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家族会議を仕切るだけの簡単なお仕事 0

簀巻きにはなりません。

 白い顔。

 アリアは寝台に横たわる妹の頬に触れる。生きているのか不安になるほどの白さ。記憶にあるのは幼い頃の健康そうに灼けた肌。生真面目な顔をして、剣を振り回す危うげな姿だった。

 あれから遠くに来てしまった。


「レティ」


 小さく名を呼ぶ声は弱々しい。思ったよりも動揺していることに驚いていた。男爵家及び流派の主として厳しく育てられたアリアと違い妹は彼女から見れば甘やかされていた。アリアほど剣技は求められず、知識も魔法も全て劣っていてもそれで良しとされているのが気に入らなかったのだ。


 女性らしい立ち振る舞いや美しく装うことは妹へ、強さを求められるのはアリア。アリアとて少女らしく美しく装ってみたりしたかった。しかし、彼女に与えられたのは次期当主としての責任や義務だった。


 その違いに苛立ち、妹から距離を取るのはそう時間のかかることではなかった。嫌いだったわけではない。羨ましかったのだ。

 レティシアがいずれ他家へ嫁ぐ娘であり要求されていることが違うからに過ぎないと気がついたのはもう10代も半ばくらい。外に出れば決して甘やかされることのない妹に偏っていたとはいえ愛されていた記憶を持たせたかったのだろう。

 そう思えるようになったころにはもう気軽に会えるような距離に住んでいなかった。今日、妹と顔を合わせるのはもう一年ぶりだ。その前に会ったときもただ当たり障りのない挨拶と婚約者との仲について聞いたくらいだ。

 わかっているという返事に違和感を覚えたのにそっとしておいてしまった。


「貴方が居ないと皆悲しむわ」


 微かに上下する胸が生きている証。

 アリアはその皆に自分が入っているかどうかさえわからない。

 震える目蓋が、目を開いたときに何というのかさえも。

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