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初級ダンジョンRTA走者 世界最速を達成したので解説動画を公開したら参考にならなすぎで大バズりしてしまう【書籍化決定】  作者: ねこ鍋


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第94話 神の人間界侵攻

そこは神の住まう世界。

人間が上級ダンジョンと呼ぶ、世界の根幹に関わる存在が住む場所だった。

そこで、全知全能にしてこの宇宙の最高神であるゼウスが、怒りを露わにしていた。


たかが人間が、世界の創造神たる我を差し置いて好き勝手暴れおって。

許さない。絶対にあの人間だけは許さない。この手で殺さなければならない。

八つ裂きにして、存在を抹消して、どちらが上なのかをわからせてやらねばならない。


我等は神域の存在だ。下等な存在に負けるなどあってはならない。

それは例えるなら、人間が猿に知恵比べで負けたようなもの。

全知全能の存在として、人間如きに負けるなど、我のプライドをズタズタに傷つけるには十分すぎる。

しかも一度ではない。何度も何度も負けているのだ! どうして許すことができようか!! この無礼は血祭りにして贖う他にない!!


……だが、奴の実力は認めないといけない。

神である我は被造物である人間に負けた。

蟻のひと噛みが象を殺したのだ。

絶対に認められないが、それでも認めなければならない。


奴は強い。

神を殺す力を持っている。


本来ならば、人間が神に対抗するなどあり得ない事だ。

それは人間という種の枠を超えた特異個体というだけでは説明がつかない。

何かしらの存在が力を与えていると見るべきだろう。

どうしてそんなことが起きたのか不明だが、こちらも全力を出すしかない。


人間相手に本気を出すなど、これまでは神であるプライドが許さなかった。

猿との知恵比べに電卓を持ち込む奴がいるだろうか?

機械の力に頼らなければ猿にも勝てないなど、恥ずかしくて認められるわけがないだろう!


しかしそのプライドは捨てる。

これ以上負けることの方が耐えられない。

やつは蟻のような虫ケラではない。我等と同じ神域の存在だ。

だからこそ一切のプライドを捨て、200%の力で確実に消し去る。


世界の創造主としての権能〈天地創造〉。


世界に新たなルールを書き加える、まさに神のみに許された理外の力。

それを使う。

どんな生物であっても、世界の理を書き換えれば、存在しなかったことにできる。

待っていろよ人間め。

無限の苦痛と永遠の後悔を味あわせながら消し去ってくれる!



ゼウスは地上に繋がるゲートを作り出し、とあるダンジョンに降り立った。

そこは海底洞窟だろうか。生臭く、不快な気配に満ちていた。

やはり地上は不快な場所だ。この機会に我自ら全て消し去ってやろうか。


その時、天井からポタリと落ちてきた雫が頬に触れた。

それはこのダンジョンに残された最後の雫だった。

それをゼウスは指でぬぐい取った。


ふん、この我の神聖な体を不浄な液体で汚すとは、不敬にも程がある。

やはり一度滅ぼすしかないようだな。

それにしてもなんだ、この()()()()()()()()()()()


……ん? なんだこれは。振り払えない。払っても指から離れないではないか。

ええい、不快な。「天地創造」で消し飛ばしてくれる!

バカな……〈世界の理〉の対象外だと……っ!? 〈外側〉の存在ということかっ!!


……ぐっ、おのれっ!

右手を切り落とすしかないとは……ッ! この我に、なんという屈辱……ッ!

だかこれで……


……バカな。切断面に残っているだと……? そこから我の体に侵食して……うっ!?

バカな、我が、体が、奪われて……ふざ、ふざけるなっ!!

ああああああああああっ!!!


……はぁっ、……はぁっ。

右半身を、粉々にした……これなら……

………………馬鹿な、勝手に、修復されていくだと……


我は、神だぞ……世界の創造主だぞ。

それが、このような、知性すらない下等な存在にッッ!!


なぜだ! なぜこうも容易く敗れるっ!?

我は神だぞ、世界の創造主だぞッッ!!

その我が、こうも容易く被造物如きに敗れるなど、あってはならないだろうがっ!!

人間如きに、知性のない液体如きに……何故だ……何故だああッッ!!!!



まさか。

違うのか。

我は神ではない?

神を模しただけの存在なのか?


本物の神は、別に、いる……?


……ふざけるな。

認められるかそんなこと。

認められるわけがないだろうそんなことはッ!!!!!


「ふざけるなアアアアアアアアアアアアアア────…………」




【白き腐敗】は満足していた。

これはとても美味しい。とても満たされる。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

うれしいなあ。うれしいなあ。

もっと欲しい。もっと食べたい。もっともっともっと──


同じような美味しそうな気配を辿って触手を伸ばす。

そして見つけた。穴を。その奥に存在する、美味しそうなご馳走の大群を。

全部食べていいよね? いいよね? うれしいなあ。うれしいなあ。




「ワーオ、これはなかなかデスネー」


上級ダンジョンに入った【綺羅星】のミカエラは感嘆の声を上げた。

神々が【白き腐敗】に喰われている。


「天使を取り込んで融合する。そんなクレイジーな方法を試したかったのですが、どうやらそれどころではないみたいですネー」


ミカエラに気づいた【白き腐敗】が白濁とした液体を飛ばしてくる。

修正液のような、不自然なまでに真っ白な液体だ。

それがミカエラに触れた途端、時間が停止したようにその場で動きを止め、床に落下した。


それこそがミカエラの持つ力。

あらゆる障害を無効化する、何者にも縛られない自由の象徴。

自身の周囲に絶対不可侵領域を展開する【綺羅星】の領域だ。


【綺羅星】は全てを拒絶する絶対の防御結界であるため、領域を拡大するだけであらゆるものを拒絶する無敵の攻撃にもなる。

領域を一瞬で拡大することで、周囲の白き腐敗を弾き飛ばした。

だがそれだけだ。倒すことはできない。


ミカエラが最強と自負している「無敵」の力でも【白き腐敗】の侵食だけは止められない。

うかつに触れば腕の一本では済まないだろう。


「どこから入ってきたんでしょうネ。普通の方法では上級ダンジョンには入れないはずデスガ」


ミカエラには「普通ではない方法」があるため、こうして簡単にやってくることができるが、他はそう簡単には入れないだろう。


「誰かが【白き腐敗】の近くでゲートでも開いたのでショウカ」


一滴でも進入を許し、取り込まれれば、後はあっという間だ。

特に上級ダンジョンは神聖な魔力で満ちている。万物を糧とする【白き腐敗】からしてみればご馳走の山だろう。


【白き腐敗】は自らに取り込んだものをすべて自分の栄養にできる。

インド上部で発生した小さな存在は、最初は砂粒ひとつ壊せないか弱い存在だったという。だから放置されていた。


それが考えうる中で最も最悪の対応だったと気がついた頃には、周囲に存在するすべての物質を食べ尽くし、ユーラシア大陸のおよそ5%を食い尽くす最凶最悪の災厄と化していた。

【星喰い】が無限の迷宮で隔離していなければ、今頃は地球の核にすら届いていたかもしれない。


しかし。

上級ダンジョンは神の領域。【星喰い】の力もここまでは及ばない。

神々は全て食い尽くされ、邪神の栄養にされている。


それはもはや白を超えた白となっていた。光すら食い尽くす、闇のように濃密な白が迫ってくる。

出口も埋め尽くされ、ミカエラの帰る道も無くなっていた。

純粋な白は際限なくその量を増やし、世界ごとミカエラを飲み込んでいく。


「フフフ、まさかこんな方法でワタシを殺せるなんて、想像もしてませんでしたネ」


もはやミカエラが存在する一人分のわずかな領域だけが、この世界で【白き腐敗】に侵食されていない唯一の空間となっていた。

いくら【綺羅星】が無敵と言われようとも、それはこの世界に限った話。

別世界の存在が相手なら話は違ってくる。


「絶対不可侵領域が食い破られるまであと数秒といったところでショウカ。まあ、ダンジョンで死ぬのなら、それも悪くない最期デス──」


そのつぶやきすらも白は貪欲に食い尽くす。

そして。

神の住む世界は白によって完全に満たされた。




美味しいなあ。美味しいなあ。

いっぱい食べればいっぱい大きくなれる。

もっともっと大きくなれる。

うれしいなあ。うれしいなあ。


次は()()()()()()()()()あれを食べてみよう──


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