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第14話 悪いが少し本気を出すぞ

シオリの不機嫌メーターはなぜかマックスになっているが、まだドラゴンとの戦闘中だ。

なのでまずはドラゴンに向き直った。


ドラゴンブレスを防いだことで、向こうも俺を脅威と認識したようだ。

完全に立ち上がり、臨戦態勢に入っている。


「どうやら本気になったみたいだな」


小型で上層のモンスターとはいえ、そこはドラゴンだ。

本気になれば恐ろしい強さを発揮する。

油断してるうちに倒せればいいが、そうでないと時間がかかってしまうだろう。


それでなくても今のでだいぶタイムロスをしてしまってるんだ。

まあ解説動画だからギリギリまで切り詰めるようないつものやり方ではないが、それでも一応RTA走者としてのプライドがある。

これ以上の無駄な時間はかけたくない。


「悪いがこっちも少し本気を出すぞ」


俺の変化を感じ取ったのか、ドラゴンが身構えるように全身に力を入れた。

身を固くして防御力を上げ、こちらの動きに即応できるよう神経を張り詰めさせる。

カウンター狙いだろう。


本気で防御を固めたドラゴンには、まともな攻撃は通じない。

上級魔法の一撃さえ無効化してしまうんだ。


だが、それは俺相手には悪手だ。


「10倍加速・<加速(オーバークロック)>」


バフ魔法を自分にかけ、ドラゴンに向けて走った。

勢いに乗せた拳を叩き込み、壁際に吹き飛ばす。

追いかけるようにもう一度走り、鱗の砕けた部分にもう一度拳を叩き込んだ。


「グギャアアアアアアアアアアアッッ!!!!」


断末魔の叫び声が響く。

そのまま光の粒になって消えていった。


「うーん。0.2秒もかかったか。やはり警戒させたのが失敗だったな」


>は!? 今何が起こった!?

>何も見えなかったんだが……

>気づいたらドラゴンが死んでる……

>どういうことなの……


「さすがに本気を出したドラゴンを普通のパンチで倒すのは難しいので、加速魔法をかけて勢いをつけてからパンチで倒しました」


>パンチで倒しました、じゃないんだわ

>普通じゃないパンチでも倒すの無理なんだけど……

>しれっと言ってるけど加速魔法ってなんだよ……

>時魔法ってやつか?

>あれ冗談じゃなかったのか……


「10倍の速度で移動したので、威力も10倍です。なのでドラゴンでも倒せるようになります。移動にも使えるので、RTAするなら必須の魔法です」


>だからまずその魔法の覚え方を教えてくれよ

>時魔法とか聞いたことないんだが

>ちな10倍の速度なら威力は100倍な

>え? そうなの?

>エネルギーは速度の2乗に比例するからな。物理で習っただろ


「え? そうなの?」


>本人も知らなくて草

>何で知らないんだよ

>高校の物理で習いましたね、ってドヤってた配信者がいたらしいよ

>習ったんじゃないの?

>こ れ は 恥 ず か し い


うう……

穴があったら入りたいってのはこのことか……


>ちなみに100倍の速度で動くと?

>1万倍だな

>やば

>もしかして速さこそ最強?

>100倍の速度で動ければな

>そんな威力でパンチしたら腕がなくなりそう


「あ、いきなり100倍で動くのは初心者にはお勧めしません。速すぎて自分の動きを制御できないので、壁に激突します。2倍で練習して徐々に増やしていくといいでしょう。当たりどころが悪いと壁にぶつかって一瞬でミンチになります」


>草

>時魔法怖すぎ

>2倍で十分だわ


「なので魔力障壁を自分の前に展開しておきましょう。これで空気抵抗も緩和できます。魔力障壁は、魔力を制御して自分の前に集めればできます。シールド魔法と違って効果時間もなく常時展開できるのでお勧めです」


>だからさあ

>そのさあ

>魔力制御のやり方をさあ

>教えろって言ってるだろ!!!!

>この一体感好き


「やり方って言ってもなあ……自分の中にある魔力をこう、コネコネしたあと、ぐーんて引っ張って自分の前にぐいーんって持ってくるだけなんだけど」


>はあつっかえ

>日本語幼稚園児かな

>どうして冒険者ってさあ

>シオリちゃんと説明代われ


「って言われてるんだけど?」


シオリに目を向ける。

まだ怒ってるみたいだったけど、その目がさらに細められる。

あれは、そんなの私にわかるわけないでしょ、って思ってる顔だ。


「そんなの私にわかるわけないでしょ、だそうです」


>説明はいいからもう一度声を聞かせて

>さっきの声可愛かったよな

>あれは絶対美少女

>なんかどっかで聞いたことある気がするんだよな

>わかる。もしかして有名配信者なんじゃ?


そういえばシオリは登録者100万人超えたって言ってたっけ。

もしかしなくてもめちゃくちゃ有名な配信者だ。

下手にバレると騒ぎになったりするかもしれない。

幼馴染だからって理由だけでこうやって手伝ってくれてるんだし、迷惑はかけないようにしないとな。


ちなみにドラゴンが消えた後には数枚の鱗が残っていた。

今回は宝箱じゃなくて素材がドロップしただけだったみたいだな。


「竜の鱗には使い道があるので拾う価値があります。なので迷うところですが……」


>拾う価値どころじゃないんだけどな

>迷う理由がわからない

>あれ一枚でいくらするんだよ

>竜の鱗で作った装備とか値段つけられないぞ

>普通売らないからな

>市場に出回ってるの見たことない


「今回はスルーで行きましょう」


>知ってた

>知ってた

>安定のスルー

>何でだよ! 普通拾うだろ!!

>お、新参か?

>新鮮な反応だな

>まあ落ち着け

>タイムは金より重い


「ちょっと、俺の決め台詞取らないでください。

 とはいえ、そうです。金なんかよりもタイムの方がはるかに重要です。これはRTA解説配信なので、RTAを走る上で重要なことなんかをこうやって説明していければと思います」


>了解

>もう慣れたから大丈夫

>マジかよ……信じられねえ……

>いらないならくれよ……

>マジでそれな

>心配するな。俺たちにはシオリちゃんがいる

>黄金薬草もシオリちゃんが回収してたしな

>有能な幼馴染マネージャーまじうらやま

>え? 黄金薬草って、あの?

>そうだよ

>10本くらい見つけたけどいらないって言ってスルーしたからな

>10本!? マジで!? どこで手に入るの!?

>アーカイブ確認しな

>でもこれ生配信だぞ

>じゃあまだないか

>これアーカイブに残りますよね!?


「あーかいぶ……?」


>あ

>あ

>あ

>これはダメなやつですね

>終わったわ

>アーカイブ知らない配信者いて草

>切り抜き師を信じろ

>俺はシオリちゃんを信じてる

>確かに公式切り抜き作ってくれそう


「よくわからないけど、次の階段が見つかったので先に進みますね」


>よくわからないかあ

>マジで人類の損失

>次の階も楽しみ!

読んでいただきありがとうございます!


この作品はなろうコンに応募してます!

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どちらも大変モチベーションアップになりますので、ぜひよろしくお願いします!

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