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第19話 ワープゲートの秘密

ワープゲートでダンジョンに空けた穴を通り抜けて地上に戻ってきた。

あとに続いてシオリもやってくる。

自分の通ってきた穴を振り返ると、なぜか顔を引き攣らせていた。


「なんなの、これ……。ダンジョンからワープして帰れるなんて聞いたことないんだけど」

「ワープゲートのスキルだよ。どこにでも好きなところに帰還用のワープゲートを出せるんだ」


俺の説明を聞いたシオリは絶句したようで、しばらく言葉にならないようだった。


「帰還用ゲートをどこにでも出せるって……。そんなの、ダンジョン攻略の概念が完全に書き変わるじゃない……。そもそも、ワープゲートはダンジョンボスを倒した時にしか出ないんじゃなかったの」

「普通はそうなんだけど、ダンジョンボスを倒しまくってた時に、いつもとは違うレアボスが出てきて、倒したらなんとかかんとか? って言葉が聞こえて、気が付いたら覚えてたんだ」

「100階のダンジョンボスにイレギュラーがいるなんて聞いたことないけど……」

「レアモンスターっていうか、イベントボスって感じか? それ以降は一度も会ったことないから、一回だけなんだろうな。便利だからシオリも覚えたらいいんじゃないか」


ジト目で睨まれる。

そんなのできるわけないでしょっバカじゃないの、って思ってる顔だ。

まあシオリはRTAやらないからな。


「必要なら手伝うけど」


そういうと、俺を睨む目が少しだけやわらいだ。


「そもそも、そのレアボスの出現条件はわかってるの?」

「確かちょうどクリア1000回目の時だったと思う。だからシオリも1000回クリアすれば出るはずだけど」

「くりあせんかい……」


なぜかシオリが遠い目になった。


「……まあ、考えとくわ。

 それにしても、イベントボスとか……ワープゲートとか……。聞いたことないものしかないわね……」

「そうなのか? シオリも結構冒険者としては有名だから知ってるものかと思ってたけど」

「有名なだけよ」


シオリは自嘲気味な笑みを浮かべた。


「女性でそれなりに強い冒険者って限られるからね。私程度でも珍しいの。実力的にはソロで30階に行ける程度よ」


俺程度でも100階クリアできるんだから、シオリなら余裕かと思ってたけど、どうやらそうじゃないらしい。

まあ、シオリの実力は俺以上のはずなんだけど、ダンジョン向きじゃないからかもな。


「それにかわいいし、人気が出るのも当然だよな」

「………………」


あれっ。

褒めたつもりだったのになぜか睨まれてる。

怒ってるわけじゃなさそうだけど……


「そういえばシオリはなんで冒険者になったんだ。昔はそんなにダンジョンとか好きそうなタイプじゃなかっただろう」


そもそもシオリは子供の頃に一度死にかけてる。

それを俺が助けたのが仲良くなったきっかけなんだけど、そのおかげでシオリはダンジョンとかそういうのは好きじゃないと思ってたんだよな。


「………………」


またジト目で睨まれた。

今度はわかる。これは怒ってる時の目だ。


「あんた、小学校の時からダンジョンばっかりだったじゃない」

「ん? そうだったっけ?」


小学校の頃なんてよく覚えてないけど、そうだった気もする。

でも小学生なんて誰でもそんなものじゃないか。

ダンジョンに潜って魔法やら剣やらで凶悪なモンスターをバッタバッタとなぎ倒す。

そんなのに憧れない男子小学生なんていないだろう。

まあ今の俺は当時の憧れとはちょっと違った楽しみ方をしてるけど。


「だからよ」


シオリがつぶやくようにこぼす。


「あんたがダンジョンのことばっかり話すから、私もそうなったのよ」

「ふーん。友達がはまってるのを見たら自分もやってみたくなるって感じか」

「……はあ。まあそうよね」


あれえ?

なぜだかものすっごい呆れたようにつぶやく。

俺がダンジョンの話をするからっていうからそうだと思ったのに。

違うのかな……


「その話はもういいわ。それよりさっさといくわよ。充電しないといけないんでしょ」


そういえばそうだった。

先を行くシオリの後を追いかける。


ちょうどその途中にダンジョンに降りる前に設置したタイムクロックがあったので、一度タイムを止めておいた。

時間は1時間ほどだった。

普段は数秒でダンジョンを一周してるから、このタイムが遅いのか早いのかわからないな。


「シオリ、このタイムはどうなんだ?」

「地下7階で一時間はかなり早いわよ。本来なら10階までで丸一日とかかるんだから」


なるほど。

そういうものなのか。

みんなゆっくり攻略してるんだな。

まあ、ダンジョンを隅から隅まで探索したり、アイテムを探したりしていればそれくらいかかるものなのかもしれないな。

俺みたいにタイムを縮めることが何より楽しい! みたいな冒険者は少ないみたいだったからな。

だからこそ配信でその楽しさを広める甲斐があるってもんだけど。




やがて俺の家に戻ってきた。

いつでもダンジョンに挑戦できるように、近くに部屋を借りてるんだよな。

おかげですぐに戻ってバッテリーを充電することもできた。


どうやら急速充電で一時間くらいかかるみたいだ。

ついでに念のために買っておいた予備のバッテリーも取り出して、充電しておこう。

これで次はもう少し長くできるようになるはずだ。


「それにしても配信中にカメラの電池がなくなるなんて配信者失格だな」

「本当にね」


シオリがバッサリと言い捨てる。

うう、その通りだけどもうちょっと優しくしてくれても……


「ま、初めてなんだからそんなもんでしょ」


シオリさん優しい……

好き……


「な、なに言ってるのよ馬鹿じゃないの」


照れたように顔を赤くして視線を逸らす。

まあシオリが優しいのは最初から知ってるけどな。

厳しいことを言うのも、それが相手のためだと思ってるからだし、遠慮しないのも幼馴染の俺だけだ。

そもそもシオリは本当に嫌いな相手とは話さないし、ガチギレするとむしろ笑顔になるタイプだから。

怒ってるように見える時はむしろ機嫌がいい方まである。


「それにしても、ケンジがあんなに強いなんて知らなかったわ。RTAだけだと思ってたけど、戦っても強いのね」

「モンスターをすぐに倒す必要があるからな。でもシオリだって一流冒険者なんだからあれくらい倒せるだろう」

「だとしても、あそこまで圧倒的じゃないわよ」


そういうものなのか。


「そもそも私は強さを求めてるわけじゃないから。

 ダンジョンにはお宝とか、見たこともないアイテムとか、そういうのを求めてるの。

 いわゆるレアアイテムハンターってやつ。

 一応冒険者ランキングにも入ってるけど、それは見つけたアイテムのレア度や貢献度なんかで選ばれてるだけ。

 強さを求めてるのはバトルハンターとか呼ばれてる奴らで、私はそういうのには興味ないのよ」


ふーん。

まあシオリは女の子だし、強さに興味ないってのはそうかもな。

冒険者にも色々いるんだな。


「じゃあ俺はどうなるんだ。RTAハンターとか?」

「ケンジの場合はレコードハンターね。いわゆる世界一とか、人類初とか、そういう歴史に残る記録を狙っていくタイプよ。ギネスみたいなものかしら」

「なるほど。記録挑戦者(レコードハンター)か。ちょっとカッコいいな」


RTA走者も悪くないと思うんだけど、それとは別に二つ名みたいなのがあるとちょっとワクワクするよな。


その後もシオリと少し雑談しながら、時間を潰していた。

その中で、ふと自分のチャンネルを確認してみた。

さっきの配信時間は1時間程度だったが、登録者数が1万を超えていた。

ライブ映像はまだ動画化されてないので合計でどれくらい見られたのかはわからない。


「みんなに見られてるといいなあ」

「心配ないわよ」


シオリはなんだか塩対応だった。

まあ、心配してないってことなんだろうけど。

シオリの登録者数は100万人を超えている。

俺なんかじゃはるか遠く及ばない数だ。


俺もそれを当面の目標にしようか。

ちなみにシオリはどれくらいで行ったんだ。


「3年くらいね」


結構かかったんだな。

俺もじゃあそれくらいを目指して地道に頑張ろうかな。

シオリはなぜかじとっとした目で俺を見つめていたが、やがて小さくため息をついた。


「……ま、それまでは私も手伝ってあげるわよ」


お前なんかじゃ無理よ、ということなんだろうなきっと。

俺はシオリみたいに見た目も良くないし、動画に花があるわけでもない。

実際RTAなんて全然知られていなかったし、興味を持ってくれる人もまだ少ないだろう。


それでも見捨てないでこうして付き合ってくれる。

シオリだって自分の配信があるはずなのに。


「いつもありがとうなシオリ」

「……ん」


短く答えたけど、幼馴染の俺にはわかる。

どうやらちょっと照れているらしい。

正面からお礼を言われるのにシオリは弱いんだよな。

そのうち何かお礼しないとな。


そんなことを話してるうちに、バッテリーの充電も終わったようだ。

さて、しっかり休んで元気も回復したし、そろそろダンジョンに向かおうか!

読んでいただきありがとうございます!


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[良い点] シオリちゃんかわよ [一言] いちゃいちゃ助かる
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