表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
初級ダンジョンRTA走者 世界最速を達成したので解説動画を公開したら参考にならなすぎで大バズりしてしまう【書籍化決定】  作者: ねこ鍋


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/93

第57話 竜王の断末魔

より詳しく解析するためには、もっと近くでサーチを使う必要がある。

俺は地面を蹴り、ダンジョンを旋回するアイギスに飛びついた。


「……ッ!! なんて速さだ……ッ!!」


振り回すアイギスの竜の腕に触れると、魔力を直接流し込んでサーチを開始した。

これでより詳細に分析できる。


「……なんだ、それ? なんで攻撃をしない……? 触るだけ、だと?

 て、めぇ……ッ! 何のつもりだ! このアタシを舐めてんのか!!」


激しく振り回されるアイギスの腕から離れる。

解析は完了した。


解析した情報に従って魔力を竜の腕へと飛ばす。

その瞬間、竜の腕が塵になって分解された。


「なんだ!? なにをした!?」

「弱点属性の魔力を流し込んだだけだよ」


あの竜の外殻は、俺が知ってるどの物質とも違うようだったんでな。

弱点属性も存在しなかった。

なので新しい弱点属性を作って流し込んだんだ。


属性について口で説明するのは難しいが、見ればわかるだろうか。

これがその魔力だ。

これを使えばみんなも一撃で倒せます。


>何も見えないんだがw

>バカには見えない魔力かな

>何でそれでわかると思ったのw

>わかるわけないだろw

>未知の物質の新しい弱点属性って意味わからんw


塵になった竜の腕はそのまま崩れ去っていった。

しばらくしてから、その腕に新しい外殻が生成される。


「舐めやがって! ぶっ殺してやる!!」


全身の稼働部位に取り付けられた噴射口が火を噴き、やたらめったらに加速しながら攻撃してくる。

なんていうか、ほとんど暴風雨みたいな感じだ。


「クソッ、クソっ、クソがあぁああ!! なんで1発も当たらねえんだ!?」


>ケンジくんにスピード勝負はやめろってあれほど……

>でも当たらなきゃ意味ないからスピードに頼るほかない

>詰んでるじゃん

>狭いダンジョンなら範囲攻撃でワンチャンと思ったけどな

>それも魔力壁で防がれるという

>どう考えても詰んでるなこれ

>ケンジくん倒せる方法この世に存在するの?


「……ああ。そうか。そういうことか」


暴れ回っていたアイギスが、まるで電池の切れた人形のように、急にストンとその動きを止めた。


「あんまりにもイラつくもんで、アタシがここに来た目的を忘れてたよ」


悟ったような顔でつぶやく。


「全力を出せってことだよな? そうだよな? だったらいいぜ。全力も全力。マジの120%でぶっ放してやる。

 言っとくがマジの全力はアタシだって出したことがねえ。どうなるかわからねえけど……ま、しょうがねえよな。てめえが呼んだくせに、アタシの思いを避けてばっかで受け止めてくれねえんだから。

 ……ああ、別に避けたっていいぜ。てめえも他の奴らと同じで、その気が無いってんならしょうがねえ。

 代わりに地球ごと全部ぶっ壊れるけどなあ!?」


アイギスが吠える。


「竜骸骨格・全身鎧〈竜王(バハムート)〉!!」


今までの倍以上はある巨大な竜が全身を包む。

その異様はまさに竜王の名にふさわしい。

竜王が咆哮を上げると、莫大な魔力が全身を包み込み、全身を一つの砲弾に変えて突撃してきた。


「これがアタシの全力だ!! 地球ごとぶっ壊れちまえっ!!」

「それは困るな」


摩擦熱で周囲を焼き尽くしながら襲い掛かるその姿は、まるで彗星だ。

突き出されたその拳に合わせるように、俺も正面から拳を打ち付ける!


──バギンッ!


俺の拳と竜王の拳が真正面からぶつかり合い、竜王の拳が塵になって砕け散った。


「なにぃ!?」


すでにサーチは済んでるから、もう弱点はわかっている。

それは大きくなったところで変わらない。

どこに魔力を流せば壊れるかは一目瞭然だ。


アイギスが怯んだ隙に、俺は一瞬で懐まで潜り込むと、そのスピードに乗せて胸部に拳を叩き込んだ!


──ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴンッッ!!!!


竜王の中心に、一瞬のうちに10回攻撃を叩き込む。

叩き込まれた魔力は竜の体を破壊し、中にいたアイギスの体の内側にまで浸透する。

まとっていた竜外殻が砕け散り、その反動で中にいた小柄な少女が宙に投げ出された。


その体にはもう一つも外殻は残っていなかった。

アイギスの体の中に残っていた竜の気配まで、念入りに壊したからな。

当分は外殻を出すことはできないだろう。

気を失っているのか、目も閉じたままだ。


ダンジョンは10階分以上も壊れている。

身を守るものもないままこの高さから落ちれば、さすがに無事とはいかないだろう。


助けに行こうかと近寄りかけた時、その目が薄く開く。

その瞳にはもう、先ほどまでの熱は残っていなかった。

何かが抜け落ちたような透明な眼差しで俺を見る。

細い腕を持ち上げ、おもちゃのような指鉄砲を形作ると、小さな声でつぶやいた。


「竜骸魔法・奥義〈竜王の断末魔〉」


キィィ……ン──


極小の光の線が指先から放たれる。

それは真っ直ぐに俺を捉え、かざした手の平で止まった。


アイギスが笑った。


「……はっ。こいつもダメなのかよ」

「すでにお前の魔法は解析完了してる。弱点属性の魔力で受け止めれば問題ない」

「簡単に言いやがって。光の速度だぞ。……なんで反応できんだよ」


つぶやきながら、そのまま宙を落ちていく。

その顔は笑みを浮かべたままだった。


「完敗だな」

読んでいただきありがとうございます!


この作品はなろうコンに応募してます!

面白い、続きが読みたいと思っていただけたら、ブクマや評価、コメントなどで応援していただけるととっても嬉しいです!

どちらも大変モチベーションアップになりますので、ぜひよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 今のアイギスが「地球もろとも、宇宙のチリになれーッ!」時のベジ○タとするなら、ケンジくんはビル○様かな? 破壊神レベルとの実力差があるならどうしようもないなぁ…。
[一言] "解析対象の弱点属性"って概念をその場で作り出せる感じか 地力で負けてる上にそんなことされたら絶対勝てねぇな…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ