精霊結界
「元々この森は精霊の森と呼ばれ
貴重な薬草や草花も咲いていた静かな森だったのです」
とアウラが説明してくれた。
「精霊の森がなんだって魔物の森になってしまったの?」
私の問いにアウラが説明を続けた。
急激な人口の増加で森が伐採されゴミが増えた事で
日々濃くなって行く瘴気に悩む近隣諸国を黙ってみて居られず
自分でも如何にか出来ないかとこの森を出て
色々と手を尽くしてみたがなかなか思う様には何も出来ず
瘴気を消滅させる術を探し続け
この森を出たり入ったりするうちに
この精霊の森にも瘴気を呼び込んでしまった。
本来なら精霊の力が働いているので
そう簡単には瘴気が入って来られる様な所では無いが
一度瘴気の侵入を許してしまうとその強い精霊の力が逆に作用して
強力な魔物を生み出してしまった。
そもそも森の木々は少々の瘴気なら浄化出来るし
この精霊の森の木々ともなればその浄化能力も高いので
この森が瘴気に侵される事は無かったはずだった。
それが魔物の生息とともにその木々さえも瘴気に侵され始め
そこからはどうしようもなくなってしまったそうだ。
「あの時は私の未熟さがそう言う結果を生んだのだと思います」
アウラはとても反省している風にそう言った。
しかし私はそんな事に構わず気になった事を聞いてみた。
「ちょっと待って、瘴気に侵されて魔物になるって聞いたけど
瘴気が魔物を生み出す事もあるの?」
するとアウラは「そうです強力な瘴気は魔物をも生み出します」
と、答えてくれた。
「そうなんだね、ごめん分かったから続けて」
そう話の続きを促すとアウラはまた話始めた。
「その続きは以前ウィンディーネが説明した通りです
あの時は他に手立てなど思いつく余裕も無く
私は自分の持つすべての力を使いこの森ごと
瘴気も魔物も消し去ると言う選択をするところでした。
しかしその選択も確実に成功すると言う保証は無く
悩んでいたところサラマンダーが助けを申し出てくれて
他の精霊たちの力を借り長い間苦しむ事にはなりましたが
今はこうして浄化出来て本当に良かったと感謝しています」
アウラはそう話し終わると頭を下げていた。
きっと私にだけでなく精霊達みんなへの感謝も含んでいるのだろう
そう思わせる深い深い礼であったと思う。
「それじゃ後は精霊結界だね」私がそう言うと
「そうじゃのう、さっさと済ませてしまおうかいの」
「そうねぇ早く済ませてしまいましょうかぁ」
「私も頑張るの~」
「みなさんよろしくお願いします」
「重要な結界ですみなさん心してください」と口々に言い
「それじゃ約束通り結界を通れる者の選別は
アウラに任せれば良いのかの
それとも今決めておくのが良いのかいの」と聞かれ
私が黙っているとアウラが「私にお任せ下さい」と返事をしていた。
私は返事をしたら本当にもう終わってしまうのだと考えて
何となく返事ができずにいただけなのに
さっさと進む話に置いてきぼりにされている様でとても寂しかった。
そうしてみんなは一度私を拠点へと連れて行ってくれてから
それぞれの持ち場へと飛んで行った様だった。
「結界を済ませたらもう一度みんな戻って来てくれるんだよね?
このままお別れなんて事は無いんだよね」と
私は何度も精霊達に念を押してしまったのだけれど、
例えばみんながこのまま帰って来なかったとしても
私はサマサさん達に同じ事をしたんだと思うと
けして文句を言える立場じゃないと今になって反省していた。
私はあの時は本当に自分の事しか考えていなかった。
逃げる事だけでいっぱいいっぱいだった。
あんなに親切にして貰ったのにさらに心配させて
今思えば随分と酷い仕打ちだったと思い返し
これでまた約束を破るような事をしたら
それこそ人でなしの所業だと心を戒めていた。
そう、サマサさん達との約束の日は近づいていた。
一時でもまた逃げる事を考えた自分が恥ずかしいかった。
たとえどんな結果になろうと拠点はここと決めたんだ
最悪な事態にならない限りもう逃げない。
出来る事なら精霊達ともこのままでいたい
そんな事を考えながらみんなの帰りを待った。
読んでくださりありがとうございます。




