急な旅立ち
ローズちゃんが聖女修行を始めると聞いてシルフは
「これから頑張るのです~応援するのです~」と
とても喜んだ様子でローズちゃんと戯れていた。
アウラは「これからはコオもしっかりしてください」と
まるで私が今までしっかりしていなかったかの様な口ぶりで
しっかりと釘を刺して来る。
そして修行の邪魔にならない様にと
シルフもアウラも居酒屋キッチンカーの開店準備に向かい
私は興味本位で聖女修行の様子を見せて貰っていた。
そしてそのうちにあのシスターの事を思い出していた。
この世界に来て一番初めに私に親切にしてくれた人だった。
回復魔法の本をくれたり知らなかったことを教えてくれて
本当に助かったのに何の挨拶もお礼も出来ず
ずっと心のどこかに引っ掛かっている人だった。
「今頃どうしているんだろう」私がふと呟くと
「何か憂い事ですか」とサラマンダーに聞かれびっくりした。
突然のサラマンダーの登場にも驚いたけれど
私の他愛無い呟きを聞き取っていた事に驚いた。
そんな事もあってか私は聞いてくれた事に素直に話していた。
ずっと気になっていて
事あるごとに思い出しては感謝とは別に後悔に似た感情が湧いて来て
今はどうしているのかとても気になり
どうか幸せであって欲しいと願ってしまうと言う話をした。
するとサラマンダーは様子を見に行ってみましょうと言うので
私はこの森から出るつもりは無いと言う話をすると
しばらく戸惑い自分一人で行くのは不安があると言うのだ。
いやいや、その気持ちだけでもう十分だと話すと
気になっている事は早く解決した方が良いと引き下がらない。
そうして暫く考えてから驚いた事を提案して来た。
ロックさんに同行して貰って自分が様子を見て来ると言うのだ。
ロックさんなら場所も分かりシスターの特定も出来るだろうし
何があっても対処も十分に出来るだろうと。
しかしロックさんも追われていると言う事だし
そう簡単な話じゃないと思うと言うと
自分が付いていて何か不具合がある訳が無いと自信満々で
サラマンダーは引き下がる気は全く無さそうだった。
なので私はロックさんの了承次第と言う事で話を落ち着けた。
そうしてロックさんの所へと出向き
サラマンダーと話し合った内容を伝えると
私が浄化に出向き失踪した街は当然知らない訳もなく
シスターの事もロックさん自身も交流があり知っていた様だった。
今の所街自体には何の被害も無い様だったけれど
グロシアート国の崩壊に伴い混乱は当然あるだろうから
シスターがその中でどうしているのかは自分も気にはなると
サラマンダーと同行して様子を見に行く事を快く引き受けてくれた。
本当だったら私自身が出向けば良いのだろうけれど
やはりこの森から出るのはまだ勇気がいると言うか
面倒くさいと言うかどうしても気が乗らなかった。
森の外では嫌な思いしかしていないのが一番の理由だが
やっとの思いで辿り着いたココが安住の地になっている今
わざわざココを出る事には必要以上に気合がいるのだ。
シスターの事は気にはなっているけれど
私にとってよほどの理由にはなっていないと言う事だ。
なので私は折角快く引き受けてくれたロックさんに
少しでも旅が快適になる様に考えて
駿馬を等価交換様から購入してプレゼントした。
するとロックさんは旅に必要な物を他にも揃えたいと言うので
それも当然プレゼントする事にした。
そして旅の支度をさっさと済ませると
マリーさんとローズちゃんにしばらく留守にする事を伝え
急ぎ旅立とうとしていた。
私は慌ててそれを止め時間的な事を考えても
出発は明日の朝にした方が良いだろうと提案し
今日はとにかくゆっくり休んだ方が良いと説得した。
サラマンダーは同行すると言っても姿を消して追うのではなく
ロックさんの体の中に入っての移動だろうし
その為にロックさんにどんな弊害があるか分からないのだから
尚更に慎重になって準備した方が良いだろうと伝えた。
サラマンダーは何の弊害も無いと言っていたけれど
私はその言葉をまるっと鵜呑みには出来なかったので
とにかく出発は明日の朝にしましょうと強制的に決めた。
本当に誰かを説得するって意外に難しいし疲れる
もっとも私の為に動いてくれるのだから
そんな事も言っていられないし
感謝しなくてはいけないのだけれど
折角こうしてロックさんとサラマンダーが出向いてくれるのだ
少しでも私の心の澱が取り除ければ良いと願っていた。
そしてどうせならシスター宛に
何かお礼になる物を持参してもらおうと思いつき
何が良いかと色々と物色していた。
等価交換様に聞いてもすぐには思いつかないらしく
私もシスターが何を喜ぶのか考えもつかず
かと言って荷物になるような物を預けるのも躊躇うしと
考えれば考える程に堂々巡りで決められずにいた。
そうして考えに考えて選んだのはブローチだった。
もしお金に困っていたら換金しても良いだろうと思いついて
結構高級な白金製のブローチを選んだ。
これだったら荷物にもならないし良いだろうとひとり納得して
ブローチの入った箱に手紙も添えて用意した。
そして翌朝ロックさんにそれを預けて二人を見送った。
どうか旅路が安全であります様にと祈りながら
同じく見送りに来ていたマリーさんとローズちゃんと
その姿が見えなくなるまで手を振っていた。
読んでくださりありがとうございます。




