第40話 灼熱の溶岩エリア
階段を降りる途中まではなんともなかったのに、ちょうど真ん中を過ぎたあたりから急激に温度が上昇した。
この時点で25階のダンジョン環境ガチャの結果が分かったようなものだ。
俺は自分とシオリ、配信用カメラを魔力の膜で包んで保護しつつ、階段を降り切った。
階段を抜けるとそこは火の国だった。
「どうやら火山ステージでしたね」
遠くに巨大な火山が見えている。
その頂上からは黒煙が空高くにまで上り、流れてくる溶岩があちこちに川を作っていた。
草木は一本もない。ゴツゴツした黒い奇岩が無限に続いており、ごくたまに何らかの生物がいるだけだ。
サーチを使えばこの世界が無限に続いてるのがわかる。
俺の魔力感知範囲でも果てを見通すことはできなかった。
信じられないが、これもダンジョンの中なんだ。
>なんだここ……
>ヤバすぎる……
>あの火山、絶対ここまでのダンジョンの深さより高いよな……
>そもそもなんで空があるの……? あれを飛び続けたら一体どうなるんだ? 天井にぶつかるのか?
「空は一時間ほど飛び続けたことがありますが、天井はありませんでした。どこまで続くのか、本当に果てがないのかは、俺もわからないです」
>マジでダンジョンってなんなんだ……
>さらっと言ってるけど空飛べるの誰も突っ込まないの草
>それくらいならもう今更な
>どうせやり方を聞いても、魔力をどうこうするとかいうんだろ
「空を飛ぶだけなら、思いっきりジャンプすればいいだけですよ。
真上にしかいけないのが難点ですけど」
>魔力すら要らなかったw
>相変わらず方法が脳筋w
>1番の難点はそこじゃないんだよなあ
>どんだけ筋力があればそんなことできるの
>確かに俺でもジャンプすれば空飛べるわ
>一秒くらいだけどな
もちろん俺だってジャンプだけで空を飛んだりはしないけどな。
ちゃんと風魔法を使ってアシストするぞ。
>火山エリアか。さすがケンジくんというべきなのかな
>そんないい場所なのか?
>気温はこの辺りで既に数十度を超えてるし、奥に進むと数百度にもなる。普通の人間は近づくだけで死ぬよ。
>リアル地獄で草
今は魔力の膜で包んでるから、俺の周囲だけ気温を20度程度に抑えている。
確かに何もなかったら、ここを探索するのはしんどいだろう。
「火山エリアはまあまあ当たりな方ですね。水中エリアじゃなかったのは助かりました。最初のお祈りポイントは成功と言っていいでしょう」
>これで当たりなんだw
>まあ見渡す限り何もないから、走る分には障害物もないし良さそう
「そうですね。まずはサクッと先に進みましょう」
進むべき場所はサーチを使った時点でわかっている。
ゴツゴツした岩場を走り、溶岩の川を飛び越えて目的の場所に進む。
火山の麓まで走ると、やがて目的の場所が見えてきた。
「ありました。火山洞窟ですね。ここから地下に入っていきます」
>はっやw
>普通はその洞窟を見つけるのに時間がかかるんだけどなw
>一ヶ月キャンプしたって話を聞いたことある
>迷子になったら一生出られないこともあるしな
>恐ろしいマップだよな
>この辺りから環境が敵になるからな
>ランダム生成のダンジョンでも出られないとかあるの?
>冒険者がいる限りその階は維持されるけど、他は誰も入ってこれなくなる
>よくわからんけど次元から切り離されるとか、そんな感じらしい
>なんだそれ怖すぎ
>すぐに洞窟が見つかって良かった
「俺のサーチの範囲内にあったので良かったです。サーチ範囲外にあったら探すのに時間がかかりますし、あまりにも遠くにあるようなら再走でしたから」
>危なかった
>マジで近くにあって良かった
>どれくらいまでサーチできるの?
「距離はちょっと調べたことないのでわからないですが、この火山の向こうにもうひとつ火山があるのですが、その裏側くらいまでならわかります」
>え、火山2つもあった?
>地平線の向こうまで何も見えなかったけど……
>こんなでかい山見落とすわけないだろ……
>山が見えないくらい遠くって、どれくらいなんだよ……
コメントに回答しながら、火山洞窟を降りていった。
岩山をくり抜いたような荒々しい洞窟だ。
歩くうちに、やがて見慣れた迷宮のような場所に出てきた。
これまでのダンジョンと一点違うところがあるとすれば、道の脇を溶岩が流れているところだ。
おかげで洞窟内は明るい。
水の代わりに溶岩が流れる下水道といった方が近いかもしれない。
場所によっては溶岩が溢れて道を呑み込んでいるところもあった。
「では先に進みましょう。次の階段まではもうすぐです」
>溶岩の上普通に歩いてるwww
>シュールすぎるなwww
>良い子は真似しないようにwww
道を進むうちに、広い部屋に出る。
溶岩があふれる部屋の中にいたのは、赤い爬虫類の姿をした人型モンスターだった。
「ファイアリザードですね。火山エリアの標準的なモンスターです。
見た目通り炎に耐性を持ってたり、槍などの武器を構えて徒党を組んだりすることもありますが、これといって特に気をつけるべき点はありません。赤いゴブリンみたいなものです」
5匹ほど群れを作って密集していたため、即座に近づいて正面の一体に攻撃する。
そのまま5匹ごとまとめて吹っ飛ばし、部屋の壁に激突させた。
壁の染みとなって絶命し、光になってダンジョンの中に溶けて消えていく。
「むしろああして固まってることが多い分、一撃でまとめて倒せるので、ゴブリンより楽かもしれないですね」
>いつもの瞬殺
>25階の敵なんだけどなーwww
>赤いゴブリンwww
>ゴブリンよりファイアリザードの方が弱いとかいってるやつがいるってマジ?
>エアプすぎでしょ配信者やめた方がいいよ
>ちなみにそいつは初級と中級の違いもわからないらしい
>走るゾウから見たら、踏み潰したアリの区別なんてつかないからな
>地味に表現上手くて草
「お、階段がありましたね。では先に進みましょう。
火山エリアはうまくいけばショートカットできることがあります。この先でそれをみんなに見せられるといいですね」
>火山洞窟でショートカット……?
>今度はどんな無茶をするんだ……
>もう何をされても驚かない自信がある
>そう思っていた時期が俺にもありました
>次も楽しみ!
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