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家族会議を仕切るだけの簡単なお仕事 4

 家族会議、とも言えない今後の方針を決め、彼女は眠りについた。

 そして、目覚めた後に少し話をしてもいいという言伝があったが、それを希望したのはイルクだけのようだった。


「ごめんなさい」


 部屋を訪れたイルクに彼女は謝罪した。

 申し訳なさそうな表情に彼は面食らう。淡々と状況を話していたものとは同じとは思えなかった。


「従兄殿、と呼ばせて貰うけど。あなたにだけは、こんなことになって本当に申しわけないと思っているの」


 神からの使徒の中身が、レティシアの顔で申し訳なさそうに見上げてくる。

 罪悪感が半端なかった。


「どうして、俺に?」


「繰り返しても、あなただけは、生きているレティシアのために色々してくれたから。取り上げるような形でいなくなったから」


 他の者とは違ったと彼女が特別にそう言う。それに胸の奥が痛んだ。彼女の境遇を思えば、さっさと婚約解消をした方が良かった。

 イルクはレティシアに婚約者について聞いたことがない。他愛もない話をして、笑ってまたねと去る。

 あの時、追えば、捕まえれば良かったのだろうかと自問する。

 そうしたところで、婚約が解消されたとは思い難い。祖父の世代からの約束であり、爵位が絡むならばレティシア側から話をつけることはできなかった。そもそも、あの元婚約者はレティシアを離すつもりなど一切ない。他愛もないわがままと退けるのが目に見えていた。


「レティシアは帰ってくるだろうか」


「戻らないと思うわ。これは黙っててね?」


 またしても特別にというわけだ。イルクは聞いておきながら知りたくなかったと後悔した。


「次で頑張って? そのときには覚えてないと思うけど」


「次?」


「そう。これは正規の歴史にはならないと思う。いくつかある試みの一つ。次にあえるかは神のみぞ知る」


「そんなこと知らせても良いのか?」


「レティシアのために頑張った人は特別扱いすることに決めているので。信用しているの」


 レティシアのにこりとした笑みは子供の頃に見た以来だった。外見はそうでも中身が違うと思い知らせてくれる。

 そして、中の使徒が過大な信頼を寄せていることも知ってしまう。


 言葉に詰まったイルクを心配そうに見上げて、もう一度ごめんね? と。

 これは謝罪というより、面倒なこと教えちゃって悪かったといったところだろうか。


「……信頼を損ねないようにします」


 レティシアの姿をしたものは大層たちが悪い。


「大丈夫。信用してる。あ、でも、あたしを滅するとかやめてほしい」


「しません。

 とりあえず、養生してください」


「うん。ありがとう」


「それではまた」


「また?」


 怪訝そうな声にイルクは返答しなかった。


 結果、数日悩んだ後、仕事を辞めてしまうのだが、彼女はその結末をまだ知らない。

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