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逃亡聖女は引き籠もりたい  作者: 橘可憐


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私の呼び名


朝身支度を整えるとその足で教会へ向かった。


シスターや子供たちがゆっくり出来たか心配でもあったし

早くシスターと色々話がしたかったからだ。


「おはようございます」私はそう挨拶しながら教会へ入ると

「おはようございます」とすでに子供達も起きていて

教会内の掃除を始めていた。


それを見て私は元の世界の子供達とは大違いだと思った。


もっともこの子達が特別なのかもしれないが、

朝起きてご飯食べる前に掃除とか手伝いとかって

普通子供達の意識の中にすらないよね。


そう言えばローズちゃんも家では普通に手伝いをして

その上朝早くからフィリス師匠の所へ出向くのだろうから

子供であっても一人前って事なのだろうかと思っていた。


私はそんな事を考えながら教会内へと入って行くと

何やら子供たちが掃除の手を止めモジモジし始めた。


何だ?と思っていると年長の子がおずおずと聞いてきた。


「えっと、お姉さんの事は何とお呼びしたら良いですか」

「聖女様って呼んじゃいけないって言われました」と

別の子が言い出して

「シスターが自分達で聞いてみなさいっておしゃって」と

またまた年長の子がそう話した。


呼び名ごときでそんなに悩むなんてなんて純粋な子達だ

今までそんな事聞かれた事も無いから考えてもいなかった。


しかし子供達を悩ますのは良くないと取り合えず答えた。


「そうねアウラはコオって呼び捨てで

シルフはコーちゃん呼びだけどやっぱりコオで良いかな」

誰になんて呼ばれているかはっきり覚えているのは

アウラとシルフだけだったのでそう答えてみた。


すると「コオですか?」と年長の子は少し戸惑いを見せていた。


「何か問題でも?」私がそう聞くと

「いえ、じゃぁコオ様とお呼びします」と言うので

「様はいらないってば、様付けする位ならお姉さんで良いから」

私がそうきっぱりと答えると困った表情を見せるので

私は二次元のノリでつい子供達を揶揄うつもりで

「じゃぁ、お姉様ってお呼びなさい」そう言うと

「はい、お姉様」ってお姉様決定しちゃったよ。


「嘘嘘嘘だってば、冗談だよ」と慌てて訂正したが

訂正される事は無く小さな子までお姉様と呼び始めていて

私はすっかりと頭を抱えてしまった。


「ところでシスターはどうしていらっしゃるのかしら」

私はもうノリを続行してお姉様風に聞いてみた。


すると年長の子が「朝食の準備をしています」と言うので

私はキッチンへ向かったのだった。


恥ずかしくて子供達の所に居るのがいたたまれなかったのだ。


そう私は一刻も早く逃げ出したくて

そしてシスターにお姉様呼びの訂正を頼みたくて

足早にシスターの元へと向かっていた。


「シスターおはようございます」

私は挨拶をしながらキッチンへと入って行くと

最年長の少年とシスターで朝食の準備をしていた。


と言ってもレトルトを大量に買い揃えていたので

カセットガスコンロでお湯を沸かして温めるだけなのだが

考えてみたらこの大所帯でコンロ1つでは到底足りなかった。


私は慌ててコンロを2つ買い足し

そう言えば赤ちゃんも居た事を思い出し

赤ちゃんはまだミルクなのか離乳食なのか聞いてみると

離乳食を理解されず大人たちの物を食べやすくすると

そんな答えが返って来たので離乳食も買い揃えた。


そして教会のキッチンを見ていて思った。


やっぱりオール電化はともかくとして

レンジやIHのクッキングヒーターや冷蔵庫位は必要だと。


後でノームに各家庭に電気を供給出来ないか聞いてみよう

私はそう思ったのだった。


今日の朝食はレトルトのおかゆを選んだらしく

鍋に人数分のレトルトを入れ温めている所だった。


カセットガスコンロじゃそんな大鍋で

大量のお湯を沸かすのに時間が掛かっているらしく

既にテーブルには食器が並べられ朝食を始める準備は出来ていた。


しかし小さな子はともかく年長の子がおかゆ一パックで

お腹が足りる訳がない

やっぱり調理出来る様にした方が良いのだろうかと考えた。


私は今までは自分が基準だったので深く考えた事も無かった

と言うか便利を基準にしか考えていなかった。


私と違いいつでも食べたい物を気軽に手に入れられない人達には

食材を与え自分で調理出来るようにした方が良いのかもと

そんな事を考え始めていた。


そうしておかゆが温まるのを待って食器に盛り付けると

青年が子供達を呼びに行ったので

私は追加で総菜と果物と牛乳を購入してテーブルに並べ

シスターに食後に話がしたいと言って早々に逃げ出した。


子供達に囲まれてお姉様呼びされるのが嫌だったのだ。


勝手口から外へ出て時間を潰すためにと考えて

ロックさんの元へと向かった。


旅の詳しい話も聞きたかったし

農家を始めると言っていた話もあったので

ロックさんともきちんと話をしなくてはと思っていたのだ。


「おはようございます」とマリーさんの家の前で声を掛けた。


するとローズちゃんが飛び出してきて

「おはようございます」と挨拶してくれた。


「もうご飯済んだ?」私がそう尋ねると

「うん済んでる、ローズは今から師匠の所へ行くの」と

元気に言ってから手を振りながら去って行った。


子供が元気で明るいって気持ちが良いと思いながら

ローズちゃんをしばらく見送り

私はもう一度家に向かって声を掛けた。


「ごめんください」

するとマリーさんが慌てる様に迎えに出てくれて

「すみません気が付かなくて」と謝っている。


その様子に何かあったのかと何となく感じていた。


「いえ、大丈夫です、ロックさんはもうお目覚めですか

お疲れの様ならまた出直してきます」

私がそう尋ねると

「主人は朝早くから鍛錬に出かけると言ったまま

まだ戻っていませんので」と困った様子に

「何か心配ごと?」と私がそう尋ねると

「宿の朝食の準備が間に合わなくなりそうで」と

複雑な心境の様子を見せるマリーさんだった。


そう言えばいつもならローズちゃんも手伝って

今頃は宿の朝食の準備を始めている時間のはず。


そうかマリーさんもロックさんとあまり話が出来ていないのか

それとも夫婦喧嘩でもあったのか?

そんな事を考えていた。


しかし私は妙な詮索は止めて

「じゃぁそれは私がしますので今日はゆっくり休んでください」

そう言って急ぎ宿泊施設へと向かった。


すると案の定キッチンでエドガーが一人てんてこ舞いしていた。


私は慌ててそれを手伝って冒険者達に朝食の提供を始めた。


いつもならマリーさんがスープを作り

目玉焼きとベーコンを焼きトマトを添えたものに

等価交換様から購入した食パンとバターを付けて出すという

シンプルなモーニングセットだったので

私とエドガーでもどうにかなりそうだと思っていた。


しかしエドガーは既にスープを作り終わっていて

目玉焼きにベーコンを手際よく焼いていてびっくりした。


「エドガーって料理も出来るんだね」私がそう呟くと

「フィリス様のお世話をして長いですからね」と

納得の答えが返って来た。


それで何をやらせてもそつなくこなしてしまうんだと

私は妙に納得してしまった。


なので私はエドガーが用意した朝食を食堂へと運び

冒険者達に愛想を振りまきながら提供して行った。


慣れない事はするもんじゃなくて

普段しない愛想笑いの様な笑顔が張り付きすぎて

顔の筋肉が痛くなるほどだったが

冒険者達はローズちゃんで無いのを残念がりながらも

一応喜んでくれていた様なので取り合えず安心した。


そうして朝食の提供を乗り切った私達は

改めてマリーさんの有難さを感じていた。


「今日はマリーさんはお休みだから」とエドガーに伝えると

「それでは後はお任せください」と言うので

「エドガー一人じゃ大変だよ今日は私も手伝うから

何をしたら良いか教えて」私がそう言うと

「コオ様にもやらなければならない事があるでしょう」と

エドガーは私に優しく諭して来た。


しかし私はそんな事より気になってしまった事があった。


エドガーって私の事『コオ様』呼びだったっけ?


私は新たに知った事実に愕然としていた。


今まで誰にどう呼ばれているかなんて本当に気にしてなかった。


それ程に興味が無かったって事か・・・


どう呼ばれているかだけじゃなくエドガー自身の事や

マリーさんの事も大事だとか守りたいとか

辞められたら困るとか考えていながら

その実その人達の事に関してまったく興味が無かったんだ。


私はその事実に気付かされ本当に愕然としていた。


しかし今はそんな事に時間を取られている暇はない

マリーさんが抜けた穴を塞ぐために何か考えないとと

私はあれこれ焦り悩んでいたが

こんな時の相談相手が出来たんだったとシスターを思い出し

私は慌ててシスターの元へとまたまた向かった。


そして教会へと飛び込むと挨拶もそこそこに

「困っているんです何かお知恵を貸してください」

私はシスターの姿を確認すると叫んでいた。


「まぁまぁ、そう慌てないで詳しく聞かせてください」

シスターは抱いていた赤ちゃんを傍に居た子に渡すと

私の所へ来て聞く体制を整えてくれた。


私は深呼吸をしてからシスターに話した。


マリーさんにお休みを与えたはいいがその抜けた穴に

自分の体が3つ位欲しい話

そして実はマリーさんの仕事の全部を把握していない話

自分の至らなさの話を始めた所でシスターからストップが掛かった。


「今は反省をしている時ではありません」


そうだったつい話を聞いてくれる有難さに愚痴迄こぼしてた


「やはりマリーさんに聞きに行った方が良いでしょうか」

私がそう話すと

「それが良いでしょう

今日のお休みの予定を明日にして貰いなさい

そしてこの子達にその仕事を教える様に言ってください」と

比較的年長の子達を指して言った。


「マリーさんも今頃は気になって休んでる気分じゃない筈です

こういう時の為にもこの子達をお役立てください」

シスターはさらに言い募っている。


私はシスターの言葉に思い悩むのを止めて

3人の子を引き連れマリーさんの元へと向かった。


お休みを言い渡しながらやはりお休み取り消しなんて

どんなブラックな仕事場だよそんな事を考えながら

私は重い足取りでいるのに

「お姉様のお役に立てて何よりです」とお姉様呼びされ

まだその呼び方の訂正がされていなかった事に

私は後頭部を殴られた様な気分になっていた。



読んでくださりありがとうございます。

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