#11 注目
大将軍相手に素手で戦い、一撃を入れた。
それにより、多くの者は注目した。
流石に今のを見て、疑う者はいないだろう。
しかし、ここからは近付く者の思惑を見抜いていかなければならない。
まず来たのは、貴族の令嬢たちだった。
「私は、ヴォッレイ家のシェルティです。どうか、見知り置きください。」
あらかさまに接近しようとする者は、礼儀にだけ気を付けて追い返す。
何人もの令嬢たちが来たが、もちろん用はない。
強いて言えば婚約により立ち回りが上手くできるかもしれないが、まだ早い。
そもそも、ここに来ているのは伯爵以下で、婚約したとしても縛られるだけだ。
羨ましそうに俺とマジアを見るヴィオレを横目に、俺はそのまま話を続けた。
そんな中、一人の少年が訪れた。
まだ12歳ほどに見えるが、豪華な服を身に付けている。
「今日、この永遠祭に来てくれたことに感謝しよう。余は、教王子息のストゥルメント。ストゥルと呼んでくれたまえ」
教王子息。
恐らく、次の教王になるであろう存在だ。
教会は、帝国司法を担う勢力。
それを敵に回せば、適当に冤罪をかけられ容易に断罪される。
逆に、味方につければ邪魔な者に冤罪をかけて断罪できる。
重要なカードだ。
だが、ここで接触してきたことに何かの意図を感じる。
普通、教王子息がわざわざ俺と縁を作る必要はない。
裏にいるのは、恐らく父である教王。
大司教が教王子息に命令を出せるはずがないからな。
聖騎士団への勧誘を狙っているのか、もしくは証拠を揃えて断罪を試みているか。
その気になれば証拠などいらないはずだが、もちろんあった方が民衆への説得力は増す。
当然、ヒナが背後にいる証拠など俺が出すことはないので、接触しても問題ないか。
「わざわざここまで来てくださりありがとうございます、ストゥル様。私は、ヴォル・タル・パ・ラカーザと申します」
「君には、いいものを見せてもらったからな。それと、君は公爵子息だ。敬語はいらない。」
「じゃあ、ストゥル。今日は、どのような用で来たんだ?」
その言葉に、笑顔のままストゥルは言った。
「君がまさか大将軍と戦えるとは、驚いたのだよ。どうだ、友人にならないか?」
こう来るということは、聖騎士団への勧誘目的ではないな。
なら、断罪か詮索が目的か。
「もちろんだ。まさか教王子息と友人になれるとは、俺も運が良い」
そう言って、握手をする。
腹の探り合いは終わりだ。
後は、ストゥルをどのように利用するか、だな。
◆◆◆
それからも、コネを作りたい貴族子息・令嬢との社交界は続いた。
途中、ダンスを眺めながら食事をする。
そんな中、ある者がここを訪れた。
「ヴォル、少しいいかい?」
そう言って振り向くと、そこにいたのは。
「・・・スフィーダ殿下。ここまで来てくださり、感激いたします」
第二皇子スフィーダ。
この帝国を継ぐかもしれない少年だ。