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逃亡聖女は引き籠もりたい  作者: 橘可憐
第一章 1
5/251

使い捨ての聖女

ブックマークありがとうございます。


マントには袖が付けられていてすっぽりと羽織れ

私の体型も少しはカバー出来る様になっていて

マントと言うよりポンチョ型のコートの様に仕上がっていた。

急いで仕立てた割にはしっかりと作られている。

よほど力を入れたのだろうか?


「靴も欲しいのですが」

私は履いているルームシューズを見てそう言った。

これから外出するとなると流石にこれではマズいでしょう

可愛いからこのまま履いていたいのはやまやまだけれど

外を歩くのはこれでは不便でしかない。

すると侍女さんは靴のサイズを確かめると

編み上げのショートブーツを持って来てくれた。

そしてマントを羽織ると早速の様に箱型の馬車に乗せられ王城を出た。

先導に馬に乗った従者が2名と

馬に乗った騎士4名程が護衛の様にして馬車を取り囲んでいて

私の護衛と言うより見張りのように感じていた。

そして馬車の中には私の専属なのかいつもの彼が一緒に同乗している。


「これから出向く村には怪我人も数名いる様です

結界を強化する前に回復の方もお願いいたします」


彼は気軽にそんな事を言い出したが

私は結界を張った事も無いし

ましてや回復魔法なんて使った事無いよ

いきなりやれって言われても無理じゃない?

「そんな事私に出来るでしょうか?」そう尋ねてみると

「聖女様ですから大丈夫です」って、またも気軽に言ってくる。


本当に理解出来ているのか聖女の事を

やっぱりコイツは使えない、まったくもって頼れない。

私はそう判断してとにかく練習をする事にした。

見よう見まね思いつく感じで『結界』と念じてみる。

すると私の周りが僅かに光り出し結界の様な物が現れた気がした。

こんなんで村全体の結界の強化なんて出来るの?


不安しかない私をよそに

彼は私が練習をしているなどと思いもしない様で

村に到着してからの段取りを頭に入れるのに夢中の様だ。

私はその様子を見て益々彼に不信感しか抱けなくなり

構わずに練習を続ける事にした。


目を瞑り意識を集中させ『結界』と何度か念じてみる。

やはり私の周りが僅かに光るだけで

結界らしい物ははっきりと表れない

何かコツでもあるのだろうか?

取り合えず念じ方を変えてみるか

それとも何かイメージを変えるか

少しずつでも何かを変えて行かないと埒が明かない気がして

取り合えずイメージを優先してみた。


この馬車全体を包むような

そんな結界をイメージしながら『結界』と念じてみる。

すると今度は私の周りで光っていた光が馬車全体を包むように広がった。

そうか、結界も範囲をイメージしないとダメなのか。

それじゃぁもう少し範囲を広げてみようか

そう思い外に居るであろう騎士全員を囲むような

そんなイメージで『結界』と念じた。

すると思った通り結界はかなりの範囲に広がった。

何となくコツはつかめた気がする

要するに範囲を指定する様に念じればいいんだね。

これでこの馬車に魔物が寄り付かなかったら

私の『結界』は成功って事だよね

私はそう考えていた。


結界はどうにかなりそうなので次は回復魔法の練習をする事にした。

しかし怪我人が居ないので回復魔法を使っても

それが実際効いているのか私には判断が出来ないけどどうする?

結界がイメージで成功したと言う事は回復もイメージで成功するのか?

怪我を治すイメージ、そうだ瘴気で侵された怪我って言ってたっけ

と言う事は、瘴気を浄化するイメージじゃなきゃダメなのか?

瘴気を浄化するイメージも怪我を治すイメージも

アニメやゲームでの映像しか浮かばないけれどそれで良いのかな?


そう考え取り合えず村へ着くまでの時間

頭に浄化のイメージと傷が治るイメージを浮かべながら

何度も何度も魔法を使う練習を重ねて行った。


馬車の中でやる事も無いし

ましてやコイツと会話なんて全くの不毛だし

ひたすらひたすら回復と浄化の魔法を念じ続けていた。


そうして馬車に揺られる事2時間近く最初の村に到着した。

私は彼にエスコートされるままに馬車を降りたつと

この村の偉い人らしき人達に出迎えられ一人ずつに挨拶された。

取り合えず愛想笑いを浮かべ挨拶を返したが

回復魔法が上手く使えるか気が気じゃなくて

心の中では焦りで一杯だった。


最近の魔物の多さの話や森の深くには瘴気溜まりが出来た話など

村の人々は話したい事が山の様だったが

私は一刻も早く怪我人を治したいと言う思いと

治せるのかと言う思いがせめぎ合い

そして何よりさっさと用を済ませ逃げ出したいと言う考えがあり

話など到底頭には入って来なかった。


なので「怪我人は何処に?」と話を中断させ尋ねてしまった。

するとさすがは聖女様とかなんとか言いながら

怪我人が収容されている教会へと案内してくれた。


教会へ入って驚いた。

怪我人と言うからベットにでも寝かされているかと思ったのに

礼拝用のベンチに毛布も無く寝かされていて

手当らしい手当もされていない様子で傷口が剥き出しになっている。

私はその様子をモロに見てしまい気分が悪くなった。

瘴気に侵されたその傷の周りは黒く変色し

まるで腐っているかの様で

怪我人も痛さで汗を吹き出しながら唸っている。


私は気持ち悪さを抑え怪我人に近寄り取り合えず『浄化』を念じ

黒く腐ったかの様な部分の回復をイメージしながら右手をかざしていく

すると少しずつだが黒い部分が薄くなり始め

ゆっくりと回復していく様子が見えて来て私は少しだけ安心した。

しばらく念じ続けているとすっかり黒味が無くなり浄化は成功した様で

さっきまで唸っていた怪我人もようやく息が穏やかになった。


するとただ祈るだけの様にしていたシスターが私の所へ来て

「ありがとうございます」とお礼を言ってから

私が浄化した怪我人に回復魔法を施している。

回復魔法って結構誰にでも使えるのかと思って見ていると

シスターが私に聞いてきた。

「新しい聖女様ですか?」


「ええ、昨日この世界に来たばかりでまだ何も知りませんが」

私がそう答えるとシスターは驚いていた。


「では先代の聖女様にはお会いしてませんの?」そう聞かれ


「そう言えば高齢の聖女様が居ると言っていた様な気がしますが

お会いしていません」私がそう答えると


「それでは浄化はどなたに教わったのでしょう」と言うので


「思いついた自己流です」と答えるとされに驚かれた。


シスターの話によれば聖女の使う魔法や調合などを

先代の聖女から学び引継ぎある程度レベルを上げ

そして何種類かの魔法を習得してから独り立ちするのが通例だと言う


私は聖女の仕事内容にしてもあまり詳しく聞いていないし

いきなり結界を強化しろ、怪我人を治療しろとだけ言われ

ここへ連れて来られたと話すとシスターは例の彼の元へ行き

真意を確かめるかの様に問い正した。


彼はしどろもどろになりながら

「聖女なら誰でも出来るだろう」と悪びれる事無く言い放った

シスターは呆れる様にそんな訳無いだろうと言うと

今からでも遅くないから先代の聖女に教えを乞えと進めたが

しかし彼は先代の聖女はもうすでにお役御免にしたと話す。


元々先代の聖女はこの国の人ではなく

よその国から連れて来ていたので

新しい聖女が誕生した今はもう必要ないだろうと言い放った。


ちょっと待って、それって聞き様によっては怖い話だよね

もしかしてよその国から拉致って来てた聖女様を

もう必要なくなったから処分したみたいに聞こえたよ?

考えたくないけれど自分の未来もはっきり見えた気がするよ。

やっぱりコイツら碌な奴じゃないとはっきりと再確認した。


少し収まりかけていた怒りが再燃して来た。

聖女を使い捨てにしか考えていないこの国にはもう何の未練もない

いや元々そんな物まったく無かったが

私は自分の身を護るためにも計画など立てている場合じゃない

今すぐにでも逃げ出さなくてはそう決意した瞬間だった。



読んでくださりありがとうございます。

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