第46話 新種のモンスター
溶岩湖の中を泳ぐ骨の魚が、空中を落ちる俺たちの目の前に現れた。
>なんだあれ!?
>見たことないぞ!?
「溶岩湖に生息する魚型のモンスターですね。
国の登録図鑑にも載ってないので、俺は「ボーンフィッシュ」と呼んでます」
>新種キターーーーー!!
>フィッシュって見た目かこれ?w
>どう見ても体長10メートルはありますが
>ボーンリヴァイアサンの間違いではw
>骨だしアンデッド系かな
「アンデッドではないですね。なので光魔法はあまり効果ありません」
>溶岩の中にモンスターなんていたのか
>そりゃ見つかるわけないよ
>溶岩湖のモンスター全部新種説
>潜って探すやつなんているわけないからな
>一生使い道のない知識だな
ボーンフィッシュは俺たちの方を向くと、カタカタと全身の骨を振るわせる。
そして尾びれを激しく動かすと、こちらに勢いよく突進してきた!
俺は空中を蹴ってその攻撃をかわす。
ボーンフィッシュは真横を通り抜けて下へと通り過ぎていった。
>うおおおはええええええ!
>でけえええええええ!!
>この巨体でこのスピードはやばい
>てかケンジくんは何で空中でジャンプできるの?w
>さすが人間やめてるだけある
>タイムのためなら人間もやめる、それがRTA
>その覚悟のないやつにタイムは縮められない
>新規参入のハードル高すぎるw
「足の裏で風魔法を使って空気の塊を呼び出して、それを蹴っただけです。便利なのでみんなも覚えるといいですよ」
>足の裏から魔法を使うくらいならワンチャン俺でも……?
>いや普通に無理だからw
>みんな感覚狂ってきてるなw
>おいおいモンスター戻ってきてるぞ!
>やばいって!!
下に通り過ぎていったボーンフィッシュが空中で反転すると、巨大な頭を俺の方に向けた。
巨大な顎には、一本一本が人間大もありそうなほど凶悪な牙が並んでいる。
その口を開いた瞬間、俺は空中を蹴り飛ばした。
一気に加速してボーンフィッシュの口に飛び込むと、蹴って加速した勢いのまま中の背骨を足で叩き折った。
──ギィぃぃぃいいいい……
軋むような声を上げてボーンフィッシュの動きが止まる。
やがてバラバラになって落下していった。
「ボーンフィッシュは頭を割っても効果がありません。弱点は体の中心を走っている背骨です。
……この骨、背骨で合ってるよね?
とにかく、体の中心になってる骨です。これを折れば活動を停止します」
>やっぱり一撃かあw
>空中でも水中でもケンジくんに勝てなかったら、どこでなら勝てるんだ?w
「実は先ほど攻撃を避けたのはわざとです。その時点でも倒すことは簡単でしたが、上に向けて攻撃すると逆走になってタイムが伸びてしまいますからね。
なので上から攻撃された場合はあえて避けて下に移動させ、それから攻撃することで移動と攻撃を同時に行うことができます」
>そんなことまで考えてたのかw
>さすがRTA走者
>忘れそうになるけどちゃんとRTAしてるんだよな
>参考には全くならないけどなw
「なのでここは……」
俺が言おうとした時、溶岩の壁からさらに5体のボーンフィッシュが現れた。
溶岩の中には魔力が流れてる上に、サーチで中を調べにくいから、モンスターが隠れてることがあるんだよな。
巨大なボーンフィッシュが周囲を囲んでいる。
仕方ない。まとめて倒すとしよう。
俺は一瞬だけ結界の外に飛び出すと、その場で4回拳を振るった。
ベキベキベキボキンッ!!
周囲を取り囲むボーンフィッシュたちの背骨が一斉に砕け散った。
>ええっ!?
>今何が起こった!?
>明らかに離れてる場所にいた敵が死んだんだけど……
「今のは何もないところをパンチすることで空気弾を飛ばしました。弾速は遅いですが、離れたところを攻撃したい時には便利ですね」
>十分早かったけどw
>ケンジくんのスピードだと遅いんだろうなw
>てか空気を殴って飛ばすって、どうやったらそんなことできるのw
>さらっととんでもないことしてて草
>って、まだ1匹残ってるぞ!
最後の1匹になったボーンフィッシュが、巨大な顎を開いて俺たちのちょうど真上から襲いかかってきた!
>やばい!
>避けて!!
「いえ、ここはあえて攻撃を受けます」
>は!?
>なんで!?
>いくらケンジくんでも食われたら死ぬでしょ!!
巨大な牙が結界の上から噛み付いてくる!
──ガギィン!!
結界に阻まれて火花が飛び散った!
>ぎゃああああああ!!!
>死んだあああああ!!!
ボーンフィッシュは結界を食い破ろうと、食らいついたまま身を激しくよじる。
おかげでボーンフィッシュに押されるようにして、俺たちは結界ごと下へと加速し始めた。
「ここであえて食われたのは、こうしてちょっとしたショートカットするためですね。この程度の攻撃で結界が壊れることはないので、下に運んでくれる分には問題ありません」
>ケンジくんの結界固すぎ
>なんであの攻撃で壊れないんだ……
>なんか火花散ってたけど、結界って魔力で作ってるんだよな……?
>どうして物理特性を備えてるんだ……?
「うまくいけばこのまま……あっ」
結界を咥えたまま頭を振って上へ昇ろうとしたので、背骨を叩き折った。
>容赦ないw
>せっかく運んでくれたのにw
「まあ、所詮はモンスターですね。確実性に欠けるので、自分で落ちていった方が早いです」
>※溶岩の中に飛び込んで溶岩湖を二つに割るとモンスターに襲われる可能性があるため気をつけましょう
>条件不可能すぎて草
>ケンジくん以外に誰が出来るんだよそれw
>一生襲われる可能性ないわw
「溶岩湖でみんなに伝えられるのはこれくらいですね。では先に進みましょう。この感じだと多分5階層分くらいは潜れるはずです」
俺は空間を下に蹴って加速する。
その時、サーチに不思議なものが引っかかった。
「ん? なんか見たことないのがありますね」
俺はサーチに引っかかった方向に向けて空気の層を作る。
そして開くと、そこには溶岩の中に浮かぶ建物があった。
「これは俺でも初めて見る隠し部屋ですね」
>こんなところにも隠し部屋なんて……
>ケンジくんでも知らないものがあるのか
>ケンジくんでなきゃ見つけられないってこんなのw
>こんなところに隠されてるんだ。絶対普通のものじゃないだろうな
>今度は一体どんなレアアイテムが……
サーチを使ってみたが、中の様子は探れなかった。
単なる壁なら魔力を使ったサーチを防ぐことはできない。
サーチが通らないということは、つまりあの隠し部屋の壁は次元的に遮断されているということだ。
「中に何があるのかは分かりませんでした。もしかしたら未知のショートカットがある可能性もあります。もちろん何もなくてタイムをロスするだけに終わる可能性もありますが……リスクを恐れていたら何も得られません。タイムのためなら、時には危険な橋を渡らなければならないんです!」
>危険な橋は常に渡ってるけどw
>今まさに溶岩湖のど真ん中という危険地帯にいるがw
「では新しいショートカットを求めて、早速入ってみましょう!」
>ケンジくんさえ知らない隠し部屋……
>ドキドキしてきたな……!
>一体何が待ってるんだ……
>楽しみ!!
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