第28話 初めての神話級イレギュラー個体討伐
メデューサを倒した俺は、その後も次々と視線を反射させて先に進んでいった。
神殿ステージ1階で出てくるモンスターはメデューサが基本になるから、特に配信的にも変わり映えしない画面が続く。
なのでサクサク進むことにした。
「……あ、この先にもメデューサがいますね」
ちょうど廊下を折れ曲がった先にもいるみたいだったので、エーテル鋼を正面に投げた。
壁に当たって手元に戻ってくるのをキャッチする。
そのあと廊下を進むと、そこにはすでに石化したメデューサがいた。
その横を通り抜けて先に進む。
今のところは順調だ。
>これが……ケンジさんの本気……
>中級ダンジョンって簡単だなあ(白目
>実は中級ダンジョンは簡単説ある?
>ないよ
>でも映像も出回ってないし、噂が先行して誰も入ってないだけでは?
>入ってるやつはたまにいるよ。ほとんど誰も帰ってこないけど。
>自分でもできそうと思わせちゃうケンジさん素敵
>ガチ恋勢も湧いてきたか
>気持ちはわかるよ。男の俺でも惚れるもん。
それは困るなあ。
>中級以上の映像って載せても各国政府機関に消されちゃうんだよな
>あれなんでなんだろうな
>わからん。情報を独占するためとか、真似する奴がいたら危ないとか言われてるけど
そんなこんなで、神殿ステージ1階も最奥までやってきた。
最後の扉を開く。
部屋の中央には階段があり、そこに1匹のモンスターが待ち構えていた。
といってもここにいるのはメデューサしかいない。
けど……
>なんかでかくね?
>さっきまでの倍以上の大きさがあるな
>髪もなんか青いが
>もしかして、イレギュラー個体じゃね?
「あっ、これはまずいですね」
>ケンジくんでも流石にやばいのか
>神話級モンスターのイレギュラー個体って、もはやレベルで換算できる強さじゃなさそう
>逃げてーーー!
>それケンジくんに言ってる?
>メデューサでしょ
青髪のメデューサが目を見開く。
その魔力線はさっきまでの比じゃない。
俺はエーテル鋼を正面に投げた。
相手の魔力線を受けて、ピカピカだったエーテル鋼が石化してしまった。
そのまま地面に落ちて砕け散る。
「魔力が強すぎて一度しか反射できないんですよね。なのでこうして石化の魔力を受けると、エーテル鋼も石化してしまいます」
>もう反射できないってこと?
>じゃあもうダメじゃん
>今度こそマジでやばくね?
>ケンジくん逃げてーーー!
青髪のメデューサがニヤリと笑う。
そうして、見開いた瞳がさらに赤く輝いた。
膨大な魔力が膨れ上がり、石化の魔力線が襲いかかってくる!
俺は魔力を操って自分の前に展開する。
石化の魔力線は、俺が展開した魔力壁に当たって霧散した。
青髪のメデューサが笑うように口を開く。
「ホウ……。人間の分際で我が魔力を止めるとは。貴様、何者だ……?」
>またしゃべった!?
>中級ダンジョンのモンスターはしゃべるのが基本なのか?
>俺たちの常識がどんどん壊されていくな……
何者だと言われてもな。
「どこにでもいる普通の冒険者だよ。付け加えるなら、ただのRTA走者だけど」
「あーる、てぃー、えー?」
>モンスターも戸惑ってるwww
>そりゃ聞いたことないよな人類の俺らだって聞いたことないもん
>危険なダンジョンに無装備で突入してクリアタイムを競う競技のことです
>解説されても意味不明なんだよなあ
>解説された方が意味不明まである
「貴様が普通か。ククク……。まあ、なんでもイイ。
どこまで耐えられるのか試してやろウ」
青髪のメデューサが再び目を輝かせる。
それだけじゃない。
頭に生える無数の蛇も瞳を輝かせ、一斉に大量の魔力線を放ってきた。
>うおおおお! なんかわからないけどやばそう!
>向こうも本気を出してきた感じか
>ここからどうするんだ?
>動けないんじゃ詰んでね?
魔力線が俺の魔力壁に次々とぶつかる。
とりあえず大丈夫そうだが、いつまでもこうしてるわけにはいかない。
配信カメラが石化すると困るし、それに後ろにはシオリもいるからな。
まあシオリの実力ならこの程度平気かもしれないけど……
「ちょっとケンジ、気をつけなさいよ」
急にシオリがそんなことを言い出した。
「あくまで噂だけど、メデューサの邪眼はカメラを超えて、視聴者にまで作用するって聞いたことあるわ。配信カメラに当てないようにしなさいよ」
「えっ、そうなの?」
>え? 俺ら死んだ?
>同接200万超えてるけどwwww
>大量殺人やんけ
>ひとつも笑えなくて草
>録画でもダメなんだっけ?
>ダメだよ。それで過去に犠牲者出てる
>呪いのビデオかな
>だから政府が消してるんだろ?
>ケンジくんに殺されるなら本望!
なるほど、カメラにも当てたらダメなのか。
となるやっぱりこれしかないか。
「シオリ、これから魔力壁を解く。多分平気だとは思うけど、念のためカメラを持って俺の後ろに隠れててくれ」
「……大丈夫なの?」
「この程度で負けることはないけど、念のためな。
俺1人の問題ならいいけど、今は配信を見てる人がいるし、シオリもいるからな」
「わかった」
シオリがカメラを抱えると、言われた通り俺の背中に隠れた。
「……無理しないでね」
当たり前だろ。
シオリは大切な友達なんだ。
古い考えなのかもしれないけど、やっぱり男の俺が守らないとダメだろ。
青髪のメデューサも何かを感じたのか、瞳の輝きをとめ、魔力をためるように俺を見据えている。
ちょうどいい。
その方が俺も好都合だ。
魔力壁を消す。
同時に、青髪のメデューサの無数の瞳が、一斉に赤い光を放った!
「死ネ、人間!!」
無数の魔力線が重なり合い、一本の巨大な魔力線となって襲いかかってきた!
「──せいっ!!」
俺は気合を入れて拳を前に突き出す。
襲い掛かってきた魔力線が消え、正面にいたメデューサが石化した。
>えww
>ウッソだろwwwパンチで視線を跳ね返したwwww
>やっぱ脳筋www
>これが……真のRTA……!
>絶対違うw
>何でそんなことできるのwwww
「ふう、うまくいってよかったです。
ちょっとタイミングが難しいのですが、いつもより気合いを入れてパンチしましたからね。そのおかげでしょうか」
>気合いwwwww
>マジでなんなのwwwww
>発想がもう原始人なのよwwwww
>毎日頑張ってレベルアップしてるのが馬鹿らしくなるなw
石化した青髪のメデューサが崩れ落ちる。
おかげでふさがれていた階段には入れるようになった。
「どうやら配信しながらだと危険なようですので、これからはメデューサはなるべく映さないようにしますね
では先に進みましょう!」
読んでいただきありがとうございます!
この作品はなろうコンに応募してます!
面白い、続きが読みたいと思っていただけたら、ブクマや評価、コメントなどで応援していただけるととっても嬉しいです!
どちらも大変モチベーションアップになりますので、ぜひよろしくお願いします!




