かくもあらん
「外界はコオの噂でもちきりの様です」
突然の様にアウラが言った。
「噂ってどんな?」
魔界の森を一人で浄化した偉大なる聖女は
魔界の森をそのまま一人占領し
近隣諸国に迷惑をかけるばかりか
精霊を手先に使いグロシアート国を亡ぼし
そして自分に逆らえばその国は
グロシアート国同様亡ぼすと宣言した
恐ろしき『諸悪の聖女』と噂されているらしい。
言い方と言うか、見方と言うか、うん、間違ってはいない。
ソレどう考えても私の事だ。
でもアウラを手先にした覚えも無いし
『諸悪の聖女』だなんてまるで魔王もかくもあらんと言った
その呼び方は無いわ~
私は平穏で長閑な生活を望んでいるだけだよ
この精霊の森のこの場所に建てた快適なオール電化の家で
今まで通りアウラと一緒に楽しく好きな事をして過ごしたい
そう考えているだけだよ
でもそっか、精霊の森に結界を張って
誰も出入り出来ない様にしてるのは事実だし
そのせいでこの森にある貴重な素材などを手に入れられず
困っているだろう人は確かにいるかもしれない
そう考えたらやっぱり森に誰も入れない様にして
この精霊の森全土を独り占めするかの様な今の状況は良くないのか。
私は早速私の考えをアウラに伝え相談してみた。
「コオがそうお考えなら制限を緩くしましょうか」
アウラは結界の条件を変える提案をして来た。
「緩くって?」どの程度まで変えられるのか探る様に聞くと
「国が関係しない少人数での出入りは許可するとか」
「そっか、アウラは人の心も読めるようだからそれも可能なのか」
私は何となく納得していた。
「でもその場合コオをどうにかしようとする勇敢な冒険者達が
国の依頼じゃなくこの森を目指す場合出入りを許す事になります」
何やら不穏な事をアウラが言い出した。
「えっ、私、もしかして命狙われたりするの?」
私が驚いて聞き返すと
「捕獲依頼を出した国もありますね」
「捕獲って、珍獣じゃあるまいし」
「中にはどう勘違いしたのか討伐を試みる冒険者もいる様です」
「討伐ってマジで私は魔王か」
「すでにその様に考えている者もいる様です」
アウラの解説に何だかため息が出る様だった。
いったい誰がどんな情報を操作してそう仕向けているのか知らないが
それを鵜呑みにする馬鹿な冒険者にも呆れる様だった。
何にしても誰かの思惑が色々と絡んでいる事を感じ
そして私が捕獲討伐対象と聞いて
何だか無性にその見えない敵を捻り潰したくなっていた。
「いいわ、勇者だろうが英雄だろうが返り討ちにしてやる」
あまりにも予想外な展開の話に少し混乱していたのもあり
やはり自分でも予想外な返事をしてしまった。
「でも最悪の場合アウラが守ってくれるんだよね?」
私は言ってしまってから少し後悔してそんな事を聞いていた。
「当然です」アウラが力強く答えてくれたので私はすっかり安心して
「まぁ、ここまで辿り着く人がいればの話だけれどね」と
余裕綽々と言った心持にはなったのだけれど
念のために返り討ちの方法を考えたおこうと決めた。
等価交換様に何かいい案はないか相談すると
「キッチンカーはいかがですか」と勧められた。
この森を何日も移動している間に食に乏しい思いをする筈なので
そこで美味しい物を振舞い餌付けする作戦かと納得した。
出来る事なら私も争い事は避けたいし
平和で長閑で楽しい方が良いとその作戦に賛成していた。
人間の三大欲求の一つである食欲を満たす事で
逆に取り込もうと言う作戦か。
それならいっそお酒も出して
すっかり酔わせてやる気を無くさせるのが最も安全かも
そんな事も考えた。
と言う事は、居酒屋キッチンカーが絶対良いな。
お酒も冷えたビールに酎ハイやカクテル
それに日本酒にウイスキーに焼酎等色々取り揃えて
焼き鳥を店先で焼いたら匂いで誘えるよね。
おつまみも食事も等価交換様が居れば何でも出せる。
私自身お酒は嫌いではないと言うか寧ろ好きだし
飲んで楽しく騒ぐのも嫌いじゃない。
居酒屋キッチンカー(冒険者ホイホイ)に集まり
そしてお酒とつまみに十分満足して
すっかり酔いつぶれる冒険者達の姿がまざまざと目に浮んだ。
私の考えた(?)冒険者撃退方法に一人満足して
内心でニマニマが止まらなかった。
上手く行けば冒険者達の財布もすっからかんにして
さらに抵抗出来なくさせてやると
すっかりと魔王の様な立ち位置を確立させている自分に
まったく気づく事も無く準備を始めていた。
読んでくださりありがとうございます。




