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逃亡聖女は引き籠もりたい  作者: 橘可憐
第一章 1
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オヤジか


シルフが道案内に精を出しているのは

一刻も早く精霊達を助けたいと言う思いからなのだと気が付いた。


私はなんて鈍感なんだと言うか思いやりが無さ過ぎるんだ。


きっとシルフは私を焦らせてはいけないと言う思いと

仲間を早く助けたいと言う思いを抱え悩んでいただろうに

私は呑気に私との冒険を楽しんでいるなんて思い違いをして

本当に恥ずかしい、恥ずかし過ぎる、穴があったら入りたい。


子ども扱いしていたシルフの方がよっぽども大人だった事実に

ショックも大きいけれど、ここからは巻き返す。


私もシルフの為にももっと頑張る。


これ以上気を遣わせるような言動はみんなを助けるまで慎む。


そう硬く心に誓い自分にも等価交換様にもそしてシルフにも

我儘を言わない事にした。


髪を切りたいだとかのんびりお風呂に浸かりたいだとか

美味しい物が食べたいとかゆっくり寝たいだとか

可愛い服が着たいだとかたまには休みたいだとか

最近は日を追うごとに我儘になっていた。


そんな事はしっかりと拠点を作ってからだと決めていたはず。


すべてを済ませて引き籠り生活を堪能すると決めていたはず。


シルフが一緒に旅をしてくれる様になってから

本当に気が抜けていると言うか何の危機感もなくしていた。


これじゃダメだ。


こうして魔界の森に入った事で

すっかりと追っ手から逃れた気になっているけれど

果たして本当にそうか?


絶対に捕まらないと言う確証は無いよ?


もし万が一そんな事はあり得ないと思うが

3か国から同時に攻め込まれて衛兵に囲まれたら

私には抵抗する事も出来ないよきっと。


その辺の問題も抱えているのをすっかりと忘れていた。


こうして毎日無事に楽しく居られるのも

すべてはシルフのお陰なのだから

せめてシルフが懸命に望んでいることくらい

早く叶えてあげるのが大人ってものだと思うよ。


私は今の自分の在り方を心から反省した。


そうしていつも以上に先を急いで移動した。


その甲斐あってか予想より早くに辿り着いたその場所、

段々と濃くなる瘴気の気配に気が引き締まる。


今回は精霊を助けるまで気を抜かず浄化すると決めて

いつも以上に集中し気合を入れ直した。


結界も厳重に張り瘴気溜まり全体を浄化出来る様に

広く広く範囲を広げ『浄化』を強く念じた。


強く強く念じ続けた。


目を瞑りいつも以上に集中して強く念じた。


みるみるうちに減って行く魔物の気配と息苦しさ、

きっと瘴気もグングンと減っているのだろうと感じていた。


集中が続く限り念じ続けた。


休憩なんて吞気な事考える事も無く集中した。


そしてシルフに声を掛けられるまで『浄化』を念じ続けた。


「みてみて、あそこに居るよ~」


目を開けて確認するとそこには

やはり真っ黒に穢された人型の羽の生えた精霊の姿があった。


私は仕上げとばかりにその姿に向かい強く強く『浄化』を念じた。


低音の地底から響いてくるような呻き声が怖かったが

構わずに『浄化』を念じ続けた。


そうしてつま先から色が戻って行きそこに現れたのは

筋骨隆々のゴツイおやじと言った感じの精霊だった。


そしてまた生まれたての赤ん坊の様に小さくなると、

「わしはノームじゃ、すまんのぅ」と言ったかと思うと

私の体の中へと入って行ってしまった。


あまりにもあっけないと言うかなんというか、

初めての見た目オヤジの精霊だったから

ちょっとびっくりしたが色々と話したかったのに残念だった。


「ノームちゃんが助かって良かったの~」

シルフが嬉しそうにそう言っているので突っ込むのは止めたが、

ノームちゃんは無いと思うぞ?

ちゃん呼びは絶対に違うと思うよ、だってオヤジだったよ。


まぁでも、今はそんな事はどうでも良いか。


「後はサラマンダーだけだね」私がそう強く言うと


「そうなの~、頑張って助けるの~」と言うシルフ


そうなの、一刻も早く頑張って助けるのと

シルフの言葉を真似て私は心の中で反芻して誓った。



読んでくださりありがとうございます。

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