聖女の素質
アウラに連れられ父親と三人で拠点へと帰り着くと
その姿を確認したマリーさんとローズちゃんが
父親に駆け寄り心温まる感動の再開を展開していた。
私はその様子を傍で見つめながら
この親子はこれからどうするのかとそんな事を考えていた。
この森に助けを求める様に入った理由も気になるし
アウラがわざわざ助けた理由も気になった。
そんなアウラは今回は私の魔力をふんだんに使ったらしく
魔力切れを起こす事も無く元気にしていたので
親子を助けた理由を思い切って聞いてみた。
すると事は簡単で
「この森で助けを求める人が居れば助けます」と
至極当然の事の様に答えていたので
私はグロシアート国に対して警戒し過ぎなのかと思っていた。
アウラも居てくれる事だしそんなに警戒する必要も無いかと
私は少しは気にするのを止めてみようとも考えていた。
そうして親子3人は改めて私達にお礼を言ってくれたが
この3人の処遇についての話の方が先だと思い直し聞いてみた。
「取り合えず元気に再開も果たした事ですし
森の入り口まで案内しますがどの国の方角にしますか?」
私はこの親子に最大限の気を使ったつもりで訊ねた。
「カルザックを目指してはいたのですが」と
私の問いに父親が言い淀んでいる。
すると今度はマリーさんが
「宜しければココに置いては頂けませんでしょうか」と言い出した。
何となくそんな話の流れになるのかと予感はしていたけれど
私はそんなに簡単に受け入れて良い物かと考えていた。
するとそばを飛び回っていたシルフが
「もうローズちゃんとは仲良くなったの~」と言って
それに答える様に「ね~」とローズちゃんも返事をしていて
もうすでに受け入れはシルフによって決定していたのだと感じた。
フィリス師匠とエドガーを受け入れた時点で
アウラが受け入れを反対する事が無い限り
私に受け入れを反対する理由はそうそう無いのだけれど
やっぱりココは私だけの特別な場所には出来ないのだと
そんな少し矛盾した事を漠然と考えていた。
以前アウラが研究者の受け入れを了承した時は
大勢でズカズカと踏み込まれた様で気分が悪いと反対した。
今は大勢でもなく踏み荒らす様でも無いのでつい受けれているし
精霊達と仲良くできる仲間が増えた様だと嬉しさを感じながら
この場所を独り占めしていたかったと言う思いもふと浮かぶ
その自分の中の矛盾した考えに少し戸惑っていた。
思い返せばこの世界に召喚されて色々あって
本当に自分でも信じられない位頑張って頑張って辿り着き
やっとのようにして手に入れたこの場所だから思い入れも強い
そして私が精霊達を助けたんだと言う特別感も持っていた。
そんな私の思いを知っている人がいないのが寂しいのかも知れない
私は考えながら一人そんな風に結論を出し
受け入れたのならこれからは楽しいを共有すれば良いのだと
自分で自分を納得させていた。
「大丈夫ですよ、私達は分かっています」アウラが突然言った。
考えてみたら私の考えなんて精霊達にはお見通しだったのだ
精霊達がそれぞれに私に頷く様にするのを見て
私にとってこの場所は住み易く楽しい場所になれば良いと
そんな事を考えていた。
結局ロックさん親子を受け入れる事に決めて
研究者達のために建てた家に住んで貰う事にした。
そして当然収入の話になり
マリーさんと父親のロックさんは農業をしたいと言うので
森に近い外れの家に決めたのだけれど
森を農地に開拓するのは大変そうに思え後でノームに頼んで
家の周りの土地を農地に改良して貰おうかと考えていた。
そしてエドガー達同様家賃の代わりにと
マリーさんがエドガーに頼んだ施設の掃除や洗濯などを
自分にやらせてくれと言い出したので
農業と兼業で大丈夫なのかを確認すると
「ローズもお手伝いする」とローズちゃんに言われてしまい
私は無下に反対する事も出来ず
管理はエドガーに任せてあるのでエドガーと相談してくれと
結局マリーさんの提案を受け入れる事になった。
元々研究者の為に建てた家でお金も取りそびれ
まるっきり無駄になってしまっていたとは言え売る事も出来ず
かと言って家賃も取れないのかと守銭奴の様な考えが浮かび
自分の嫌な性格を見た気がして少し落ち込んだが
一応ロックさんにはココに永住する気なら
家は売る用意はあると金額だけは伝えておいた。
あと残る空き家の一軒と
研究のためにと建てたオール電化の家はどうしたもんかと
今までは誰も住まない家に過疎化した村の様だと
そんな事を考えながらもあまり気にもしていなかったのに
人が住みだした事で返って気になり出したのだった。
そうして話が決まりロックさん親子を家に案内して
足りない日用品や食材などの購入を済ませると
漸く親子も安心し落ち着いたのかしばらく迷っていた様だが
大事な話があるとロックさんが話を始めた。
実はローズちゃんには聖女の素質があるのだと
その事が世間に露見する前に逃げ出す事にしたのだと。
グロシアート国の聖女に対する扱いを
今まで他人事の様にして見ていたが
さすがに自分の子が聖女としてそう言う扱いを受けるかと思うと
色々と考え悩みだしていた時にグロシアート国が崩壊し
聖女不在が国民にもバレ大騒ぎになった事に不安を覚え
やはり聖女である事は隠し通す事に決め逃げ出したそうだ。
騎士隊長であった自分が逃げた事で追手が掛かるとは
実は思ってもいなかったらしい。
今でも誰に何のために追われたのか納得が行ってないと言うのだ。
うん、そんな話はまるっきりどうでも良い。
私にはまったく興味も無いし関係もないそれよりも
ローズちゃんに聖女の素質があるってどういう事?
聖女って生まれながらに聖女のステータス持っているんじゃないの?
素質が必要ってその素質で判断するって事?
新たに浮かんだ聖女に対する疑問の方が私には重大だった。
読んでくださりありがとうございます。




