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魔術基礎論  作者: しばらくハスキー
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一限 人類史 始原歴1年〜魔聖歴

魔史 ― 原始歴1年 〜 魔聖歴


原始歴げんしれき


 魔力の分解と再形成によって世界が誕生したとされ、その誕生の瞬間を基準として制定された暦が「原始歴」である。原始歴1年を、世界の誕生した年と定め、この時点から時間の計測が開始されたとされる。


 この原始歴は、魔聖歴204年において初めて提唱されたものであり、それ以前にはこの時代に対する正式な名称は存在しなかった。原始歴の制定が可能となった背景には、魔術理論の発展とともに、かつて知り得なかった世界誕生の時期を推定できるだけの知識が確立されたことが挙げられる。これにより、未だ名を持たなかった時代に新たな枠組みが与えられ、世界の歴史がより明確に整理されることとなった。


 ただし、原始歴に関する記録はあくまで後世の研究に基づく推定であり、世界誕生の正確な瞬間を特定できたわけではない。したがって、原始歴1年をもって絶対的な起点とする見解には、今なお異論が存在している。しかし、魔術学の発展に伴い、この暦が歴史学上の共通認識として受け入れられていることもまた事実である。


最古の魔法陣


 エスニアは、かつて栄華を誇った都市であったが、現在では「魔女の墓場」として知られる呪われた地である。この地において、現存する中で最古の魔法陣が発見された。この魔法陣は「火の原子魔法」に分類され、その成立は原始歴300年代にまで遡ると考えられている。


 この魔法陣の製作者とされるのが、「魔極の十席」の第一席に君臨した原初のアストノストである。彼女は、魔術の基盤となる魔術言語を確立した最古の魔術師として知られ、その名は数多の記録や伝承に刻まれている。


 なお、この魔法陣が発見されたエスニアは、現在では魔術の研究者や探索者による調査が進められているものの、周囲には高濃度の空間魔力が漂い、内部へ踏み入ることは極めて困難である。そのため、この魔法陣の研究は今なお完全には解明されておらず、多くの謎が残されている。今後の調査により、さらなる発見がもたらされることが期待される。


原初のアストノスト


 原初のアストノストは、その存在自体が謎に包まれた伝説的な魔術師である。彼がどこで生誕したのかはおろか、実在していたのかどうかすら明確にはなっていない。しかし、「魔極の十席」の第一席にその名が刻まれていることから、一部の研究者の間では現在もなお生存している可能性があると考えられている。


 アストノストの最大の功績として知られるのは、魔術言語の創造である。この言語は、彼自身によって編み出されたものであり、極めて高度かつ複雑であるため、彼以外に理解できる者は存在しない。そのため、現代において新たな魔術を生み出すことは極めて困難となっており、魔術言語の解読が成されない限り、新しい魔術が創造されることはないとされる。


 現在、世界中で用いられている魔術はすべて、「アストノストの書」と呼ばれる彼の著作に記されたものに基づいている。この書には、膨大な魔術体系が記されているものの、その全貌は未だ解明されていない。研究者たちは、アストノストの足跡を追い、彼が遺した魔術言語を解析しようと試みているが、その道は未だ険しく、解読の糸口すらつかめていないのが現状である。


年代,出来事

原始歴1年


世界が誕生。魔力が分解・再形成されることで大地と生命が生まれる。


原始歴300年代


エスニアにて最古の魔法陣が作られる。製作者は「原初のアストノスト」とされる。


原始歴600年代


魔術の基礎が体系化される。アストノストが「魔術言語」を確立し、「アストノストの書」を編纂する。


原始歴900年代


魔術の研究が進み、多くの魔術師が台頭。強力な魔術が次々と開発される。


原始歴1200年代


魔女狩りが開始される。エクソシスト(聖職者)たちが、魔術の元素変換を「異端」とし、魔術を神聖力の行使に限定するべきだと主張。これにより多くの魔術師が弾圧・処刑され、「アストノストの書」の大半が失われる。


原始歴1600年代


魔術を信奉する勢力が再興し、聖職者との対立が激化。神聖力と魔術がそれぞれ独自の発展を遂げる。


原始歴2000年代


魔人戦争が勃発。人族と魔族の全面戦争が始まる。


原始歴2040年代


魔人戦争の最終局面にて、アストノストが「大魔法」を行使。エスニアがまるごと消失し、その跡地は高濃度の空間魔力を持つ魔域と化す。これにより強力な魔物が増加し、戦争が終結。


魔聖歴1年


人族と魔族の和平が成立。魔術の研究が再び活発化し、新たな魔術体系が構築される。これを機に、歴史の区分が「魔聖歴」となる。


魔女狩り(原始歴1200年代~)


1. 魔女狩りの発端


原始歴1200年代、人々の間で魔術の存在が広く知られるようになると、魔術の力をどのように扱うべきかを巡って論争が巻き起こった。特に、魔術を火や水などの「元素」に変換する行為が問題視されるようになる。これを異端視したのが「エクソシスト」と呼ばれる聖職者たちであった。


エクソシストたちは、魔術を「神聖なる力」として扱うべきだと主張し、魔力は身体強化や浄化などの用途のみに用いるのが正しいとする思想を広めた。一方で、古来より伝わる魔術師たちは、この考えに反発。こうして、聖職者と魔術師の間で激しい対立が生まれることとなった。


2. 魔術師への弾圧と「アストノストの書」の消失


エクソシストたちは、魔術師を「神の意志に背く者」と断じ、各地で魔術師の摘発・処刑を開始。魔術を扱う者は異端者として扱われ、彼らは次々と捕らえられ、火炙りや処刑台に送られた。


この弾圧の影響で、多くの魔術師が逃亡し、ある者は密かに魔術の継承を試みたが、魔術を記した書物の多くが焼却された。その中でも最も大きな損失となったのが、「アストノストの書」の消失である。これは、魔術の原理や術式を記した最古の魔術書であり、魔術学の根幹をなすものであった。


「アストノストの書」は複数の巻に分かれていたが、魔女狩りによってその大半が失われ、現存するのはごく一部に過ぎない。これにより、新しい魔術の開発は著しく困難になり、魔術の発展は大きく停滞することとなった。


3. 魔女狩りの終焉とその影響


魔女狩りは数世紀にわたって続けられたが、次第に聖職者の力が衰え、魔術を擁護する勢力が台頭したことで、弾圧は徐々に弱まっていった。やがて原始歴1600年代になると、魔術の正当性が再評価され、元素魔術も徐々に復興を遂げることになる。


しかし、魔女狩りによって失われた魔術の知識は多く、特に**「アストノストの書」の消失**は後世の魔術研究に深刻な影響を与えた。現在使われている魔術のほとんどは、現存するわずかな記録から復元されたものに過ぎず、本来の魔術の全容は今なお謎に包まれている。


また、魔女狩りを生き延びた魔術師たちの間では、失われた魔術の復活を目指す動きもあり、秘匿された禁書や口伝による魔術の継承が続けられたとされる。この隠された魔術は「失われし魔術」とも呼ばれ、一部の魔術師の間で研究が進められているという。


人魔戦争(原始歴1800年代~)


1. 人魔戦争の勃発


原始歴1800年代、長らく対立関係にあった人族と魔族の間で大規模な戦争が勃発した。人族は国家と宗教の統制のもと、魔術を活用する勢力と神聖力を信奉する勢力に分かれながらも、共通の敵である魔族と戦った。一方、魔族は強大な魔力を持つ個体が多く、特に上位魔族と呼ばれる存在は一騎当千の力を誇った。


戦争は数十年にわたり続き、各地で激戦が繰り広げられた。魔族側は生まれつき魔術を操ることができる個体が多く、個の戦闘力では人族を圧倒していた。しかし、人族は戦略や軍事技術の発展により戦線を維持し、両者の戦力は拮抗していった。


2. 「魔極の十席」参戦


戦争が長引く中、人族は「魔極の十席」の力を借りることを決定する。魔極の十席とは、最も強大な魔術師たちによって構成される最高位の魔術師評議会であり、その中でも第一席に君臨していたのが原初のアストノストであった。


アストノストは、この戦争が長引けば世界そのものが破滅の危機に瀕すると判断し、戦争を終結させるために究極の魔術を行使することを決意する。その魔術こそが、後に**「滅びの大魔法」**と呼ばれる、人魔戦争を終結させた禁断の魔法であった。


3. 「滅びの大魔法」の発動とエスニアの消滅


原始歴1888年、戦局が泥沼化する中、アストノストは人族の拠点であった都市エスニアにおいて「滅びの大魔法」を発動した。この魔法は、空間そのものに干渉し、あらゆる物質を「魔力」へと変換する術式であり、エスニアの大地そのものを消失させるほどの破壊力を持っていた。


発動とともに、エスニアの広大な土地は一瞬にして崩壊し、その跡地には何も残らなかった。都市だけでなく、そこにいた人々、戦っていた兵士たち、そして魔族の軍勢もすべてが消滅した。さらに、魔法の余波によって周囲の空間魔力濃度が急激に上昇し、結果としてこの地には強力な魔物が生息する危険地帯が生まれることとなった。


4. 人魔戦争の終焉と「魔聖歴」の始まり


「滅びの大魔法」が放たれた後、魔族はこの圧倒的な力を目の当たりにし、戦意を喪失した。一方、人族もまた、この魔法がもたらした甚大な被害に恐怖を覚え、戦争の継続を断念。こうして、約80年に及んだ人魔戦争は終結し、新たな歴史の節目を迎えることとなった。


この戦争の終結を機に、人族と魔族の関係は大きく変化する。人族は和平と安定を求め、新たな時代の幕開けとして「魔聖歴」を制定。魔族もまた、争いを避けるために地下世界や未開の地へと撤退し、人族との直接的な衝突は激減した。


しかし、「滅びの大魔法」によって生まれたエスニアの魔力濃縮地帯は、後の時代においても危険地帯として認識され続け、強力な魔物が集う「魔女の墓場」として恐れられることとなった。さらに、アストノスト自身もこの魔法の発動後に姿を消し、その行方は知れないままとなっている。


こうして、人魔戦争は終焉を迎えたものの、アストノストの魔法がもたらした影響は、後世にまで大きな爪痕を残すこととなったのである。


魔極の十席(魔聖歴387年時点)


魔極の十席は、世界で最も強大な魔術師たちによって構成される存在であり、その席は自動的に更新され続ける。しかし、その仕組みを完全に把握している者はおらず、誰がこの更新を管理しているのかも不明である。十席の誰かが死亡すると、順位が繰り上がり、新たな魔術師の名が十席に刻まれる。


席次,名称


一席,原初の魔女アストノスト

二席,亡人ガジュール

三席,冥王アルベド

四席,全能のリーズ

五席,軍神マルク

六席,魔人ハルハダンデ

七席,魔人リリスダンデ

八席,獣神ガルーロ

九席,虚影のネブラ

十席,神録のエリアノス


一限目終わり___

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