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ハーレム男を振るだけの簡単なお仕事。あるいは、彼女を救い出すための手段を考える一回。  作者: あかね


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内乱フラグを折るだけの簡単なお仕事 3

 口を開きかけた祖父を制した。

 さすがに彼を予定外に殺されるのは、レティシアに申し訳ない。おそらく、上で見ていると思うんだよね。

 神(仮)と。神(仮)の解説付きで自分の人生を見ると言う微妙な感じで……。それはそれで楽しんでいるらしい。中身があたしなので、別人のようねと。

 それもどうなのかと……いや、その、殺気で意識不明になりそうなのを必死で止めておりましてね……。

 にこりと気合いを入れて微笑む。


「申しわけありませんが、レティシアではありません。神の意向により、一時、休息していただいています」


「そう」


 すとんと表情が抜け落ちたままでちょっと恐い。


「そんな気はしたんだ。気配がなんか、違うから」


 それがわかるのが人外感満載だ。今のところ一目見てわかった人はいない。それを一目でわかるとかおかしいんじゃないだろうか。


 まあ、元々ちょっと気になるところがあるひとではあるけど。


 どうも、前の繰り返しの記憶があるっぽい。全てを覚えているわけではないけど、いくつかの繰り返しの中からランダムに思い出すようだ。

 神(仮)も首をかしげていた。調べても黒とは言えない、らしい。思い当たる節はなくもないと曖昧な話しか聞かせてくれなかった。


 今までの傾向から考えて、なにか思い出したからレティシアに会いに来たんだろう。


 いるのがあたしで悪い気はする。


 彼はじろりと上から下まで見た後にため息をついた。


「説明いただけますよね?」


 依頼じゃなくて、恐喝だった。


 ざっくりと説明したところで、祖父が離脱した。先ほど聞いたことの裏取りと王家に対する言い訳を用意しなければならない。知らないと言っても聞いてはくれないだろう。

 それなら最大限有用に使うしかない。


 その結果、あたしとユーリクス二人になる。


「別に存在を抹消しようとかしないから」


「……そうだといいんだけど」


 仕切り直しの意味を込めて、新しいお茶を頼むべく呼び鈴を鳴らした。

 いつもは侍女の誰かが来るところを執事がやってきて、お茶の用意をし、菓子を並べる。さりげない仕草で部屋の備品が壊れていないか確認していたようだった。

 執事が一礼して下がってから、彼は独り言のように口を開いた。


「もう、いないのか」


 心を失ってしまったかのような言い方。


「レティシアは愛されてますねぇ。本人に全く届いてませんけど」


「そうだな」


 澄ました顔の男にいらっときた。


「後でぐだぐた言うなら、手遅れになる前に始めやがれ」


 思わず漏れた本音に、ユーリクスは隣で爆笑していた。


「名前は?」


 息も絶え絶えで尋ねてくる意図がわからない。

 しかし、初めて名を聞くのがこの男か。レティシアがいないことをすぐに受け入れたようで。


 従兄殿ですら、未だに微妙な顔している。

 無自覚にそれ、レティと違うという気持ちがひょっこりと出てきていた。それはそれはいたたまれない気分になる。


「お好きに呼んでください」


「は?」


「元の名は呼ぶことは出来ない約束になってましてね。残念ながら、レティシアと呼ぶか、あだ名でもつけて貰うかと言うことになってます」


「他のヤツも呼ぶだろう?」


「知っている人は呼びませんよ?」


 イルクの野郎とか低く言ったのは聞かない事にする。あれで色々悩み深いんだから変に突っつかないで欲しい。


 従兄殿だけは特別だ。


 一方的に同士と思っている。迷惑かもしれないけど、レティシアのために何かしたいのは本当だからそれくらいいいと思いたい。


「……お嬢」


 結構悩んだな。

 お茶を飲んだり、お菓子をつまんだりする時間はたっぷりあった。


「はい」


「しばらくいてやるよ」


「なぜですか?」


「この様子だと内乱とかは困るというところだろう」


「普通に困りますね」


「俺がいれば、いつか何かあったときにまずは動くだろうと見られるから多少の抑止力はある」


「……本当に?」


「一応、傭兵団の団長やってるからそこは信用してほしい」


「お祖父さまにもちゃんと伝えてください。雇用条件はそちらに準じますので」


「雇用?」


「無料というのはですね、多大な借りになりかねません。ちゃんとした金銭契約大事」


 まじまじと見られた。


「なるほど。レティシアじゃない」


「そう言ってるでしょうに」


「そうだけどな、見た目は同じだから」


「ほんと、しっかりしてください。

 愛した女くらいちゃんと見分けて、ってなんですか」


 彼は絶句して、真っ赤になってる。


「な、なんで知って」


「御使い様は何でもご存じなのです」


 と言っておくことした。そうか、隠してたのか。で、レティシアに伝わらなかった。


「レティは鈍いので、直接的にガンガン行けばいいと思いますよ。

 次のご参考に」


 鈍いと言ったが違うとは思う。ここから先は入らないでくださいねという線引きを無視して超える心の強さが必要。礼儀正しいやつには超えられない。


「……帰る。準備してくるから」


 逃げていったのを見て、謎の勝利感を得た。

 勝った。


 でも、いったいどこでそんなに思い入れを得るほどに近寄ったのだろうか。そのあたりが謎である。幼少期近寄ったものもそれなりにいるが該当しそうなものがいなかった。名前も顔も大人になれば変わることはあるとはいえ、激変しなければわかりそうなものである。

 レティシア本人に聞くというのも、できるか? 神(仮)とは最近繋がりにくいし、念でも送っておこう。

 アフターサービスがなってない。


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― 新着の感想 ―
[良い点] めっちゃ面白い 毎回出てくるやばい意味での人間関係とか死亡フラグ装置とか 元々が神視点でんl周回しての主人公なので色々知っているけど実際に生活したり自身の意思で過ごしたりせず深堀も裏の話も…
[良い点] いい感じにぶっちゃけてて、何でも主人公の都合よくは進まないところ、むやみに中の人を溺愛にもならないところが好きです。 [気になる点] もう完結しているお話しですが、今の時点の感想で、今まで…
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