第45話 溶岩湖を真っ二つにする方法
溶岩に入った俺たちは、どぷんっ、と重い音と共に沈んでいった。
視界の一面に溶岩が押し寄せてくるが、結界があるため目の前で止まる。
ちなみにシオリはまだ慣れていないみたいで、俺の背中を服をつまむようにしてくっついていた。
>こんな光景一生見れないだろうな
>溶岩湖の中ってこんな感じになってるのか
>こういう普通は見られない景色を見られるのがダンジョン配信のいいところだよな
>溶岩の中に飛び込む奴なんていないからな
「ほ、本当に大丈夫なのこれ……?」
シオリが怯えたような声を漏らす。
確かに手を伸ばせば届きそうなくらい目の前まで溶岩が来てる光景は、見慣れてないとちょっと怖いかもしれないな。
俺は結界を操作して、範囲を少し広げた。
「これでどうだ?」
「少しマシになったかな……。ありがとう」
溶岩は水よりもさらに粘り気があるため、普通にしてるだけなら沈むのが遅い。
それでも洞窟を進むよりは早く下に行けるけど、さらに速度を上げるために結界の下側は尖った形にしてある。
普通に丸く結界で覆うと水中抵抗を強く受けるからな。
なのでそうしないといけないんだ。
その上で、頭上に空気の渦を作ってスクリューのように動かし、加速していく。
結界に包まれたまま、俺たちはすごいスピードで下に降りていった。
>はえーそんな方法があるのか
>水の中でもこの方法で移動できそうだな
>結界を維持しながら水と風魔法を操れればな
>普通に死ねる
>1人なら無理だけど、3人いればまあ……
そういえばチームでのRTAってやったことないな。
意外と斬新でありかもしれない。
RTA界を盛り上げるためには新しいことも必要だよな?
>つか何で結界の形そんな簡単に変えられるんですかねえ
>指摘する人あまりいないけど、これ普通にやばいよな
>そんなにやばいの?
>専門の結界師でも大きさを変えることはできても、形を変えられる人はいない
>四角い結界を作って天才って言われる世界だぞ
>それでも3分しか保たなかったし、強度なんて濡れた紙より弱い
>そんなに難しいのか
>自分の外にある魔力を操るのは、普通に考えるよりもはるかに難しいんだよ
へー、そうだったのか。
俺程度でもできるから、みんなも普通にできるものだと思ってた。
>ケンジくんはもうぶっ壊れてるからねw
>そろそろ自覚しようねw
>魔法に射程距離があるのも同じ理由だよ
>自分から離れるほど維持が難しくなって、限界を越えると霧散しちゃう
>結界で自分の周囲を丸く囲うだけなら難しくない
>形を変えるとなると相当な魔法センスがいるし、それを維持するにはスパコン並みの情報処理速度が必要になる
>脳にかなりの負荷がかかるからな。普通にやったら1分で廃人になるよ
>やっぱRTAって命懸け……
>リアルに神々の遊びなんだよな……
なるほど。
確かに結界が苦手な人だって中にはいるよな。
人には得意不得意があるんだし。
「そうでした。実は溶岩の中を進む方法はもうひとつあるんです。少しタイムは落ちますが……結界が苦手な人はこっちでもいいと思います」
>まだ方法があるの?
>どんな方法だ?
「それは湖を二つに割る方法です」
>……ん?
>湖を、割る……?
>ちょっと何を言ってるのか……
「言葉で説明するのは難しいんですよね……。やってみせた方が早いですかね。こうです」
俺は意識を集中して、結界の外に空気の壁を作り出す。
そしてそれを左右に押し広げていった。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!
溶岩の湖が目の前で二つに裂け、音を立てながら左右に分かれていく。
二つに分かれた湖は、さながら溶岩の谷のようだった。
>はああ!?
>なんだこの規模の魔法!?
>本当に湖が二つに裂けてる……
>あれだけ巨大な溶岩湖が、真っ二つって……
>こんなのマスタークラスの魔法使いでも無理なんじゃ……
>これ、溶岩の湖だよな……?
>水よりもはるかに重いのに、これだけの規模を空気の層だけで維持するって……魔力の出力どうなってるんだよ……
>空気の力だけで湖をひとつ丸ごと持ち上げるようなものだぞ……
>規格外すぎる……
湖を割って空気の層を作ったことで、俺たちは空中を落下し始めた。
「きゃあああああああーーーーーーーー!!」
シオリが悲鳴をあげて俺の背中にしがみつく。
「ちなみにこの方法を推奨しない理由は、タイムが伸びるからともうひとつ、大きな欠点があるからです」
>なんだ?
>ケンジくん以外使えないことか?
>命がいくつあっても足りないことか?
その時突然、溶岩の壁を突き破って1匹の魚が飛び出してきた。
溶岩の中を泳ぐ、骨だけの巨大な魚だ。
「モンスターに見つかるので襲われやすいことです」
「きゃあああああああーーーーーーーー!!」
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