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引き籠りを楽しみたい召喚聖女は今日も戦う  作者: 橘可憐
第一章 1
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聖女ステータス


広い広い城内の長い廊下を歩き、渡り廊下の様な場所を越え

そしてまた幾つかの廊下を曲がりながら移動する事30分近く(多分)

何処を通ったか必死に覚えながらローブの人に付いて歩いた。


そして漸く案内されたその部屋は10畳ほどの広さで

突き当りに大きなガラス窓が有り

執務机と応接セットの様なイスとソファーが置かれ

本棚や飾り棚なども設置されていてちょっと立派な感じもした。


ソファーに座る様に促されそこに座ると

傍に置かれたカートにあるティーセットでお茶を淹れてくれた。

ここに来て初めてお客様扱いをされたがまだ信用出来ない

と言うか、気を許す気にもなれないが喉が渇いていたのでお茶は頂いた。

しかしお茶を飲んでから毒は入っていないんだよねと不安になった。

「大変失礼な事をしてしまい申し訳ありませんでした」

彼はお茶を淹れ終わるとそう言って頭を深々と下げて来た。

私が返事もせずにいると「失礼します」と言ってソファーに座り

「話を始めても良いでしょうか」と聞いて来る。

その為に来たのにどうして確認する?

私は仕方なく黙って頷くと彼は話し始めた

この国の現状をそして私が召喚された訳を。


この世界には瘴気が溢れていてその瘴気に侵された動物は魔物となり

狂暴化しては普段あまり寄り付かない人の住む所へも出没する様になり

果ては村や町などを襲う様になると。

その魔物達から守るための強力な結界を張ることが出来て

そして魔物を浄化する事が出来る唯一の存在が聖女であると。

それから魔物に襲われた所謂瘴気で汚された怪我などは

聖女様の聖魔法か聖女様が作るポーションでないと治せないと。

その為聖女様はどの国でも大事にされ尊重される存在であるが

ここの所の瘴気の濃さにどの国の聖女様も他国の浄化にまでは手が回らず

高齢の聖女様だけでは対処が間に合わないこの国の苦渋の策として

今回禁断であった召喚と言う手段に手を出したそうだ。


それで?

だからどうした?

私は聖女じゃ無いってそっちが言ったんじゃない

牢屋にまでぶち込んで置いて今更そんな話聞かせて私にどうしろと?

私に返事をする気が無い事を理解したのか彼は話を続けた。


「結界が弱まっている村や町に至急結界を張り直して頂きたい

万が一の事だが人間も瘴気に侵されると魔物化する危険も大きく

瘴気による怪我の治療が儘ならない現状では

兵士や衛兵それに冒険者達も迂闊に魔物討伐にも出られず

今のままではこの国の最悪の未来しか見えない

どうかお願い致します、王のご無礼を許し協力をして頂きたい」

と、随分と都合の良い話を始めた。


王様のした事だから無条件で許せって?

こんな仕打ちをしておいてだから協力しろって?

私の怒りが簡単に収まると本当に思っているの?

「私は聖女じゃありません、あの王様にそう言われましたが?」

私は腹立ちまぎれに思っていた事をそのまま伝えると


「誠に申し訳ない事ではありましたが

私の鑑定では間違いなくあなた様は聖女様です。

王にはそこの所は重々ご理解頂いた次第でして

王の御前に参る事は出来ませんがすでに王もお認めになりました。

それ故こうして牢から出す事も出来ましたので

そこの所は十分ご理解頂いてどうぞご協力お願いいたします」

目の前に座る男は言葉とは裏腹にまるで感謝しろとも言いたげな態度で

私にはお願いされている様には到底思えなかった。


それに何、何、牢から出してやったから喜べって?

怒りでまだ誰も許す気になれない私にさらに燃料投下した自覚無いの?

もう腸が煮えくり返る寸前だよ、誰が大人しく協力するかって言うの

ここはあえて私が欲しい情報だけ貰ってこの国は出る

誰がどうなろうと私には関係ないもう絶対に出るそう決めた。


「私が聖女だと鑑定したって言いましたけどそれって確かなのですか?」

「ええ、お疑いでしたらご自分でご確認ください」

そう言ってステータスの見方を教えてくれた。

『ステータスオープン』心でそう念じると

自分の目の前に透明なグラフィックボードが現れた。


名 前 青葉紅愛(聖女)

レベル 1

スキル 浄化1 結界1

 調合1

固有スキル 魔力量 ∞ 等価交換


「えっと、この等価交換って何ですか?」

私は唯一理解出来なかったその固有スキルについて訪ねてみた。

「等価交換とは何でしょう、私が鑑定出来るのはスキルまででして

その他に何か特別なスキルがございましたか?」

不思議そうにそう聞き返され

この固有スキルは鑑定されなかったって事かと理解した。


それにしても等価交換ってなんだ、錬金術アニメで聞いたアレか?

何にしても今は確かめようが無いし知られるのもまずいかもそう思い

「ここは王城で間違いないですか?」

私は不自然だとは思いながら明らかに話題を変えに行った。


「そうです、グロシアート国の王城です」


「他に国はどの位あるのですか?」


「我が国の他に5つ程の国が存在しております」


「他の国へ行くにはどの位掛かりますか?」


「それは距離ですか時間ですか」


「両方です」


「そうですね早馬でしたら南にあるウォルスナへは9日程でしょうか

東にあるカルザックへでしたらもう少し早いかと思いますが

国境の山脈を越えるのは大変ですし

我が国とはあまり付き合いもありませんので行く事は無いでしょう」

何の疑問も持たず話してくれた彼の説明を聞いて

私はこの国とあまり仲良くなさそうなカルザックへ行く事を決めた。


しかし山脈越えの上に馬での移動を基準の話だとすると

歩いての移動だといったい何日くらい時間が掛かるのだろうか。

私は逃げるにしても計画を立てなくてはと考えもっと情報を得ようと

「他国へ向かう間に村や町はあるのですか?」そう聞いていた。


「それは勿論ございますよ

その村や町を巡り結界を張って頂きたいとお願いしています」

それを聞いてこの国の有益になりそうな事をするのも面白く無いが

この世界の現状を何も知らないままこの城を出ても危険なだけだし

ここは言う事を聞いた振りをしてこの城を出てから

頃合いを見て逃げ出す事にした方が良さそうだとそう判断した。


「分かりました、それでその村への巡回はいつから始めますか」


「それでは早速ですが明日からでもよろしいでしょうか?」


「ええ、構いません」


私がそう返事をすると安心した様子を見せて席を立ち

「では、お部屋へとご案内いたします」と先を歩き出した。


そうして案内されたのは広い庭の片隅にある東屋の様な家だった。

そう大きくも無く小さくも無く元の世界の一般的な平屋位で

作りもそう豪華でも無くかと言って小屋と呼ぶ程質素な感じでもなく

わざわざお城の片隅に建てられている意味が分からなかった。

まさか何処かの豪邸の噂の犬小屋的な建物じゃないよね?

だとしたらあの王様どれだけ私を嫌っているんだ

今に見てろよ、絶対に後悔させてやる。

私は新たに怒りレベルを上げて硬く心に誓ったのだった。



読んでくださりありがとうございます。

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