第44話 マグマダイブでショートカット
28階に降りると、すぐにいつもと違うものが目に入った。
まっすぐ歩いてすぐだだっ広い空間に出る。
そこに広がっていたのは、太陽の表面のような灼熱の光。
魔力で防いでいても感じるほどの凄まじい熱気。
遥か彼方まで続く一面の溶岩。
そう、目の前にあるのは、巨大な地底溶岩湖だった。
>うっわ、なんだこれ
>洞窟内にこんなのあるのか
>めちゃくちゃ広いぞこれ……
>見た目は壮観だな
>実際に行くと地獄なんだろうな
>どうやって先に進むんだ
>一応壁際に時々道らしき穴は見えるけど……
>この上を歩かないといけないってことか……
「予想通り溶岩湖がありました。これはラッキーですね。ご存知の方もいると思いますが、この溶岩の中を潜ることでショートカットできます」
>ご存知なわけないんだよなあw
>ラッキーですねwwwじゃないんだわwww
>自殺行為にも程があるw
>そんなことしたら普通死んじゃうからね?w
>モンスターハウスの方がマシなレベルの悪運
湖の深さにもよるが、底まで潜ることで大体3階から5階層分くらいはショートカットできる。
サーチの効きが悪くなるので出口を見つけるのにちょっと手間取るのが唯一の欠点だろうか。
>絶対もっとやばい欠点がある件についてw
>タイムは命よりも重い!
溶岩に入るために、俺はさっそくいくつかの魔法をかけた。
まずは魔力の結界を周囲に張って溶岩の中でも耐えられるようにする。
さらに風魔法と水魔法で結界内の環境を整えるようにもしないといけない。
回復魔法はショートカットに登録されてるので自動で使用されるので、カメラが多少壊れるくらいなら問題ないだろう。
「ではさっそく溶岩の中を泳いで行きましょう」
>マジで行くつもりなの?w
>これが……ダンジョンRTA……!
>頭のネジ何本取り払ったらそんなこと思いつくんだw
>ケンジくんはいいけどシオリちゃんは普通の女の子なんだから配慮してあげてね!
>(……普通か?)
>(普通ではないよな?)
>(婚約指輪素手で引きちぎってたし)
>(シオリちゃんも大概だよな)
>《発言は削除されました》
>《発言は削除されました》
>《発言は削除されました》
>あーあシオリちゃんを悪くいうから……
>神に逆らうなんて……
>シオリ様最高!シオリ様最高!
やっぱりみんな溶岩湖に飛び込むのはちょっと驚いてるみたいだ。
まあ、気持ちはわかるよ。
見た目のインパクトがすごいもんな。
でも初見ではビビるかもしれないけど、慣れれば溶岩なんて赤いお湯と変わらない。
一気に行けばなんとかなるもんだ。
>溶岩を赤いお湯と言い張るなw
振り返ってみると、シオリも足を止めていた。
どうやらみんなと同じように驚いているらしく、躊躇っているようだった。
シオリのジト目が俺を睨んでくる。
あれは「こんなのできるわけないでしょ馬鹿じゃないの、火山のせいで頭茹だってるみたいだし得意の氷魔法で頭冷やしたら?」と思ってる顔だ。
幼馴染だからわかるんだ。
「こんなのできるわけないでしょ馬鹿じゃないの、火山のせいで頭茹だってるみたいだし得意の氷魔法で頭冷やしたら?」
ほらな。
「もしかしてシオリも溶岩に入るのは初めてか?」
「逆になんであると思ったの?」
「その方が近いし、みんなやってると思ってたけど……」
「ケンジみたいにタイムに命賭ける人なんていないのよ」
なるほど。
やっぱりまだまだRTAは普及してないってことなのか。
ならやはりここでRTAの面白さを伝えていかなければいけないな。
「そもそも溶岩の中なんて危険でしょ……。どうしてそんなことを……」
「大丈夫だ。俺が大切なシオリに傷をつけるわけないだろう。シオリは絶対に俺が守るから、危険なことは一つもない」
「……っ」
シオリの目を見て真っ直ぐに言うと、シオリは顔を赤らめて目を逸らした。
「………………じゃあ、いいけど……」
>攻略RTA終了
>今回も好タイムでしたね
>なんだかんだシオリちゃんは甘いんだよな
>だからケンジくんがいつまでも一般常識を覚えられない
>これは責任取らないといけませんね
>シオリちゃんはいつでも責任取る覚悟あるよ
>問題はケンジくんだから
シオリの許可も得たので、さっそく溶岩湖に飛び込んだ。
>マジで行ったーーーーー!w
>溶岩の中やべーーーー!
>ファーーーーーーwwww
>自殺する気かよwww
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