第11話 速度を上げて物理で殴る
というわけでダンジョンの4階にやってきた。
4階からは新しい敵が出てくる。
さっそくサーチを使ってダンジョンのマップを把握しつつ、モンスターの配置も確認する。
階段への最短ルートを把握しつつ、モンスターとの戦闘時間も加味してルートを決める。
もっとも早いルートは……なるほど。ちょうど新しい敵と戦うルートだな。
「4階のマップも確認が終わりました。では行きましょう」
走りながらゴブリンとスライムを倒しつつ、コメントに目を向けた。
＞4階っていったらオークが出てくるんだよな
そう。4階からは大型の2足歩行する豚みたいな敵、オークが出てくる。
ゴブリンの2倍くらいでかいし、力も何倍もある。
ゴブリンやスライムなんかとは比べ物にならないくらいの強敵だ。
と言ってもしょせんは、ゴブリンより強い、程度なんだけどな。
＞オークは初心者キラーなんだよな
＞並の武器じゃ分厚い皮膚を貫通できないからな
＞ゴブリンなんか楽勝と思ってくると、急に強くなるからな
確かに俺も初めたての頃はオークは強かったなあ。
今となってはもう、という感じだが、オークの簡単な倒し方とか教えた方がいいだろうか。
「この先に数体のオークがいるようですね。実はオークの簡単な倒し方があるんだけど、みんな知りたいかな？」
＞そんなのあるのか？
＞オークって頑丈だし、なかなか死なないよな
＞簡単に倒せる方法があるなら知りたいです！
なかなか好評なようだ。
ならせっかくだし、ここで披露しよう。
「オークは大きいからタフだし、倒すのも時間がかかります。なのでRTA初心者の頃は避けるようにしてたんですが、簡単な倒し方がわかってからはむしろ選んで倒すようにしました」
ゴブリンは弱いが大抵群れを作っている。なので全滅させるのにコンマ数秒かかってしまう。
けどオークはたいてい1匹。稀に2匹いたりもするが、多くてもそんなものだ。
なので慣れてしまえばオークのほうが早く終わるんだよな。
俺は道を走りながら角を曲がる。
すると、廊下を塞ぐような形で、オークが1匹立っていた。
「さっそくいましたね。オークは普通のパンチで倒すのは大変です。なので……」
俺は足に力を込め、思いっきりダッシュする。
そしてその勢いのまま拳を突き出した。
ドズン！！
巨大なオークの体が大きくへこみ、反対側の壁まで吹っ飛んだ。
「このように、普通のパンチで倒せない時は、走りながらパンチしましょう。バッと走って、エイッと殴る。これで倒せます。
攻撃の威力は早いほど強くなります。中学の物理で習いましたね」
＞だろうな。知ってた。
＞知らん間にオーク吹っ飛んでて草
＞走りながらパンチしたらしいな。本人が言うには
＞何も見えなかったけどｗｗｗ
＞走っただけで出る威力じゃないんだよなあｗ
＞歩いて倒せないなら走って倒せばいいってことだな
＞何の参考にもならなくて草
＞そういやオークの簡単な倒し方教えるってイキってましたね
＞走ってパンチしましょう。簡単ですね。
＞わーかんたんだなあ
コメントが流れる間にも、ダンジョンの道を走り抜けていく。
すれ違いざまにゴブリンを倒し、時々オークをふっ飛ばしながら進んでいった。
「おっ。レアアイテムがドロップしましたね」
壁にめり込んだオークが光となって消えて、そこに宝箱が残された。
＞おおお！ オークのレアドロップ！
＞珍しい。意外と落とさないんだよな。
＞しかも宝箱金色じゃないか？
＞うおおお！ マジだ！ 高レア確定じゃん！！
なんかコメントが騒がしい。
どうやらオークの落とした宝箱が、高レア確定のものらしかった。
「そういうのって宝箱の色でわかるんですね」
＞何で知らないんだよｗ
＞冒険者の常識だろうがｗ
「いやー、タイムしか興味なくて、ドロップとか全然気にしたことなかったんですよね。
そういえばたまに宝箱の色が違うなあって思ってたんですけど、まさかそういう意味があったとは」
＞普通はドロップ目的で行くのにｗ
＞ダンジョンで拾ったもので一儲けするために行くものだろ
＞タイムのために行くやつはお前くらいだよ
ええ？ そうなの？
もっとRTA走者っていないの？
＞動画のネタでするやつならいる
＞専門でやってるやつは見たことないかな
＞命かかってるのに金にならないからな
＞そんだけ強くてダンジョンに命の危機を感じないやつでないとできないかもな
＞そんなに強い奴はむしろ攻略に行くだろうな
そっかあ。
ならやっぱり俺がRTAの魅力をどんどん広めないといけないってことだな！
そんなことを決意してたら、次の階段へと辿り着いた。
次は5階。
あれが出現し始める階層だ。
ここからがRTAの本番でもある。
よーし、一気にギアを上げていくぞ！
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