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ハーレム男を振るだけの簡単なお仕事。あるいは、彼女を救い出すための手段を考える一回。  作者: あかね


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33/40

いのちだいじに。

 応接室を出てきたレティシアはひどく落ち込んでいるようだった。イルクはそのあとを追った。部屋には戻らず、庭へ出てきたのは人目が少ないところを選んだからだろう。意外と彼女の部屋は人がいる。


「もーやーだー」


 そうつぶやいて彼女は垣根に隠れるようにしゃがんだ。

 イルクの前では素の姿を見せることも多いが、今回は取り繕うところもない。見ないでくれといったところだろうが、イルクは役目上そうすることはできない。


「どうしたんです?」


「あのね。あたしの前世、親より早く死んだの。事故でね。

 すぐに成仏しないで、自分の死んだあとも見ちゃって。葬式のことを思い出しちゃって。尋問どころじゃなかった。

 こんなことじゃダメなんだよぉ」


 早口にまくしたてて頭を抱えている。

 それどころか、異界の言葉交じりに暗い言葉をこぼしていた。

 どう見てもおかしい。


「レティシアで、それをしないでほしい」


「うっ。すみませんでした」


 イルクの指摘に素直に反省したようだった。彼を見上げて、手を差し出した。引っ張ってくれと言ったところだろうか。

 少し硬くなってきた手は令嬢らしからぬものだが、イルクが良く知っていたものに似てきた。


 立ち上がっても彼女はうなだれていた。


「別に死にたくて死んだわけでもないだろう」


「そうだけどね。ローラの親の嘆きようは想像できる。辛い」


 憂鬱そうに言う彼女にどういうべきかイルクはわからない。


「だから、下に降りたくなかったんだよ……。もう、レティシアの死ですら、見たくないのに」


 ぼそぼそと呟いて。

 彼女ははっとしたようにイルクを見た。


「なんです?」


「……なんでもない。ああ、嫌だ。記号のままでいてくれないから」


 はぁとため息をついて。


「どうか、命を大事にしてもらいたい。あたしが泣く」


 そうイルクに告げる。

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