#12 第二皇子スフィーダ
「こちらこそ、いいものを見せてもらったよ。・・・それよりも、本題を話したい」
そう言って、スフィーダは声を潜めて言った。
「僕の、駒にならないかい?」
「・・・なるほど」
誰かの駒になるのは悪くない。
駒となることで警戒を逸らし、協力も得ることができる。
「一つ、条件を聞いてもらえるならば」
「・・・聞いてあげるよ」
「私は、あの大将軍と戦った。今後、困難に見舞われることがあるでしょう・・・一度だけ、何であっても手を貸すと約束してくだされば」
「・・・それならいいよ。僕も、大将軍と戦った少年を駒にできて、本当に嬉しいよ」
スフィーダはそう言って笑みを零す。
「さて、契約魔法を結ぶよ」
スフィーダが詠唱を唱える。
人の目はあるが、恐らく無詠唱で防音魔法や幻影魔法をかけているのだろう。
「〝我らが血が混ざりても、その契りを果たさん〟」
強力な契約魔法。
恐らく、破った時点で死に至るほどのものだ。
だが、もちろんただの駒になってやるつもりはない。
契約魔法は解除が難しい。
耐性や解除の魔法、魔道具が存在しないのだ。
しかし、契約魔法には欠点が存在する。
それは、術者による魔力供給がない限り、機能しないという点だ。
つまり、スフィーダの魔力が尽きている間は、この契約を無視できる。
なら方法は簡単。
契約を無視したい時にだけ、遠隔の儀式魔法でスフィーダの魔力を消滅させればいい。
スフィーダは多くの魔法が使えるようだが、魔力量はそこまで多くない。
もちろん儀式魔法など今は無理だが、俺の切れるカードが増えればできるようになる。
魔法使いの一団を支配下に置いたりな。
今後の見通しを立てつつ、俺は帝都の社交界を終えた。
◆◆◆
「ふむ・・・大将軍相手に戦えた、か」
「はい。恐らくあれは、身体強化魔法などではありません」
報告をした聖騎士の言葉に、教王は舌打ちをした。
「だが、あれほどの剣士と繋がりを持っておくのは良いだろう。聖騎士団に勧誘するのもいい」
「あの魔法の一族の者と、ですか?」
「そんなものは昔の話だ。」
そう言って、教王は通信魔法を使う。
『父上、何か御用でしょうか?』
ストゥルがそう話しかけ、教王が答えた。
「大将軍との戦いを見ただろう・・・あれは本物だ。これからは、ただの友人として接してくれ」
『そうですか』
何の感情もない声で、ストゥルがそう言った。
通信魔法を切り、教王が言う。
「不気味な奴だ・・・まるで感情がないようだ」
その言葉は、不思議と教会中に反響した。