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第9話 初級ダンジョンと秘密の小部屋

俺は早速2階へと降りてきた。

と言っても1階とほとんど何も変わらないんだけどな。

なのでさっさと降りてしまおう。


「サーチ」


魔力を練り上げて、ダンジョン全体に拡散させる。

すると、魔力の流れにひとつ不思議なところがあった。

俺はその理由にすぐに気がつく。

この階層でこの流れが生まれるのは、ひとつしかないからな。


「おっ、面白いものを見つけました。ラッキーですね」


>面白いもの?

>既に十分すごいもの見せてもらってるけどまだあるのか

>なになに?


すぐに教えてもいいけど、せっかくだからちょっと焦らしてみようか。

そのほうが盛り上がるってシオリも言ってたし。


シオリの方を見ると同意するように頷いた、気がする。

気のせいかもしれないけど。


「ここで教えてもいいんだけど、毎日ダンジョンに潜ってる俺でも滅多に見られないので、せっかくだから直接見てみようと思います。

 たまに見つかることもあるから、もしかしたら気づいてる人もいるかもしれないかな?」


滅多に見られないとはいえ、そこまでレアってわけでもないからな。


>なんだ?

>誰かわかる人いる?

>そもそもサーチが使えないからさあ

>いうて2階だろ。今更知られてないような見所なんてあるのか

>イレギュラーでもいたかな

>ホブゴブリンとか?

>もったいぶらないで早く教えろ


コメントを見ながらダンジョン内を駆けていく。

どうやらまだ気付いてないみたいだな。


「まだ正解の人はいないみたいですね。

 到着までに当てた人には豪華賞品があるかもしれませんよ」


>とてつもない速度でなぎ倒されるゴブリンたちが気になって全然考えられないw

>所詮ゴブリンだけど、ここまでの早さで倒されると見応えあるな

>下の階層の敵も同じように倒していくのかと思うと楽しみだな

>早く答え言え


なんか急かされてるな。

まあこの辺はゴブリンとスライムしかいないからな。

シオリもまだついてこれてるみたいだし、もう少しスピードを上げようか。


>あばばばば

>はやいはやいはやい

>急に本気出すな


そんなこんなで、さっそく目的の場所に到達した。


「はいここです。みんなわかるかな?」


>壁しかないが?

>壁しかないぞ?

>この壁はいい壁ですね

>nice wall


確かに一見するとただの壁だ。

だけど。


俺は壁の一部に手を当てる。

すると、壁が音を立てて開き始めた。


「というわけで、正解は隠し部屋への入り口でしたー」


>は?

>ちょっと待て

>隠し部屋!?

>ダンジョンにそんなものあったのか!?


みんな驚いてるな。そうだろう。その気持ちは俺もわかる。


「大丈夫、何も言わなくても。みんなが驚くのもわかってる」


俺はうんうんと頷いた。


「隠し部屋を使っていいなら、そもそも壁を壊して進めばいいって思ってるんだろう」


>思ってねえよw

>思っても思いつかねえよw

>驚いてるのはそこじゃないんだよなあ

>ダンジョンに隠し部屋があるなんて今まで一度も聞いたことないんだが……

>なんでそんなことまで知ってるんだ……

>マジで何者なんだよケンジさんは……


おや? みんな隠し部屋の存在は知らなかったのかな?


>壁壊して進めばいいっていうか、そもそもダンジョンの壁壊せないんですが

>上級魔法をぶっ放しても、ダンジョンはちょっと焦げるくらいだからな

>それもしばらく経つと自動で直ってるし

>自動修復機能があるらしいな


「ダンジョンには魔力を吸収する性質があるからな。だからどんなに魔法を打っても壊れることはないんだ。焦げるのもダンジョンじゃなくて、ダンジョンの壁についてる埃とか苔が燃えるだけだし」


>そうなのか?

>知らなかった


ダンジョンRTA走者たるもの、ダンジョンについて誰よりも詳しくないければいけないからな。

冒険者が魔法を使うほどダンジョンも成長すると言われている。

一説によれば、ダンジョンが中に魔物や財宝を溜め込んでいるのは、冒険者を呼び寄せて自分を成長させるためとも言われてるからな。


>はえーそうだったんだ

>そういう説もあるってだけだろ

>ダンジョン巨大モンスター説な

>つまりダンジョンの中に入ることは、モンスターの腹の中に入るってこと?

>でも1日ごとに構造が変化するし、正直ダンジョンが生きてるのではって思うこともあるし、説得力はあるんだよな


コメントも盛り上がってるな。

横目に見ながら、隠し部屋の中に入る。


隠し部屋と言っても、他の部屋とそんなに変わりない。

モンスターがいたり、財宝があったり、何もなかったり、内容は様々だ。

今回は真ん中に金色の草が生えてるだけだった。

反対側の壁に扉がある以外、他には何もなさそうだ。


「うーん。行き止まりでもないですし、モンスターがいないだけ当たりな方ですね。運がいいと10階層くらい下に降りる階段があったりするのですが」


>そんなのあるんだ

>ていうか真ん中の金色の草何?


「あれは黄金草ですね」


>は?

>は?

>いやいやいや待て待て待て

>今黄金草っていった?

>黄金草って何?

>黄金草知らないとか

>エリクサーの材料に必要な草

>世界一高い草だぞ


「へーそうなんだ。知らなかった」


>なんで本人も知らないんだよw

>正直世紀の大発見だぞ

>今までは中級ダンジョンの中層宝箱でしか見つかってことなかったからな

>初級のこんな上層にあるなんて今まで誰もしなかったぞ

>明日からダンジョン激混みだろうな

>でもサーチ使えないと見つけられないんですが

>そうだった

>サーチの使い方早く教えろ


使い方って言ってもなあ……

こう、自分の内側にぬーんと力を込めて、その後ぶあーって外に出すだけなんだけど。


>全然わからねえw

>もっとやる気出して

>教えるの下手すぎ


うーん。難しいな。

まあそれは今度シオリにでも聞いて教え方を勉強するよ。


それよりも、さっさと先に進もうか。

黄金草をひとつ掴むと、そのまま口にする。


「あー、くっそまずい」


>不味いならなぜ食べたしw

>黄金草を生で食べるとか贅沢すぎ


「RTAにおいてスタミナは重要ですからね。黄金草は回復率が高いんですよ。普通の薬草やポーションくらいなら時間が惜しいので拾いませんが、黄金草ならその価値があります」


>そりゃエリクサーの材料になるくらいだからな

>それひとつで100万くらいするぞ

>むしろ自生してる黄金草だろ。宝箱に入ってる乾燥したのと違って保存状態は最高だろうから、その数倍はするだろうな

>パッと見だけで10本は生えてるぞ

>ここだけで数千万円が落ちてるってこと?


「マジ? これそんな高いの? 知らなかった。今までずっとちょっといい薬草くらいにしか思ってなかった」


>マジだぞ

>ちょっといい薬草で草w

>薬草だけにな

>エリクサーなんて1本1億はするからな

>むしろその材料が100万程度なんて安いくらい


はえー、すごい世界だな。

どうりで冒険者になろうって思う人が多いわけだ。

一攫千金って奴か。

そりゃダンジョン配信が盛り上がるわけだな。


「勉強になったよ。みんなありがとう。それじゃあ先に進みましょう」


俺は黄金草を飛び越えて部屋の出口に向かう。


>って取らないんかーい!w

>いやいやいやw

>待て待て待てw

>それだけで数千万はするんだぞw

>普通にスルーするなw

>何もわかってなくて草

>草だけにな

>草


「でもタイムは金より重いので」


>なんでそこはブレないんだよw

>タイムのために数千万円捨てられるのは尊敬する

>尊敬するけどなりたいとは思わないな

>そこまでしないとRTA走者になれないのか

>じゃあなりたくないな


ええ……。

RTAを普及するのがこの動画の目的なのに……


そうは思いながらも、体は勝手に扉を抜けて先に進んでしまう。

もう最短ルートを通るのが体に染み付いてるんだよな。

なのでコメントに返信したりしながらでも、足は勝手にサーチした階段に向かって進んでいた。


「というわけで次の階段を見つけました。途中隠し部屋を通ってショートカットできたので、普段よりはかなり早めにこれましたね」


今度はボスがいなかったのでそのまま降りる。

さて次は3階だな。

階段を降りながら、ふと思い出したので付け加える。


「ちなみに黄金草はシオリが回収してました」


>GJ

>さすがシオリちゃん

>シオリちゃんがいなかったらお前は生きていけないな

>ちゃんと大切にしろよ

>早く結婚しろ

>ふざけるな一生童貞でいろ

>童貞が顔真っ赤で草


なんで俺が童貞ってことになってるんですかね。

そんなこと一言も言ってないけど。


……まあ否定もしないけどな!


大体お前らシオリの怖さを知らないから好き勝手言えるんだよ。

結婚しろとかなんとか。

シオリは怒ると無茶苦茶怖いんだぞ。


今だってほら。

顔を真っ赤にしてめっちゃこっち睨んでるじゃん。

あれは絶対怒ってる顔だ。幼馴染の俺はわかるんだ。

怒られる前にさっさと先に行こう。

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― 新着の感想 ―
[一言] いやそれ多分照れてる方だと思うんだが…、お前ら早く結婚しろ。
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