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ハーレム男を振るだけの簡単なお仕事 5


「ハーディ伯爵。並びに、ご令嬢方。

 レティシアは嫁に出した娘の子とは言え血縁であることは間違いありません。

 そして、家同士のつながりを強めるのが婚姻ということです。つまりは、シュウレイ男爵家に対する敵対はウィンルイ侯爵家にも敵対するものとお思いください」


 祖父もようやく事態を収拾することにしたらしい。

 後ろに、ごごごっ、と効果音が出そうな笑顔ってなんだろうね。


 この元気そうなご老人が三年後くらいにぽっくり風邪で逝ってしまうんだけど。今回はどうかな。


 出来れば長生きして欲しいものである。

 婚約者のほうはようやく我に返ったようで、レティシアに近づこうとしてレティシア父に威嚇されてた。現状、殺されないだけましだと思えよという状況を理解しているかは不明である。

 その男に死なれたら困るからそこはどうか理性が頑張ってもらいたい。


 あ、なんか察した婚約者の父に強制退場させられてる。護衛も護衛対象を抱えて外に連れ出すとは思っていなかっただろう。暴れてるやつをどうにかするの大変だろうな。護衛かわいそう。

 レティ、そんなの嘘だろとか聞こえたけど聞こえない。

 この期に及んで謝罪の一つも出てこず、嘘だと言い放つその神経を疑うわ。


「皆様お帰りください。陛下には私からご報告いたします。

 なぁに、ただの婚約解消の話。しかも婚約式が成立前の口約束に過ぎませんから強制力のないものです。ご納得いただけると思います」


 とりあえずは、婚約は破棄ではなく、解消できそうだ。あるいは、婚約すらなかったと言い張りそうな勢いで。

 (元)婚約者のご両親は異を唱えようとして撃沈してた。何も言わせぬように威圧している父とか母とか姉とか従兄とか……。

 一般人、殺意直当てでビビる。なお、あたしもびびった。怖いぞ、レティシアの家族。


 ま、まあ、そこまでは良かったんだけど……。

 そうだ良いことを思いついたと言いたげにぽんと手を打つと祖父は良い笑顔を浮かべた。嫌な予感しかしない。


「全ての資料は皆様のご両親や婚約者の方々に見ていただき、ご判断を仰ぐことにいたしましょう」


 ……ええとコレを1個ずつパッケージングするんですかね? この膨大な量のモノを?

 貧血じゃない目眩がした。

 少し少なめに申告しよう。ひどいヤツだけで他はスルーしよう。生活範囲内の同じ年ごろの娘さん全員に一回は嫌味言われてるくらいのアレなんだ。

 貴族のご令嬢だけでなく全方位に気さくな奴だから……。やはり、婚約者としては最悪である。


 それにしても、運よくこの場にいない婚約者にもこんな衝撃映像みせるのか。


 両親への通告は仕方がない。

 彼女たちに今までのことの責任を取らせることは現状のままでは難しいからだ。


 現在のレティシアから直接相手に謝罪などを求めることはできるが、相手が応じるかというのもあやしい。

 何らかの処罰を求めるなら貴族間での暗黙のルールに引っかかる。

 家人のトラブルは当主同士が話をすることになっていた。

 そこで話がまとまらない場合は調停を求める事はあったが、大体はそこまで行く前に落としどころを見つけているようだ。


 今回のことでどれほど怒っていてもいきなりその娘をこちらに引き渡せ、とはできない。相手から差し出された場合は除外されるけど、そんなこと滅多にない。

 当主同士の話の結果、その家の当主の決定として家の者に処罰を与える、という建前が必要なのだそうだ。お互いの独立性の問題であるらしい。嘗められたら終わりという野蛮な何かが残ってる。


 じゃあ法の元にならどうだと言えば、残念ながら外聞は悪くても無視やら意地悪やらは法の外。法の内にある暴力的なものでも子供の喧嘩とか悪意がないといわれてしまうかもしれない。この辺りは貴族間の家の問題とは違って地位やらお金やら人脈やらがものをいう。

 そもそも階段から落とされた系は殺人未遂に数えられるのか。証拠画像があってもふざけていたと言って相手の爵位によっては通るので、ここが法治国家と言っていいのか疑問だ。

 絶対王政でも王権神授説を唱えてもいないからまだマシなのかもしれないけど。


 祖父が交渉などをやってくれるなら良いのだけど。

 父親のほうはちょっとその方面はムリよ?

 祖父が剣ぶんまわすくらいにムリよ?


「後ほど個別にご相談いたします」


 あ、やる気だ。

 これで宮廷の勢力図がかわるかも。国内が荒れないといいんだけど。

 さすがに、一般市民の皆様にまでご迷惑はかけたくない。……うん、たぶん、場合によっては大変なことになるけど、今はヤバイことになって欲しくない。


 え、これが陰謀の一部とか言わない、よね?

 今までにない展開が逆にもっと悪くなるとか。


 祖父をじっと見ていたら、ちょっと顔をしかめられた。


「レティ。下がりなさい。もう、ここにいる必要はありません」


「……はい」


 そう言い、あたしはそっと立ち上がる。従兄が手を貸してくれるのがありがたい。そうでなければ無様に転んでしまうに違いない。

 出血は止まっているが、立ち上がればくらくらするし、いい加減、医師に体を見て貰いたいところだ。軍の宿舎からは結構離れているとはいえ、そろそろ手配した医者が来ていて欲しいものである。


 そして、二歩歩いた辺りで体が制御不能になる。意識はあるけど、動かせないし何も聞こえない。ただ、真っ暗だ。

 ありゃ。


(人間の体でそんだけ無茶したら普通そうなるよ)


 遠くで誰かがため息をついた。


 ……まあ、いいか。今やるべきコトは終わったのだから。そして、心の中でレティシアに詫びを入れる。


 勝手に婚約破棄とか、勝手に記録魔法披露とか、体を乗っ取ってしまうとか。

 彼女の人生は理不尽に満ちている。人生さえも神(仮)に世界の運営のために奪われるとかひどい話だ。


 ただ、彼女が死んで、この世界は悪い方に舵を切るのは事実だ。

 結果、神は失われる。

 失ってもこの世界が運営出来るのならばよいのだが、それは出来ず最終的に皆失われる。と先を見通す運命神は預言している。


 実際、そこまで行き着いてしまえば巻き戻すことも出来ないので今まで、頑張って回避してきたそうだ。


(運命神が少しましになったと報告してきたから引き続きがんばって)


 がんばるー。死なないように。

 と心なく返しておく。


(今、死亡フラグが一杯立ったからね?)


 ……早速、生存の危機過ぎる!? 慌てたところで何も出来ないのだけど。頑張って目を開いてみるとそっと頭を撫でられた気配だけが通り過ぎ、サービスだからね、と優しい声が響いた。


 どこかの別の神(仮)の神対応があったようで。今度はすっと意識がなくなってくる。


 意識不明になった後で、誰がこの体を運ぶかで揉めたとか。最終的には姉の婚約者に運ばせたとかいうカオスな状況を神(仮)に報告されて目眩がするとかそいうのはちょっと先の話だった。



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