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第15話 ランダムとは法則性のある偶然である

階段を降りて6階にやってきた。

といっても5階と変わりないからそんなに変わり映えしないんだけどな。

ドラゴンベビーというイベントももうないし、しばらくは盛り上がりどころもないかもしれない。

さっさと10階に向かった方がいいだろうか。


特にこれといったイベントも起きないので、コメントも雑談が多くなってきていた。

その時ふとこんなコメントが目に入った。


>それにしても5階でいきなりドラゴンに会うのは運悪すぎ


「ん? 別に運が悪かったわけじゃないぞ」


>RTA的にはラッキーってことですか?

>脳がもうやられてるんだよなあ

>普通は見つけた瞬間に帰るんだぞ

>良い子は真似しないでね


「まあ確かに5階でいきなり出会ったのは運が悪いとも言えるが、まあどうせ何処かでは会うんだしな。早いか遅いかの違いでしかないよ。

 それに、配信を盛り上げるためにわざと早く出るようにしたしな」


>ん?

>早く出会えるようにした?

>どういう意味?

>召喚魔法まで使えるの?


「いや、わざわざ敵を召喚したりなんかしないよ。タイムが伸びるだけだろう。敵なんて本当は居ない方がいいんだから」


>否定しないの草

>まさか召喚魔法まで使えるのか……?

>というかさっきの発言はどういう意味だよ


なんかコメントの流れが思ってたのと違うな。

みんな知ってると思ってたけど……


「もしかして、みんなダンジョン生成の乱数調整って、しないの?」


>は?

>は?

>らんすうちょうせい?

>ちょっと何言ってるかわかりませんね

>日本語でおk

>ゲームと現実をごっちゃにするな


「ダンジョンが入るたびに内部が組み変わるのはみんな知ってるだろ? だからこそランダム性があってRTAが面白いんだけど……まあそれはともかく、ダンジョンは何の法則もなく形を変えてるんじゃない。周囲の環境や、中に入る冒険者の種類、ダンジョンの攻略度。いろいろな条件が組み合わさって決まるんだ」


>へー知らんかった

>いや流石に嘘だろ

>何か証拠はあるのか?


「今ここにドラゴンが出てきただろ? いくらランダムとはいえ、配信中に5階の最初の部屋から都合よくドラゴンがいるなんて出来過ぎだろう」


>そりゃそうだけど

>だからってそんなことある?


壁を叩いたり、あえて遠回りをしたり、倒すモンスターの種類や数を調整したり、そうやることである程度ダンジョン生成の方向性を操れるんだ。

それに5階以降はある要素が追加されるから、なおさら重要度が上がる。

RTAには必須のテクニックだ。


「とはいえまだこの階層なら成功率は2~3割ってところだけどな。1階からボスが出てきたのも、まだ乱数調整できてない段階だったし。

 けど、いきなり出てきたことで、今回はボスが出やすいように調整されてるのかもって思ったんだよな。だから試してみたんだけど、うまくいってよかったな」


>いやいやいや

>ダンジョン生成を操るとか聞いたことないよ


「そうなのか? みんなやってると思ってたけど……」


いや待てよ。

よく考えたら、ダンジョンを操ることはランダム性をなくすこととも言えるわけで、それは自らダンジョンRTAの楽しみを奪っていると言えるのか?


「なるほど。そういうことか。理解したよ。あえて乱数調整を行わないってことなんだな。さすがみんなは意識が高い。俺なんてまだまだだったな」


>勝手に納得してて草

>一体何を理解したんだ

>そうだよ。あえてやらないんだよ。あえて、な。


「やっぱりそうだったのか。色々知らないことを教えてもらえるし、勉強になるな」


>俺はやりたいから方法を教えてください


「うーん。こればっかりは経験だからなあ。でもみんなもなんとなく経験はあるだろ? 今回はやけに宝箱が多いなとか、同じ敵とばかり遭遇するなとか」


>あるある

>ゴブリンしか出ない時とかあるな

>そう言われると、やけにドロップ率がいい日と、悪い日があるような

>俺もがチャが偏る日ある


「そうそう。そういうのだよ。その時の状況を覚えておいて、あの時はこうしたからこうなるのかなとか、そういうトライアンドエラーを繰り返していくとなんとなく法則のようなものが見えてくるんだ」


>じゃあ今日はドロップ率が悪い日だと思ったら帰るのもありか

>今日はなんか調子悪いから帰ろうとかな

>それはお前の調子だろ

>明日は本気出すし

>お前昨日もそういってたよな

>運を制御できるって考えたら、これって実はめちゃくちゃ革命的な情報じゃないか

>確かに

>でもわかんないんだよなあ

>知ってるだけでも違うだろ

>それもそうか

>今までただの偶然だと思ってたのが、実は偶然じゃなかったってことだもんな

>お前ら当然のように信じてるけどまだわからないぞ


「まあランダムを楽しむのもRTAだからな。とはいえ0にするのもそれはそれで違う気もするし。うーん、みんなはどっちがいいと思う?」


>好きにしたらいいよ

>どうせ解説動画だから本気じゃないんだろ?

>要素の解説ならむしろ積極的に使った方がいいんじゃないのか


なるほど。確かに。

それもそうか。


「わかった。じゃあ今後も使っていこう。とはいえなるべく控えめにするよ。いきなり10階連続で目の前が階段とかになったら動画的にはつまらないもんな」


>いやそれはそれで面白いw

>逆に見てみたいよそんな奇跡w

>今まで最高で何回連続階段があったんだ?


「最高は……25階連続だったかな?」


>いきなり四分の1が終わってるじゃねえかw


あれは本当に色々な偶然が重なったからな。

5階分一気に降りられる大階段とかも出てきたし。


>大階段なんて存在するのか

>都市伝説だと思ってた


「あるよ。本当にたまにだけど。階段を連続で出してる時に現れやすいから、多分階段が重なって生成された時にダンジョン側でくっつけてるんじゃないかな」


>そりゃ乱数調整しないと見れないわ


そんなことを話しながら進んでると目的の部屋に着いた。


そこは特にこれといった特徴のない部屋だ。

隅の方に3匹のオークがいたが、位置は部屋に入る前からわかってたから、部屋に入ると同時に石を投げて退治してある。


>早すぎるんだよなあ

>当然のように処理されるオークたち

>もうパンチすらしてもらえない

>オークって一応めちゃくちゃ強いんだけど、ケンジくんの配信見てると感覚が麻痺するな

>どれくらい強いの

>2メートルのオークは2メートルのヒグマみたいなもんだぞ

>ヒグマに素手で勝てる男。刃牙かなにかの主人公かな。


「さて、ここから下の階に行けるんですけど、みんなわかるかな?」


>ん? どういうこと?

>何もないけど

>オークの死体しかないぞ


「まあ画面越しだとわからないよな。実はここに……」


俺は部屋の中央に向かって歩くと、床の一点を軽く足で叩いた。

途端に床が開き、下に続く穴が現れる。


「下に落ちるトラップがあるんだ」


>は?

>いやいや

>何でわかるんだよ……

>ダンジョンのトラップは判別不可能のはずだろ……

>不可能ではない。深層のレアアイテムか、ユニークスキルだと判別できるって言われてる

>「トラップ識別スキル」持ってるやつなんて世界で三人しかいないんだが……


「もちろん俺だってわからないよ。本気でサーチすれば別だけど」


>わかるんかい!w

>サーチ便利すぎw

>早くサーチの覚え方教えてくれ


「それはまた今度な。それにサーチを使わなくてもある程度はわかるぞ。ここに落とし穴が出るように乱数調整したからな」


>出たよ乱数調整

>もうなんでもありだな


そう。

ダンジョンの5階からはトラップが出現するようになるんだ。

だから乱数調整が重要になる。

オークたちが部屋の隅にいたのも、中央の落とし穴を避けてたからだろう。


落とし穴が現れるだけで、階段の数が実質2つに増えたようなものだからな。

下に降りる手段が増えるので、ここからはどんどん先に進めるようになる。

RTA的にもさらに面白くなってくるところだ。


「先に進むほどにダンジョンのギミックも増えるから、まだまだ紹介できてない要素はいっぱいある。結構知らない人もいるみたいだし、みんなに教えられるのがなんだか楽しみになってきたよ。今まで知らなかったけど、配信って面白いんだな」


>こっちもめちゃくちゃ面白い

>すごくためになってる

>配信してくれてありがとう

>何の参考にもならないけどなw

>それなw

>見てるだけでも楽しいからいいぞw


シオリに言われなかったら、きっと配信なんてやろうと思わなかっただろう。

その点でもやっぱり感謝しないとな。


「ありがとうシオリ」


なんとなくつぶやくと、シオリは視線を落とし穴に向けて、いいからさっさと行きなさいよと目で告げてくる。

俺は苦笑して前に向き直った。

あれは照れてる時の態度だろう。


その状態であまりからかうとまた不機嫌になってしまう。

というわけで俺はさっそく落とし穴に飛び降りた。


……っと、その前に。

シオリにチャンネル登録などを呼びかけるよう言われてるんだった。

そういうのをこまめにやることも配信者として大切らしいからな。


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