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逃亡聖女は引き籠もりたい  作者: 橘可憐
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レオの報告


朝まだ早い時間レオが突然の様に私の自宅に訪ねて来た。


この家の訪問客など殆ど限られていたので私は驚いていた。


「どうしたの突然、驚くじゃない」

「どうしたのは私のセリフです

エリシオン内を見て回られたと聞きましたけど本当ですか」

きっとローズちゃん辺りの情報収集がてらの話かと考えていた。


「街があまりにも変わっててびっくりしたよ」

びっくりしたと言うのは本当だったので

それ以上の余計な私の感情や考えはあえて伏せた。


「どうして私の所へ寄ってはくれなかったのですか

ご報告したい事もご相談したい事もあったんですよ

忙しく出てる様だったので連絡するのを控えてましたけど

無視された様で僕は悲しいです」

レオの悲しいですの一言が本心の様に感じられて

私はかなり狼狽えてしまった。


「いや、ごめんなさい、そんなつもりはまったく無くて

寧ろエリシオンが独り立ちした様で安心してたんだよ」

寂しかったと言う気持ちは口にはせずに

レオを労う様な気持ちでそう言ってみた。


「コオ様がオフィスに寄るのを躊躇うんなら

僕がこうして定期的にここに来ても良いですか」

「別に躊躇っている訳じゃ無いけど

私が寄る意味ももう無いかなって」

「エリシオンはコオ様が作った街なんです

コオ様が保養地化したいと言うから

みんなそれぞれにそれに反しない様にしているのに

コオ様がそれを見てくれないと意味が無いじゃないですか」


レオはエリシオンはまだ私から離れていないと言いたいのか

それとも私が寂しく感じた事を察して

慰めるためにフォローしているつもりなのか

私の為だと熱弁しているかの様だったが

返ってそれが私を冷めさせていた。


「それで相談事って何?」

取って付けた様に持ち上げられているのを感じ

私はあまり良い気分でも無かったので

さっさと話を進める事にした。


「自動販売機の台数を減らしたいのですが良いですか」

「何でよ」

「ロジーの弟子達も居ますし

そろそろ自販機に代わる店舗を出したいと考えています」

ロジーにも弟子が出来ていたのか、それは知らなかった。


そしてその弟子にでも軽食店かスウィーツ店を任せようって事か

それなら自販機もあまり有難くも無いし補充も大変だろうし

邪魔になるのは仕方のない事か。


それにそもそも人員不足から自販機に頼った様なものだし

保養地を目指すこの街に不似合いではあったかもしれない

私はそう納得した。


「分かったすぐにでも撤去しておくよ、話はそれだけ?」

「マッシュが温泉を増やしたいと考えている様ですが

温泉の見つけ方が分からないらしく困っています

あの温泉はどうしたのか教えて欲しいそうです」

「あれは精霊の力だから私にも良く分からない」

私がつっけんどんにしか返事をしない事に何かを感じたのか

レオは話しづらそうにし始めていた。


「何か気に入らない事があったのでしょうか」

ここはやはり『別に』と答える所なんだろうか

そう頭で考えてとある芸能人の記者会見を思い出し

何となく可笑しくなってしまった。


朝早くからこうして出向いてくれるだけでも有難い事なのに

私はまた何を拗ねていたんだろうか

エリシオンの発展はそもそもアウラが望んでいた事だ。


私もそれに出来る事は協力すると誓っていた筈

すべてを自分で出来ずにこうしてレオに任せたんだから

自分が関われない事を面白く感じないなんて愚かしい。


みんながそれぞれの望む道を歩む事を私も願っていた筈

だからこういう結果になるのは至極自然な事なんだ

寂しさや疎外感を感じてへこむ位なら

初めからすべて自分でやるべきだったとそう思い直した。


「レオには本当に苦労を掛けるなって思っただけだよ」

私は改めてレオに感謝の気持ちを込めてそう言った。


「それから温泉の事も私じゃ良く分からないけど調べてみる」

私はレオを安心させるためにそう言ってみた。


「ありがとうございます、お願いします

それで街の発展方向は間違って無いですよね?」

「うん、良くなったと思っているよありがとう

でも私を知らない人も増えた様だし

私が大きな顔をするのも違う様な気がするし

今はほら私自身の事は極力極秘にしておくべきだと思うから

私を見かけてもあまり大袈裟にしないでくれる」

私はエドガーとした身分を伏せると言う約束を思い出し

重要事項の様にそう言っておいた。


「それもそうですね、分かりましたみんなにもそう言っておきます」

「コオ様呼びもエリシオンでは禁止って事にしておいて」

ついでの様にしてレオに注文を付けておいた。


レオはその他にも人員が増えた経過や

店舗を増やした経過などの報告を細々としてくれた。


しかし既に私の中で気分的に解決済みだったせいか

頭の中には何も残る事無く話は通り過ぎて行った。


ドラゴン素材目当てで屈強な冒険者が増えた事や

このエリシオンに拠点を構える冒険者もさらに増えたと報告され

それって街の防犯的には大丈夫なのか心配になった。


屈強な冒険者と聞いて何となく善良な人達ばかりじゃないと感じ

今はもうそれを排除してくれる精霊も居ないのだと

そんな風に心配になったのだけれど

それでも精霊達の名前はまだエリシオンには大きく残っていて

その影響か悪さを働く人は居ないらしい。


それにアーシャとその弟子たちが防犯のために

警備にあたってくれていると言うのにも驚いた。


私はてっきりどこかで冒険でもしているか

もしくはエドガーの下で王都を守っているのかと思っていた。


「エドガー様はエリシオンの事もちゃんと考えているんですよ」

と言うレオの言葉にエドガーの指示だったのかと納得した。


エドガーとレオの違いはこういう所なんだ。

気が付くと私に不安や不快感を抱かせる事無く

私の足りない所を補ってくれていてそれを納得させたり

考えさせたり叱ったりと結局私の為なんだと思わせてくれる。


だから私はいつも有難がったり反省したりして

少しずつではあるけれど成長出来ている気がするし

安心してすべてを任せていられるんだと

今はっきりと気が付いた。


エドガーのその恩に報いるためにも

一日も早く等価交換様をレベルアップさせなくてはと

本気で誓いを立てたのだった。



読んでくださりありがとうございます。

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