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3 新しい旅
教会で働き、わずかな金を得て、再び旅に出る。
今度は、父の言葉だけではない目的があった。
――絵を描きたい。
旅をしながら、町で、森で、道端で、絵を描いた。
絵は、歓びも悲しみも教えてくれた。
金が尽きると、教会で働き、また歩いた。
二十歳になり、三十五歳になるまで、サイガは旅を続けた。
旅をし、絵を描きながら、彼は考え続けた。
父の言葉の意味。
母の優しさ。友のこと。姉のこと。
そして、一つの答えに辿り着く。
答えとは、与えられるものではない。
悩み、越え、積み重ねたものが、自分を形作っていく。
絵は、誰かに認められるためではない。
描くこと自体が、心を満たしてくれる。
旅と人生は、同じ道なのだと知った。
父の声がよみがえる。
「旅を続けなさい。答えは、そこにある……」
サイガは、心の中で答えた。
「とうさん、答えなんて、ないのかもしれない。 探し続けることが、答えなのかもしれないね」
豊かさは誰かに与えられるものではなく。
自分で見つけ感じるものかもしれない。
これからも旅を続けよう。
何かまた感じられる豊かさがあるかもしれない。
ねえさんは元気だろうか。
友は元気だろうか。
旅を続けたサイガは三十五歳で、深い森の中、木々に囲まれて息を引き取った。
五十年後、一枚の絵が評価される。
題名はこう記されていた。
「旅人サイガの孤独と歓びの日々」




