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神界にて 1

 魂だけになったことで、ようやく自由になったとレティシアは感じていた。

 肉体が重いというだけでなく、纏わりついていたなにかからも解放されたように思える。幸いというべきか、纏わりついていたものはレティシアの体のほうにも残っておらず、中の人ともども健康であるようだった。


 いきなりこのようなことになってレティシアは驚いたが、不快ではなかった。

 神も人として尊重してくれるようなところもあり、そこも意外ではあったのだが。神々はもっと冷たいかと思っていた。


 たった一人の少女を気にかけてイライラしてしまうような存在であるのは、親しみが持てる気がした。


 レティシアは側にいる神に視線を向けた。

 眉間にしわが寄り、口元はむっとしている。

 下に降りた彼女が気がかりらしい。もっと頻繁に連絡を取りたくてもこの神界と下界では時間の流れの調節が難しく、時々時間が飛びうまく接触できないらしい。

 先日も一ミリ一週間とか、がばがばなの!? と嘆いていたがレティシアには意味があまりわかっていない。


「あの、神様」


 レティシアは苛立っているような神に声をかけた。


「んー?」


「お聞きしたいんですけど、ジェイス、ってなんなんですか?」


「んんー?」


 レティシアの言っている意味がわからないというように首をかしげる。とても人間っぽい。

 性別はないといっていたが、なんだか同じくらいの年頃の女性のように思えた。それは結構長くいたという彼女の影響かもしれない。


「あれは夏と秋のお気に入りで、手を出すべきではないと言われている。実際、関与してもなにか進展はなかったからほっといているよ。ほんとは排除したいけど。なんか変なところあった?」


「変というか……。

 わたしは、婚約破棄や婚約解消をしたいと思ったことがないわけではないんです。

 でも、話を切り出そうと思うととても嫌な予感がしました。

 両親にも姉でも、言えばよかったと思うのですが、どうしても、言えませんでした。とても、悪いことが始まる。そうとしか、考えられなくて」


「どういう、悪いこと?」


「馬鹿みたいなことなんですけど、世界が終わりそうで」


「……終わりそう?」


「わからないのですが、とても怖かった。

 壊してはならない楔のようなものがあるように見えました」


 それは、自らの死よりも恐ろしいものにも思えたのだ。

 足元から世界が壊れていくほどの。

 だから行動にうつせなかったのだ。婚約破棄は最適解ではないように思えて。

 そういう存在が、果たして、普通の人間、であろうだろうか。


「楔? 人の魂には、そんなのないはずだ。

 いや、でも、魔女の心眼は見定めるって言うし……」


「気のせいかもしれません」


「いや、考えてみれば、おかしいのはレティシアじゃなかったのかもしれない。

 あまりにも色んな事がレティに関与しているからそうだと思っていた。意見を求めたものも同意していたし、時間神も……」


 そういって神はレティシアへ視線を向けた。


「ごめん。僕は間違えていたかもしれない。

 許さなくていいから、間違いを一緒に探してくれないか?」


 それは保護するだけの対象ではなくなることを意味する。


「喜んで」


 レティシアに否はなかった。



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