけたから、あんまり目立たないほうがいいよ」


「ありがとう。気を付ける」


「じゃあ、櫻川さん。また学校でね」


「はい。また……」




 川口さんが去って、椎子は俺に尋ねた。


「良かったんですか? 交際を明かしてしまって……」


「別にいいよ。みんなにいろいろ言われるのは困るけど、川口さんは内緒にしてくれるみたいだし」


「そうですか。でも、もしかしたら今日うちの学校の生徒に見られてしまってるかも知れませんね」


「大丈夫だよ。椎子もいつもと雰囲気が違うし、川口さんには気がつかれたけど、他の人にはわからないと思う」


「そんなに違います?」


 椎子は不思議そうに俺を見た。その表情とワンピースの効果でさらにいつもより幼く見える。


「うん。いつもは凜とした感じだけど……今日はすごく可愛い」


「そ、そうですか……」


 椎子の顔がまた赤く染まった。


「でも、気づかれるといけないし、今日はもう帰ろうか」


「そうですね」




 駅ビルの外に出るとバス停が見えてきた。


「椎子は今日もバス?」


「はい、そうです」


「だったら、バスが来るまで一緒にいようか」


「いいんですか?」


「もちろん、彼氏だし」


「そうですね。ありがとうございます」


 俺たちは椎子の乗るバス亭の前でバスを待った。




「今日はありがとうございました」


「こちらこそ。シャツまで買ってもらったし」


「いつものお礼ですから気にしないでください。周平君には感謝しています」


「俺の方こそだよ。今度は俺がお返しで椎子に何かプレゼントするから」


「そんな……」


「だから、今度またデートに行こう」


「はい……是非行きましょう」


 そこにバスが来た。椎子は俺におじぎをしてバスに乗る。バスでは窓際に座り、俺に手を振ってきた。俺は手を振り返した。


 バスが出て行き、俺が路面電車の停留所に歩き始めたときだった。


「杉山君」


 俺を呼び止めたのは川口優実だった。



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